11月に入り、一層肌寒く、食べ物にも暖かさを求めてしまう季節となってきました。
スーパーに入れば、最初の野菜コーナーにはさつまいもが、それも様々な品種が並べられ、最近では石焼き芋の機械が置いてあり、
焼き芋の暖まりそうな甘い香りを漂わせ、つい手に取ってしまいます。
今回はそんなさつまいもと向き合いたいと思います。
さつまいもには様々な品種があり、それぞれ特徴に違いがあります。
このさつまいもの品種別の特徴も一度整理していきたいです。
さらに、さつまいも料理の基本といえば焼き芋ですが、
この焼き芋をどのように調理すれば美味しくできるのかを理論的に考えていきたいと思います。
いしやぁ~きいも~ぉ~♪おいも~ぉ~♪
さつまいもの基礎知識
そもそもさつまいもとは、1600年頃、中国から、
沖縄県(琉球王国)を経て鹿児島県(薩摩国)に伝わった事がその名の由来で、
別名として丸十(まるじゅう)もあり、これは薩摩藩島津家の家紋が丸に十字である事が由来とされています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/サツマイモ
さつまいもの品種とその特徴
さつまいもの品種はどれくらいあるのでしょうか。
それは農林水産省によると、
2018(平成30)年に栽培されたさつまいもの主要品種は、約60品種の作付が報告されています。これ以外にも統計に現れない規模で地域在来の多くの品種が栽培されているものと考えています。
www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0312/01.html
とあり、この品種名とは別に加えて、多くのブランド名もある事から、それだけ広く日本人に愛されている食材だといえると思います。
そんな数多くあるさつまいもの品種のうち、32種の品種及びブランドとその特徴がまとめてあるサイトがありましたので、参考にさせてもらい、
その一部を、比較的手に入りやすい品種を抜粋してまとまていきます。
ほくほく系
高系14号
高系14号は各地で更に選抜や改良され、オリジナル品種として流通しているものがいくつもあります。主なものは徳島県のなると金時で、その他にも石川県の五郎島金時、宮崎県の宮崎紅、鹿児島県のべにさつま、高知県の土佐紅、香川県の坂出金時、千葉県の大栄愛娘、その他紅高系など聞きなれた名称が沢山あります。
高系14号は肥大性に優れ、早掘りが出来る事で知られています。また、貯蔵性が非常に高い芋でもあり、加工用としても優れています。
果皮の色は赤みが強くやや厚みがあり、果肉は生の状態ではクリーム色をしていて粉質です。
糖度が高く、焼くなど加熱すると黄色くホクホクとした甘い芋に仕上がります。ただし、収穫して十分寝かせたものでなければ甘みは期待できません。
ほくほく系
紅あずま
西の高系14号に対し東のベニアズマと言われるように、ベニアズマは茨城県や千葉県など主に関東で多く作られています。
皮の色は少し紫がかった濃い赤色で、果肉の色が黄色く粉質で、繊維質が少なく、蒸したり焼くとホクホクとネットリの中間タイプのサツマイモです。
焼き芋にした時は、果肉の色が黄色く、見た目からとても美味しそうに見え、甘味もあり、人気があることが頷けます。
しっとり系
紅はるか
2010年3月に品種登録された新しい品種です。
開発の目的どおり、外観が優れ、しかも蒸しいもにした時の糖度が高く、とても美味しい芋です。
その高い糖度の糖質の中でも麦芽糖が占める比率が高い傾向にあると言われ、食べてみると強い甘さにもかかわらず後口はすっきりした感じの上品な甘さを感じさせてくれます。
果肉の色は黄白色で、やや粉質で、加熱するとしっとりとした食感に成り、焼いた時の甘さはあの安納芋とも比較されるほどで、非常に甘く美味しい焼き芋の資質をそなえています。
しっとり系
シルクスイート
2012年から種苗の販売が開始されたばかりの新しい品種です。
まだデビューして間がないにもかかわらず、焼き芋にしたときの滑らかな食感と甘さで話題になり、人気が高い品種となっています。
外観は紡錘形で表皮の色や果肉の色などべにはるかと同じような感じで濃い紅色の皮に、中がクリーム色をしています。
収穫してすぐはやや粉質で少しホクホクした感じに焼きあがるようですが、貯蔵することで粘質へと変わり甘くなります。
十分に貯蔵されたものは水分が多く絹のようにしっとり滑らかな舌触りに焼き上がり、甘い焼き芋になるとされています。
果肉がオレンジ系
安納芋
種子島の特産として知られるさつまいもです。
一般的な安納芋は表皮が赤く安納紅とも呼ばれているものですが、その中から表皮の色が白いタイプが生まれ、それを選抜育成していったものが安納こがねです。
どちらも水分が多く粘質性で、焼くとまるでクリームのように ネットリとした食感になります。
また、生の状態で16度前後と非常に糖度が高く、じっくりと時間をかけ て焼く事により糖度が40度前後にもなる芋として人気が高まりました。
紫芋
アヤムラサキ
一般的なサツマイモと比べ著しく紫色の色素成分アントシアニンが多く、加熱しても濃い紫色が残ります。
この色素を活用し、ペーストやパウダーなどが作られているほか、焼酎をはじめ様々な酒類や各種飲料が造られています。
アントシアニンが非常に多くとてもヘルシーなサツマイモであると共に、このイモは一般的なサツマイモと比べ、低唐質であるため、焼き芋にしてもあまり甘みが感じられません。
とは言っても、加熱後も非常に濃い紫色が出るので、加工した時の色栄えは非常に綺麗です。
やはり、品種それぞれに特徴があり、さつまいも料理を作る場合、その料理に合ったさつまいもを選ぶところから始めると、より一層美味しいさつまいも料理が作れそうです。
そんなさつまいも料理の基本といえば焼き芋ですが、
次は、その焼き芋をどのように調理すれば美味しくできるのかを理論的に考えていきたいと思います。
いしやぁ~きいも~ぉ~♪どんなぁ~ときぃ~もぉ~♪
焼き芋の作り方(理論編)
焼き芋に最適な品種とは?
さつまいも料理を作る場合、その料理にあった品種のさつまいもを選ぶところから始めると書きましたが、
焼き芋にあった品種とは何でしょうか。
この答えは正直、好みの問題となってしまいそうです。
愛知県碧南市にある焼き芋屋さん「やきいも丸じゅん」さんでは、ホームページによると、時期にもよるようですが10種類程の品種を揃えているようです。
近年の傾向としてねっとり系(しっとり系)の甘さ際立つ品種の紅はるかの人気が高いです。
甘さ際立つ品種の元祖として、安納芋が市場に出回り始めてから、焼き芋が色々なテレビ番組で特集され始めたりして、焼き芋がより注目され始めたように思います。
しかし、ほくほく系の昔ながらの素朴な甘さというのも根強い人気があるのも事実です。
ただ今回は、焼き芋ブームのブーストをかけた人気品種である紅はるかを使って、美味しい焼き芋の作り方にせまりたいと思います。
美味しい焼き芋を作るにあたり、品種は紅はるかに決めました。
あとはどのような事に気を掛ければ美味しい焼き芋を作ることができるのでしょうか。
そもそも焼きいもの美味しさを決める要素とは何なのでしょうか。
これは甘さ際立つ品種が出回ることによって、焼き芋がブームになった事から、
ここは、さつまいもの甘さというものにせまっていきたいと思います。
さつまいもの甘さというものにせまるにあたって、科学的に理論的にせまりたいです。
そもそもさつまいもの甘さとはどのような成分なのでしょうか。
その成分はどのようにして形成されるのでしょうか。
さつまいもの甘さが形成される仕組みとは?
さつまいもの甘さが形成される仕組みとは。
実はこの事は以前の記事で触れていました。
その記事は、野菜の低温調理の理論を学んだ記事です。
この記事で学んだ事の中に、さつまいもの低温調理に関する論文も学びました。
この論文を要約すると、
サツマイモの甘さに関わる主な糖質成分はフルクトー ス、グルコース、スクロース、マルトースであるが、なかでも後 2 者の占める割合が大きい。
このうちマルトースは、未加熱塊根には殆ど含まれず、加熱によって糊化したデンプンにβ-アミラーゼが作用する事により生成される。
したがって、デンプンの糊化特性や、β-アミラーゼの活性が加熱調理後のマルトース生成量に大きく影響する。
一般的な品種、系統では70∼75℃で糊化し始める、一方、β-アミラーゼは80℃を超えると活性が大きく低下する。それ故、サツマイモの加熱調理においては、70∼80℃の温度域にできるだけ長時 間曝すことが甘みを増すために有効。
とあります。
ここにさつまいもの甘さが形成される仕組みが書かれています。
その事だけ抜粋して要約すると、
さつまいもの甘さが形成される仕組みとは、
さつまいもが加熱され、糊化したデンプンにβ-アミラーゼが作用し、マルトース(麦芽糖)が生成される事。
と、まとめる事ができました。
さらにこの論文で、さつまいもの甘さを最大限引き出す為に、温度を調整する事が有効という事もわかりました。
次はそのさつまいもに最適な加熱温度と時間にせまりたいと思います。
いしやぁ~きいも~ぉ~♪おいもっっ♪
さつまいもに最適な加熱温度と時間とは?
さつまいもに最適な加熱温度と時間とは、先程の論文のその事だけ抜粋してみてみると、
一般的な品種、系統では70∼75℃で糊化し始める、一方、β-アミラーゼは80℃を超えると活性が大きく低下する。それ故、サツマイモの加熱調理においては、70∼80℃の温度域にできるだけ長時間曝すことが甘みを増すために有効といっている。
とあります。
要は、さつまいもに最適な加熱温度とは、
・デンプンが糊化する温度
・β-アミラーゼの至適温度
の2つをみればいいように思えます。
実践してみようという事で、BONIQ(ボニーク)を用意して実践していきます。
ポットにお湯を張り、BONIQを75℃に設定し、
さつまいもを洗い、沸騰したお湯にサッと通して殺菌し、フィルム袋に入れ、
BONIQをセットしたポットに入れ、低温調理にしていきます。
とりあえず串がすっと通るまで加熱していこうと思い、1時間ごとに串を刺していきました。
低温ですのでなかなか火が通りません。
1時間、2時間、3時間でも硬いままでした。
6時間経っても硬いままで埒が明かないので、取り出し、オーブンで焼いていく事にしました。
オーブンも低温の方がいいだろうと、140℃に設定し、1時間焼いてみました。
しかし、あまり柔らかくならなかったので、今度は180℃に設定し、1時間焼きました。
これで十分に火は通っているはずです。
実食してみますと、何ともパサパサしています。
繊維質がボソボソと感じられ、ねっとりという感じはあまり感じられません。
味はというと、甘味はそこまで感じられず、明らかに失敗だという事がわかりました、
これはどうした事でしょうか。
甘さも乏しく、何より柔らかくねっとりしていない事が問題です。
この問題の原因も実は以前の記事で触れていました。
野菜を低温調理するにあたって、注意しなければならない事があると、
低温調理と向き合う!野菜や果物の低温調理の理論を学んでみた!の記事で学んでいます。
それは、ペクチンの硬化です。
この論文を要約すると、
野菜を加熱調理するさい、途中で加熱を中断すると再び加熱しても軟化しにくくなる場合が多い。
野菜が長時間水に浸されたり、比較的高い温度(約60℃付近)で予加熱されたりすると再び煮沸しても軟化しにくくなる現象を硬化と呼ぶことにする。
硬化に及ぼす予加熱温度と時間の影響として、ダイコンでは、80℃以上では温度が高くなるほど速く軟化するが、70℃以下では生より硬化した。
60℃予加熱が最も硬化を起こしやすく、予加熱時間を長くするにしたがって硬さを増し、2~6時間で硬化は一段と明らかになった。
20℃ではほとんど硬化を起こさず、30~60℃では温度が高くなるほど、長時間加熱するほど硬化が増した。
70℃1時間予加熱しても相当硬化した。
80℃、90℃で予加熱したものは、予加熱しないで直ちに煮たものに比べて硬化していた。
とあります。
要するに、75℃で6時間加熱してしまった事により、ペクチンが硬化してしまい、パサパサとした食感を生んでしまったようです。
しかし、もう一つ問題があります。
なぜ甘くなっていなかったのでしょうか。
理論上では、75℃で加熱した事により、糊化したデンプンにβ-アミラーゼが作用し、マルトース(麦芽糖)が生成されているはずです。
原因は何かとインターネットを漁ってみると、
数多くの方達が、焼き芋という身近な料理をいかに美味しく作るかという事を取り上げていまいした。
その中でも、同じような状況に陥って、その後解決していく記事が書いてあるサイトを見つけました。
こちらの記事を要約すると、
まず、蜜たっぷりでべっとりまでしている焼き芋を売っている焼き芋屋さんが出てきます。
その焼き芋屋さんは、何も特別な事はしてないが、焼き方に工夫があるらしく、焼くのに6時間かかるといっています。
その方法は企業秘密という事で、筆者さんがそんな究極に甘い焼き芋を作るべく試行錯誤していきます。
まず、さつまいもを低温でデンプンを糖化させようと、炊飯器に水とさつまいもを入れ、6時間保温し、その後アルミホイルに包んで、厚手の鍋に石を敷き、とろ火で1時間焼いています。
その結果、蜜は出てこず、フナのエサみたいになったといっています。
それから、試行錯誤した結果、蜜たっぷりの焼き芋が出来ました。
うまくいった要因としてデンプンの糊化だといっています。
そのうまくいった焼き方というのが、
1、アルミホイルで包んだサツマイモを1~2時間、石で焼く(火は超とろ火で)。
熱くなりすぎるようなら火を止めて余熱を使う。
2、触ってみて、全体がやわらかくなったら、糊化完了。焼いたサツマイモを70度前後のお湯と一緒に炊飯器に入れ、保温で4時間。ここでアミラーゼにより蜜を製造。
3、お湯から出し、再び石で焼く。この時、アルミホイルは開けておき、水分が外へ逃げるようにする。様子を見ながら1~2時間、低温で焼く。ようやく身から蜜が染み出た。
との事です。
この記事をみてみると、
実際には、75℃程度の低温では、さつまいものデンプンは十分に糊化出来ず、
よって、β-アミラーゼが作用出来ず、マルトースが生成されなかったようです。
ですので、多少のβ-アミラーゼの活性の低下は妥協して、ペクチンが硬化しないような温度で、デンプンを十分に糊化させてから、多少残っているであろうβ-アミラーゼを活性させて、マルトースを生成させる事で、
甘くてねっとりした焼き芋が作れるようです。
さらに、先程インターネットを漁っていた時に、とても科学的に理論的に焼き芋の美味しい作り方にせまっている方のサイトを見つけたので紹介させて下さい。
これらの記事を要約すると、
まず、さつまいもの甘さが形成される仕組みと、ペクチンの硬化等を説いています。
その上で、70~80℃の保温でデンプンを糊化させ、β-アミラーゼを活性させると、ペクチンが硬化してしまうので、その妥協策として、
「70~80℃」という温度帯はあまり気にせず、そこそこのスピードでその温度帯を通過するように加熱して、途中で生成されたそこそこの量の麦芽糖の濃度を高めるようガンガン加熱を続けて水分を抜いていけば結果的に甘くなるんじゃね??
といっています。
結果として、美味しい焼き芋の作り方は、
さつまいもは皮が固くなりにくいシルクスイートを選び、オーブンで140℃で3時間加熱し、5分放置して完成
との事です。
さらに、140℃で3時間という数字の根拠も示しており、その中でも、3時間という数字は、さつまいもの水分量を30%減量させる事を基準に出しています。
さつまいもの水分量の目安として、24%減量くらいではまだ中心部分が「ホクホク」的な状態で、もう少し加熱して「ねっとり」させたいと思う状態です。28%くらいになるとだいたいOK. 30%は安全ラインといっています。
こちらの記事も、
理論上のさつまいもの美味しい作り方の考え方は同じで、その上で、
「手間をかけず、放っておけば勝手に出来上がる。でも美味しい。」
というレシピに仕上げています。
こちらのレシピで私も実践しました。
ただ、オーブンの性能の違いがあるようで、140℃で3時間ではあまりうまくいかず、160℃で2時間でとても甘くてねとっりした焼き芋が出来ました。
以上、すんなりとはいきませんでしたが、
さつまいもに最適な加熱温度と時間をまとめますと、
さつまいもに最適な加熱温度と時間は、
デンプンが糊化する温度 70~75℃
β-アミラーゼの至適温度 80℃以下
ペクチンが硬化しない温度 80℃以上
(※数字は目安でさつまいもの品種、産地による)
の3点に考慮しなければならない。
実際のさつまいもの調理方法として、
1、さつまいもをアルミホイルで包み、オーブンで140℃で1時間焼く。
2、焼いたさつまいもをBONIQで70℃で4時間加熱する。
3、再度オーブンで160℃で2時間焼く。
(※オーブンにより温度と時間は変動有り)
4、5分休ませる
さらに、より手軽な調理方法として
さつまいもをアルミホイルで包み、オーブンで140~160℃で2~3時間焼き、5分休ませる。
とまとめる事ができました。
では次に、先にまとめた調理方法で実際に焼き芋を焼いていきます
いしやぁ~きいも~ぉ~♪どんなぁ~ときぃ~もぉ~♪
焼き芋の作り方(実践編)
さつまいもを下準備をする
今回用意したのは、茨城県産の紅はるかです。
まずはこのさつまいもを洗い、沸騰したお湯にサッと通して殺菌します。
洗って殺菌したさつまいもは、拭いて、アルミホイルで包みます。
さつまいもを低温でオーブンで焼く
アルミホイルで包んださつまいもをオーブンで140℃で1時間焼きます。
焼いたさつまいもは、一応串で刺すと貫通出来ますが、まだ固い印象です。
さつまいもを低温調理する
ポットにお湯を張り、BONIQを70℃で4時間に設定し、
焼いたさつまいもをフィルム袋に入れ、BONIQをセットしたポットに入れ加熱します。
BONIQを70℃で4時間したものです。
見た目にはあまり変化はありません。
さつまいを再度オーブンで焼く
低温調理したさつまいもをオーブンで160℃で2時間焼きます。
蜜が出てきました。
焼いたさつまいもを5分休ませます。
休ませることで、さつまいも全体に蜜がいきわたり、皮が蜜でしっとりしています。
これでさつまいもを理論的に甘くする温度と時間で焼いた焼き芋の完成です。
ちなみに、この調理方法と、先程紹介したお手軽な調理方法である、
さつまいもをアルミホイルで包み、オーブンで140~160℃で2~3時間焼き、5分休ませる
で焼いたさつまいもを比べてみると、正直違いはあまり感じられないほど、どちらも甘くねっとりした美味しい焼き芋を作る事が出来ました。
次に、今回はこの焼き芋を使って、芋ようかんを作ります。
和菓子。それは日本の心。
芋ようかんの作り方
焼いたさつまいもの皮を剥き、フードプロセッサーで粘り気が出るまでしっかり潰します。
潰したさつまいもを裏漉しします。
粉寒天、砂糖、水を、
さつまいも:水:砂糖:粉寒天=
1:0.25:0.05:0.0125
の重量割合で用意します。
粉寒天、砂糖を水に溶かし、火にかけ、固まってきてからももう少し火にかけ、粉寒天にしっかり火を通します。
火にかけた粉寒天をさつまいもに混ぜ合わせ、流し缶に流し、上からラップを掛け、しっかり押し固めます。
この時に、寒天は常温で固まりますので、さつまいもは熱い状態のところに寒天を混ぜ合わせ、寒天がダマにならないようにします。
これを12時間程、冷蔵庫で冷やし固めます。
冷やし固めた芋ようかんを切り出して完成です。
美味しそぉ~!
実食
いただきます!
まず、焼き芋の感想を述べていきます。
焼き芋が焼けて、オーブンを開けてみると、なんともいえない甘い香りが優しくっふわっと香ってきて、そこからもうすでに食欲を掻き立てられます。
焼き芋の包まれているアルミホイルをめくってみると、さらに甘い香りを漂わせてきて、
見た目にもさつまいもの皮が蜜でしっとりになっていたり、あふれ出た蜜が飴状になり糸を引いていて、明らかに甘そうです。
真ん中でパカッと割ってみると、しっとりとねっとりとした感じが見てとれます。
そのままパクッとほうばると、いも全体がねっとりしていて、それは何か、干し芋のような芋ようかんのような食感に見舞われます。
甘さもしっかり感じられ、ただ焼いただけなのに、それはもうすでに、さつまいものスイーツのようになっています。
次に、芋ようかんの感想を述べていきます。
多少の砂糖、それも今回は和三盆を使い、和菓子らしさの甘さというのをちゃんと感じられるようにしつつ、素材の焼き芋の時点でちゃんと甘くなっているので、その素材らしさも残した味というのを考えて作りました。
素材の焼き芋の味を損なわないように、必要最低限のものだけ加えて、和菓子として成り立つようにしています。
そんな狙い通りの味になってくれて、食べた感じというのは焼き芋をギュッと固めましたというような食感と味を感じられます。
かといって、和菓子らしさの甘さも感じられるので、抹茶との相性が抜群です。
和三盆を使った事によって、その甘さも上品に感じられ、風味も微かに優しく存在感を主張せず、だけどいるのを感じられる事で、芋ようかんという素朴なお菓子を、どこか品のある和菓子に仕上げているように思います。
ごちそうさまでした!
まとめ
今回、さつまいもと向き合い、甘い焼き芋を作るべく、焼き芋の焼き方を理論的に考え、
さつまいもの甘さが形成される仕組み、さつまいもに最適な加熱温度と時間を導き出し、
それを実践する事で、甘くて美味しい焼き芋の作り方にせまる事が出来ました。
野菜の低温調理というのは、ペクチンの硬化が絡んで来たりで、まず食感というものの壁にぶつかってしまいます。
野菜を低温調理する意味はないと結論付けてしまいそうですが、低温調理する事で酵母が活性し甘味や旨味が増すという事が理論上ではいえる事です。
今回、さつまいもを低温調理し甘さを引き出すという、ある程度の結果が出せた事で、僅かながら野菜の低温調理のメリットが見出せられたかのように思います。
正直、焼き芋の焼き方を科学的に理論的に考えてみようと、勉強し、実践し、上手くいかず、試行錯誤しながらなんとかこの記事をまとめ上げるのに、なかなか苦戦しました。
理論上では上手くいくはずなのに、実践してみると上手くいかないという事は、まだ理論的に見過ごしている点があるという事です。
世の中の物事は全て科学的に説明できるはずですが、世の中の物事を全て分かっているわけではないので理論上からずれが生じます。
いわゆる一種のラプラスの悪魔といえるのでしょうか。
もしもある瞬間における全ての物質の力学的状態と力を知ることができ、かつもしもそれらのデータを解析できるだけの能力の知性が存在するとすれば、この知性にとっては、不確実なことは何もなくなり、その目には未来も(過去同様に)全て見えているであろう。
『確率の解析的理論』1812年
なにはともあれ、料理で美味しさまで辿り着くまでに理論上で足らない部分というのは、実践を繰り返し、試行錯誤しながら美味しさまで辿り着くしかありません。
この試行錯誤がなんとも歯がゆくてもどかしく、投げ出したくもなりますし、その辿り着いた美味しさというのが、結局今までの調理法で、新しい事が何も生まれなかったというのも珍しくありません。
というかほぼそんな事です。
ただその試行錯誤した事で、理論的にこの調理法はこういう理由でこうしてるんだという理解しながらできるという事は、とても大切な事のように思います。
ただ漠然と、言われた事を、今まで良しとされていた事を、何も考えずに、何も疑問を持たずにやっていては、そこには何も生まれないように思います。
今後も試行錯誤する事に億劫にならず、挑戦していきたいと思います。
こうして、いずれ開く店への道のりが、また一歩踏み出されたのです。
19歩目!
コメントはこちらからどうぞ
関連サイトを網羅した素晴らしい記事に感謝いたします.
私も焼き芋の中心温度を測って分かったのですが,結局糊化しないと甘くならず,その温度は個体依存で,ほぼ80゚以上でした(試した紅はるか6本では).
糊化と糖化で2段階制御するのが定番なのか,やきいもpukupuku監修の超蜜やきいもトースターも2段階設定だそうです.
「19歩目!」に頭が下がりました.ありがとうございました.
sakuzzoさん、ありがとうございます。
素晴らしい記事に感謝なんて言ってもらえて嬉しいです。
紅はるか6本の糊化した中心温度が80℃以上というデータ。
参考になります。ありがとうございます。
そして、やきいもpukupuku監修の超蜜やきいもトースター。
今、クラウドファンディングされてるんですね。
言わば、こちらの焼き芋が、甘い焼き芋を作る上での目指す形ですもんね。
やはり、甘い焼き芋を作るには、
ペクチンの硬化を考えながら、
βアミラーゼの至適温度を考えながら、
デンプンを糊化させ、
そして、糊化したデンプンを糖化させる、
という狙いで良さそうですね。
コメント頂いて嬉しいです。ありがとうございます。
とても興味深く拝読させていただきました。
記事の中に「160℃で2時間でとても甘くてねとっりした焼き芋が出来ました。」
と記載がありましたが実践の章では低温調理をされているようですが、あえて低温調理をした理由はあるのでしょうか?
160°2時間と低温調理の違い(甘さや蜜の量など)があれば教えていただけますと幸いです。
さとしさん。
拝読して頂きありがとうございます。
低温調理を施した場合と、そのまま160℃で2時間加熱した場合の違いとの事ですが、
ブログにも書いてある通り、私自身の感覚として、甘味やねっとりさ等、正直違いはあまり感じられませんでした。
その正確な違いとなると、糖度計等、計測器を用いて検査する事になるかと思われます。
そこまでは正直行っておりません。
ただ、私自身の食味上で違いが感じられないとなると、数値的にもそこまで違いがでてこないのではないかと考えられますし、
数値の違いがでてくるのであれば、それは調理工程による違いではなく、薩摩芋自身の個体差によるものの方が影響を与えるのではないかとも考えられます。
では、そこまで調理工程による美味しさの違いが発生しないのであれば、より手軽な調理方法で調理したほうがいいのに、何故より複雑な調理方法を実践したのかという事ですが、
私としては、そこに人間として感じられる違いがないのかもしれないが、理論上では0.1でもよりよいものとなりうるのであれば、そのよりよい方の調理方法を選んだというのが、私の考えです。
意味ないといえば意味ないですし、無駄な事だとも思われますが、そんな無駄だとも思われるような事をする事、そこに想いが込められるのではないかとも、私ながら考えております。
以上、長々となりましたが、私の想いを書かさせて頂きました。
ただ、これは現時点での私の考え方ですので、また変わる事もあるかと思われます。
どうぞよろしくお願い致します。