10月に入り、肌寒く、秋模様が漂ってきました。
食欲の秋という事で、食材も続々と秋が旬のものが出回り始めています。
今回はその中でも、筋子にスポットを当てて、向き合いたいと思います。
筋子とは、サケ科魚類の卵巣に入ったままの卵の事で、卵巣膜によって繋がったままになっています。
この卵巣膜を取り除きバラバラにしたものをいくらと呼びます。
筋子は9月頃~11月頃まで出回り、特に初旬のものは皮が柔らかく、徐々に粒が大きくなり、晩旬にかけて皮が硬くなっていきます。
いくらといえば醤油漬けが一般的ですが、他にも味を入れる方法として、
味噌漬け、酒粕漬け、米麹漬け等があると思います。
今回は、醤油漬け以外の食べ方でも、いくらを美味しく食べる事はできるのかと、ちょっと気になりましたのでやってみたいと思います。
イクラちゃんですぅ!
いくらの西京味噌漬け、酒粕漬け、米麹漬けの作り方
アニサキスについて
まず、筋子を扱うにあたって気を付けなければならない事があります。
それはアニサキスです。
アニサキスとは寄生虫の一種です。
アニサキス幼虫は、サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカ等の魚介類に寄生します。
詳しくは厚生労働省のサイトにまとめてくださっているので、参考にします。
アニサキスによる食中毒は怖いものですが、脂がのっていて美味しい魚にこそアニサキスが寄生しているともいわれています。
ですので、しっかりとした知識をつけ恐れずに対処する必要があります。
厚生労働省のサイトには、
まずは、鮮度を徹底!目視で確認!
さらに、冷凍・加熱が有効!
といっています。
具体的には、
-20℃で24時間以上の冷凍。
70℃以上、または60℃なら1分の加熱。
が有効といっています。
これら、アニサキスに対する知識をしかっり備え、筋子を扱っていきます。
ハイィ~!
筋子を下処理する
今回用意したのは、新潟県産の筋子です。
まずは、この筋子をボウルに軽くほぐします。
次に、塩を振り掛けます。
そして、ここに沸騰させたお湯を入れます。
ここで、70℃以上の加熱をする事で、アニサキスによる食中毒を予防します。
この熱湯を掛ける事は、アニサキスを死滅させる事と、膜を取り除きやすくする事が目的なので、
それ以上に筋子に負担がかからないように手早く行います。
お湯を入れたら、菜箸でグルグル掻き混ぜます。
そうすると、菜箸に膜が引っ掛かるので、取り除きます。
膜が取り除けたら、お湯を捨て、氷水を入れます、
手を使い、ボウルの底を指でかくようにグルグル掻き混ぜ、残った膜や、崩れたイクラの皮等を浮かび上がらせます。
浮かび上がった膜や皮を捨てるように水を捨て、再び氷水を入れ、掻き混ぜ、
この工程を何回か繰り返し、ある程度膜や皮が取り除けたら、ザルにあけ水を切ります。
このようにいくらが白くなっていますが、水が切れていくうちに色が戻ります。
いくらの色が戻り、水が切れたら、筋子の下処理の完成です。
次にこのいくらを、西京味噌床、酒粕床、米麹床を作り、それぞれに漬けていきます。
いってみよう!やってみよう!
いくらの西京味噌漬けの作り方
西京味噌漬けの西京味噌床の材料は、西京味噌、味醂、日本酒です。
作り方は、西京味噌に煮切った味醂と煮切った日本酒を混ぜ合わせます。
割合は、西京味噌:煮切り味醂:煮切り日本酒=10:1:1です。
正確性、再現性を確保する為、材料は全て重量の単位で量ります。
はかり、デジタルスケールを使います。
煮切りとは、味醂や日本酒等のアルコール分を飛ばす事で、
鍋に味醂や日本酒を入れ、火にかけ、沸騰させ、揮発しているアルコールに火を付け、火がおさまるのを待ちます。
そうする事で、ある程度のアルコールを飛ばせます。
こうして作った西京味噌床に、下処理したいくらを漬けていきます。
タッパーの底に西京味噌床を敷き、その上にガーゼを敷き、いくらを載せ、その上にガーゼを敷き、またその上に西京味噌床を敷きます。
冷蔵庫に入れ、24時間で西京味噌の塩味がほんのり付き、そのまま食べるにも程良い塩加減になりました。
120時間(5日)で西京味噌自体の味や風味がいくらにしっかり移り、ご飯に合うような塩加減になりました。
240時間(10日)でより濃く西京味噌の味や風味が移り、いくらだけ食べても西京味噌を一緒に舐めているように感じる位になりました。
たべてみそ!
いくらの酒粕漬けの作り方
酒粕漬けの酒粕床の材料は、酒粕、味醂、日本酒、塩です。
作り方は、アルコールを飛ばした酒粕に、煮切り味醂、煮切り日本酒、塩を混ぜ合わせます。
割合は、酒粕:味醂:日本酒;塩=10:1:1:0.5です。
正確性、再現性を確保する為、材料は全て重量の単位で量ります。
はかり、デジタルスケールを使います。
酒粕のアルコールを飛ばすには、酒粕の重量の半分の水を酒粕と混ぜ合わせ、
鍋に入れ、中火にかけ、絶えずへらで掻き混ぜ、元の酒粕の硬さ程度まで煮詰めます。
そうする事で、ある程度のアルコールを飛ばせます。
こうして作った酒粕床に、下処理したいくらを漬けていきます。
タッパーの底に酒粕床を敷き、その上にガーゼを敷き、いくらを載せ、その上にガーゼを敷き、またその上に酒粕床を敷きます。
冷蔵庫に入れ、24時間で酒粕床の塩味がほんのり付き、そのまま食べるにも程良い塩加減になりました。
120時間(5日)で酒粕自体の味や風味がいくらにしっかり移り、ご飯に合うような塩加減になりました。
240時間(10日)でより濃く酒粕の味や風味が移り、いくらだけ食べても酒粕を一緒に舐めているように感じる位になりました。
かすかす!
いくらの米麹漬けの作り方
米麹漬けの米麹床の材料は、米麹、塩、水です。
作り方は、いわゆる塩麹を作ります。
米麹と塩を混ぜ、水を入れ混ぜ、25℃程度の環境に置き、24時間おきに混ぜ空気に触れさせ、240時間(10日)程で完成します。
割合は、米麹:水:塩=1:1.5:0.5です。塩分控えめの割合にしてあります。
正確性、再現性を確保する為、材料は全て重量の単位で量ります。
はかり、デジタルスケールを使います。
米麹床、塩麹は完成しますと、米麹が柔らかくなり、甘酒のような香りがし、味も甘味がでてきます。
こうして作った米麹床に、下処理したいくらを漬けていきます。
タッパーの底に米麹床を敷き、その上にガーゼを敷き、いくらを載せ、その上にガーゼを敷き、またその上に米麹床を敷きます。
冷蔵庫に入れ、24時間で米麹床の塩味がほんのり付き、そのまま食べるにも程良い塩加減になりました。
120時間(5日)で米麹自体の味や風味がいくらにしっかり移り、ご飯に合うような塩加減になりました。
240時間(10日)でより濃く米麹の味や風味が移り、いくらだけ食べても米麹を一緒に食べているように感じる位になりました。
こうじっ!
では、こうして漬けた3種類のいくらを比べていきます。
実食
いくらの西京味噌漬け、酒粕漬け、米麹漬けです。
いただきます!
まず、どの漬け床のいくらも120時間(5日)漬けたくらいが、いくらの味や風味と、漬け床の味や風味のバランスが良く感じました。
しかし、24時間漬けのものも、いくらそのものの味を濃厚に感じる事ができ、それでいて漬け床の風味を程よく感じる事ができ、塩味も程よく、これはいくらをダイレクトに感じるには良いと思いました。
そして、240時間(10日)漬けたものは、漬け床の味と風味がいくらにしっかり浸透し、いくらだけを食べても、漬け床そのままを一緒に食べているような濃厚さを感じる事が出来ました。
どの位の時間漬けた方が良いのかというのは、最終的にどのような料理に仕立てるのかというので決めるべきのようです。
その為にも、どのくらいの時間漬ければ、どのような仕上がりになるという事をしっかり把握していく必要があります。
さらに、それぞれの漬け床別に味をみてみると、
西京味噌漬けのいくらは、西京味噌の味や風味は後からふんわり包み込んでくるような印象を与えました。
酒粕漬けのいくらは、特に酒粕の香りが口に入れる前から漂わせてきます。まず酒粕の味や風味を感じ、その後にいくらの味を感じるような味のリレーを味わう事ができました。
米麹漬けのいくらは、米麹の甘味が特徴的でした。甘酒の香りと甘味とコクをいくらに与え、ほのかな甘みのあるいくらというのも悪くないなと感じ、何か料理のアクセントに使うとおもしろいのではないかと思いました。
そして、いくらといえば、やはりご飯に載せたいという事で、鮭の土鍋ご飯を炊き、そこにいくらを載せてみました。
今回は、宮城県の郷土料理である「はらこ飯」の作り方にならって作りました。
はらこ飯は、鮭を煮込んだ煮汁でご飯を炊き、いくらを載せます。
まずいくらの見た目に心奪われます。
ルビーのように光り輝くその様は、まさに「海の宝石箱やぁ~」です。
醤油漬けですと、もう少し醤油の黒さに染められ、黒さを含めた輝きになりますが、
この西京味噌漬けや酒粕漬けや米麹漬けだと、色移りをするこ事がないので、いくらそのものの色の輝きを保っています。
いくらの風味は、鮭の焼き魚の香りを凝縮したようなものを感じさせます。
いくらを歯で噛みますと、プチッと弾け、それはそれは濃厚で濃厚な旨味を味わえます。
箸に、いくらと鮭と鮭のだしで炊いたご飯を一緒に載せ、ほうばりますと、まさに「鮭っっ‼」という感じで、味覚、嗅覚を刺激してきます。
鮭という魚の旨味や風味や、まさに鮭の個性を全て口内に受け止め、味わい、感じる事ができます。
味付け自体、調味料の醤油や塩の塩味は抑えて作ったのですが、それ以上にいくらや鮭、鮭という魚の旨味を強く味わえる事ができますので、食後感はふうぅと満足感を味わえました。
ごちそうさまでした!
まとめ
今回は、筋子と向き合い、醤油漬け以外の食べ方はどうだろうという事で、
いくらの西京味噌漬け、酒粕漬け、米麹漬けを作ってみました!
正直、どれか劇的に美味しかったという事はなく、食べ慣れている分、醤油漬けの方が受け入れやすいのだろうなというのが率直な感想です。
しかし、料理で何かを表現する、そのアプローチ方法として、普段食べ慣れている味、想像できる味から食べ手を裏切る事を狙ったり、
違和感を感じさせつつも、食べ手を考えさせ、結果その料理に深入りさせ、余韻を残させるというか、
違和感を感じさせ、ざわざわさせ、でも気になる、考えさせられる、そして魅力にはまるというか、
そんな単純に美味しいという味わい以外に、ゴールを置いた料理というのもおもしろいかもしれません。
ただし、それはとても難しでしょうし、受け入れられずらいでしょうし、批判が付いてくるようにも思います。
しかし、何かを表現するという事は、100人が100人とも肯定してくれるようなものでは何も表現できていないように思います。
100人に1人でも、その1人に強烈に突き刺されば、その方が何かを表現できているように思います。
100人に1人でも、とても多いです。
1億人なら100万人なのですから。
1万人に1人でも、100万人に1人でも、その1人を感動させられるなら、そん料理を作れたらいいなと思います。
こうして、いずれ開く店への道のりが、また一歩踏み出されたのです。
18歩目!
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