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【豚バラ肉の研究】中国の古典料理「燻煨肉(シュンウェイロウ)」(豚バラ肉の燻し煮蓮の葉包み焼き)を作ります!

燻煨肉 -料理方法の研究



何か向き合う食材、面白い食材、珍しい食材はないかなと、お肉屋さんに行ってみたところ、
皮付きの豚バラ肉を見つけました。
兵庫県産三田ポーク皮付き豚バラ肉です。

豚バラ肉

この皮付きの豚バラ肉という食材を見つけた時に、一度作ってみたいなと思っていた料理がありました。
それが、1792年、中国が清の時代に文人、詩人で食通としても名高い袁枚(えんばい)が著した料理書
随園食単(ずいえんしょくたん)にも載る燻煨肉(シュンウェイロウ)です。
随園食単は、1825年、フランスの法律家、政治家で食通としても名高いブリア・サヴァランが著した料理書
美味礼讃(びみれいさん)と並ぶ、東西の美食に関する双璧をなす名著です。
随園食単に書いてある燻煨肉の作り方は「醤油と酒でよく煮込み燻す」程度しか書かれていないのですが、
色々な料理本に、色々な方が研究と研鑽による「醤油と酒でよく煮込み燻す」の行間を読み取った料理方法を載せています。
基本的に、皮付きの豚バラ肉を下茹でし、揚げて、煮込み、蒸し煮、燻製、蓮の葉包み焼きにするという、手間と時間が掛かる料理です。
中国料理では複数の加熱調理を重ねた料理は珍しくないですが、燻煨肉はその工程の数、時間の長さ、その結果生まれる味の上品さで別格の存在といわれています。

今回はこのような料理を、さらにここに自分なりに、自分らしく和の要素を加えて作ってみようと思います。

河野裕輔
河野裕輔

好吃!(ハオチー)



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燻煨肉(シュンウェイロウ)(豚バラ肉の燻し煮蓮の葉包み焼き)の作り方

豚バラ肉を下茹でする

まず、豚バラ肉を下茹でします。
この際の水は、高硬水(硬度1468mg/L)のコントレックスを使用します。
食材の下茹で等、食材のアクを取るのに最適な水は高硬度の水です。

なぜ食材のアクを取るのに最適な水は高硬度の水なのかというと、
過去の記事、水と向き合う!料理に最適な水とは?ミネラルウォーターを飲み比べてみた!で学んだ事を活かします。
この記事で、料理に最適な水とは、その料理、その調理工程別に、様々な水の特性を考慮して選ばなければならないという事を書きました。
その中で、高硬度の水で取っただしやスープは、高硬度の水に多く含まれるカルシウムが、昆布から溶出するアルギン酸等の多糖類、牛肉や鶏肉から溶出するタンパク質、野菜から溶出するペクチン等と結合し、アクとなる事により、透明度の高いだしやスープが取れる事を論文から学びました。
ですので、食材のアクを取るのに最適な水は高硬度の水なのです。

という事で、コントレックスに長ネギの緑の部分と生姜を適量入れ、沸かします。

コントレックス、葱、生姜

沸いたら豚バラ肉の皮面を上にして、1時間茹でます。
この際、皮面を上にする理由は、皮面を下にすると皮が温まりすぎて狙う状態より柔らかくなり、次の揚げる工程の際に弾けてしまう事を防ぐ為です。

豚バラ肉、下茹で



豚バラ肉を成型する

下茹で1時間した豚バラ肉です。

豚バラ肉、下茹で後

このように縮んでいるので、重しをして常温で3時間置き成型します。

豚バラ肉、重し



豚バラ肉を揚げる

次に、重しをして常温で3時間置き成型した豚バラ肉を揚げます。
皮の香ばしさと、煮崩れしない強さを得るべく、250℃の高温の油で揚げます。
揚げる前に、風味を付ける目的で濃口醤油を全面に塗ります。
皮面は醤油を弾きますので、剣山等で穴を開けます。
それでもどうしても弾きますので、手で馴染ませます。

豚バラ肉、醤油

油を250℃まで上げます。
この高温が香ばしさを得る為に重要なのですが、とても危険な為十分に注意しながら扱います。
油跳ねに十分に注意しながら豚バラ肉を入れ、鍋底で豚バラ肉が焦げ付かないように時折動かしながら、カラリとキツネ色になるまで揚げます。

豚バラ肉、揚げ

カラリとキツネ色になるまで揚がりましたら、油から引き上げ、すぐに沸騰したお湯で湯通しします。

豚バラ肉、揚げ後



煮汁を準備する

この料理は、豚バラ肉を煮る煮汁に紅茶を使用します。
今回使用する紅茶は、私の地元愛知県岡崎市にある宮ザキ園さんのわ紅茶です。

この紅茶を抽出するわけですが、ここで疑問がでてきます。
紅茶に最適な水とはどんな水なのでしょうか。
紅茶を淹れる最適な温度とは何度なのでしょうか。
このような事が知りたい時、現代は情報にとても恵まれていると思います。
ほんの数十年前までは、図書館等で本等から情報を探し出すか、
その知りたい事に造詣が深い方を訪ねる等しか手段がなかったのですが、
今やインターネットで「紅茶 水」や「紅茶 温度」等で調べれば即座に情報を得られる事ができます。
ただ、これは昔も同じですが、その情報の有用性、根拠はとても大事になってきます。
ただこうですと答えだけ述べている情報は疑ってかからなければなりません。
ただ情報を鵜呑みにするだけでなく、しっかり理解して自分の知識とすることが大事なのだと自分を戒める為にもここに述べておきます。



紅茶に最適な水、最適な温度とは?

という事で、自分なりに情報を収集し参考にさせて頂いたサイトと共に、
紅茶に最適な水と、紅茶を淹れるのに最適な温度にせまります。
まずは、紅茶に最適な水にせまります。

こちらのサイトには、水の硬度による紅茶の影響を記しています。

・成分に関わる影響
紅茶に含まれるタンニンはカルシウムと結合し、変化します。カルシウムは硬水に多く含まれていますので、硬水で入れた紅茶はこの反応の影響をより受けやすいのです。逆に、軟水で入れた紅茶は、水に影響を受けずに茶葉本来のキャラクターが立ちやすいと言えるでしょう。

・色に関わる影響
カルシウムと結合したタンニンは、水の色を濃くします。重厚な濃い色が好みならば硬水、薄く明るい色が好みならば軟水で入れるのがおすすめです。

・味に関わる影響
お茶の渋味の主要素はタンニンです。硬水で入れた紅茶は、カルシウムがタンニンと結合するため、渋味がマイルドになり、軟水ではその渋味が残ります。紅茶の渋味が苦手な方は硬水で入れるのがおすすめです。

・香りに関わる影響
香りについても味と同様に、マイルドなのが硬水、強く残るのが軟水です。紅茶の華やかな香りを楽しみたいのであれば軟水で入れるのがおすすめです。

結果として、
日本紅茶協会や、
本場イギリスで、2003年6月24日に英国王立化学協会が発表した「How to make a Perfect Cup of Tea(1杯の完璧な紅茶の入れ方)」でも述べているように、
紅茶に最適な水は軟水であると記しています。
ただ、硬水に適した産地の茶葉やブレンドもあるといっています。

さらに紅茶を淹れるのに最適な温度にせまります。

こちらのサイトでは、紅茶のダージリンとアッサムを用いて、紅茶を淹れる温度(100℃、60℃、25℃)が、それぞれに含まれるポリフェノール量(カテキン類、テアフラビン類等)、カフェイン量、アミノ酸量にどのように影響するのかを調べて述べています。

・ポリフェノールについて
紅茶本来のもつ適度の心地よい苦味と渋みは、100度程度の熱湯により最も現れるようです。水出し紅茶にするならアッサムよりダージリンが適しているといえそうです。アッサムで水出しにすると、適度に心地よい苦みと渋みが十分に感じられず、やや水っぽいと感じることがあります。これは総ポリフェノール量の測定結果によって科学的に実証できたといえるかもしれません。
また、紅茶というと思い浮かぶ紅系のきれいな色(テアフラビン類の量)は、アッサム100度の熱湯抽出で最もよく出ることがわかりました。また、これについてダージリンの場合では、常温水で長時間かけて抽出したほうが、100度抽出より若干良く出ることもわかりました。

・カフェインについて
アッサムとダージリンで比較すると、アッサムのほうが茶葉本来のカフェイン量が多いといえそうです。一般的に紅茶をいれるとき、100度程度の熱湯でいれますが、その場合、アッサムのほうが溶出するカフェイン量が多いといえるでしょう。60度程度ではカフェインはあまり溶出されず、特にアッサムにおいては60度では、100度でいれた紅茶の3分の1程度のカフェインしか溶出していません。
水出しでつくる、ダージリンにはカフェインが多く溶けだします。アッサムについては100度でいれた紅茶のカフェインが最も多いことがわかりました。

・アミノ酸について
アッサム、ダージリンとも60度が最も溶出していることから、熱湯より、玉露をいれるときのように沸騰より低い温度でいれた方が旨みを引きだしやすいと思われます。また、水出しでじっくり紅茶をいれてあまり渋みを出さずに、旨みを引きだす方法は有効だといえそうです。

結果として、
紅茶は熱湯でいれる事により、元来の茶葉に備わった苦みや渋み、旨味を引き出す事ができ、
紅茶を淹れるのに最適な温度は100℃程度の高い温度であると述べています。
ただし、旨味は100℃より60℃の方が出やすいようなので、茶葉によって旨みを引き出したい紅茶については必ずしも100度程度の熱湯でいれるのではなく、仕上がりの紅茶のために水の温度を調整すると面白そうですとも述べています。



これで、紅茶に最適な水、最適な温度を知る事ができました。
しかし、ひとつ気になる事があります。
この最適な水、最適な温度はあくまで紅茶を飲むのに最適なものです。
今回は紅茶を使って豚バラ肉を煮るのですから、そのままこれを適用していいのかという疑問が浮かんでしまいました。
というのも、過去の記事、水と向き合う!料理に最適な水とは?ミネラルウォーターを飲み比べてみた!で学んだ事の中に、
コンソメのアミノ酸含有量は、硬水、高硬水が蒸留水、軟水に比べて多い傾向にある事。
牛肉スープストックの遊離アミノ酸合計量は、エビアン(硬度304mg/L)に最も多く、官能評価で最も好まれたのはエビアンであった事。
という論文の記述があり、という事は、豚バラ肉を煮るのに最適な水は中硬度の水であるはずです。
今回は豚バラ肉を食べる料理なので、今回の料理に最適な水は豚バラ肉に合わせるべきです。
ですので今回は紅茶を中硬度の水で淹れる事になります。
そして紅茶を淹れる温度も飲むのでなく料理に適した温度で淹れるべきです。

ここでもう一度、先程学んだ紅茶を飲むのに最適な水、最適な温度を読み解いていくと、
硬水で入れた紅茶は、カルシウムがタンニンと結合するため、渋味がマイルドになる事。
旨味は100℃より60℃の温度の方が出やすい事。
が述べられている事を思い出します。
今回の豚バラ肉を煮る為に淹れる紅茶は、渋味が抑えられた方がいいので中硬度の水という選択は理にかなっていますし、豚バラ肉に紅茶の旨味を移す為にも60℃で淹れた方がいいように思います。



という事で、宮ザキ園さんのわ紅茶をエビアンで淹れます。

わ紅茶、エビアン

エビアンを60℃に沸かし紅茶を淹れます。

紅茶、60℃

これに蓋をし蒸らしていきます。

紅茶、蒸らし

ここで問題なのが抽出時間なのですが、少し長めに置いてみようと思い、5分づつ味をみながら置いてみる事にしました。
というのも、淹れてすぐの5分程でも十分味はするのですが、茶葉が開いているような様子が見受けられなかったのでもう少し置いてみてくなったのです。
10分15分と様子を見て、30分経ったところで茶葉が十分開いている様子が伺えました。
ですので、30分で茶葉を漉します。

わ紅茶

味をみてみると、もともとの宮ザキ園さんのわ紅茶の特徴もありますが、渋味はそれほど感じられず、ほのかな甘味まで感じられとても美味しい紅茶を淹れる事ができました。
しかし、飲む目的だとすると、高温で淹れた方がもっと香りが立つだろうし、軟水で淹れた方が茶葉本来のキャラクターが立ちやすいようなので、その方がいいのだろうなというのも感じました。


次に、こうして淹れた紅茶に調味料を加え煮汁に仕立てます。
加える調味料は、濃口醤油、味醂、日本酒、砂糖です。
割合は、紅茶:濃口醤油:味醂:日本酒:砂糖=8:1:1:1:0.5です。

豚バラ肉、煮汁
丸石醸造株式会社



豚バラ肉を煮汁で煮込みさらに蒸し煮にする

この煮汁を沸かし、沸いたら豚バラ肉を皮面を下にして入れ、
再び沸いてきたら弱火にし紙蓋をのせ2時間煮ます。
この時煮汁は煮詰め過ぎないように注意します。

豚バラ肉、煮込み

2時間煮たら、煮汁の油を取り除き、
次は皮面を上にして1時間蒸し煮にします。

豚バラ肉、蒸し煮

1時間蒸し煮にしたら、このまま冷蔵庫に入れ、5日程置き味を染み込ませます。



豚バラ肉を茶葉で燻製にする

5日程置き味を馴染ませた豚バラ肉を1人前ずつの大きさに切り分けます。
これをわ紅茶の茶葉で5分燻します。
簡易的な燻製方法として、フライパンにアルミホイルを敷いて、そこに茶葉を置き、網を置き、

紅茶、燻製

その上に豚バラ肉を置き、火を付け煙が出てきたら弱火にし、

豚バラ肉、燻製

ボウルで蓋をして燻します。

豚バラ肉、燻製中



豚バラ肉を蓮の葉包み焼きにする

次に、豚バラ肉を、乾燥した蓮の葉で包み焼きにします。
乾燥した蓮の葉は水で戻し、そこに豚バラ肉を置きます。

豚バラ肉、蓮の葉

豚バラ肉の皮目が上になるようにキッチリ包みます。

豚バラ肉、蓮の葉包み

これを250℃のオーブンで30分焼きます。

豚バラ肉、蓮の葉包み焼き



煮汁を煮詰めてたれを作る

煮汁を煮詰め、盛り付ける時のたれとして使います。



盛り付け

蓮の葉で包んだまま器に盛り付け、お客さんの前で切り開き、1人ずつに分け、煮汁を煮詰めたたれを掛けて完成です。

燻煨肉
河野裕輔
河野裕輔

美味しそぉ~!.



実食

河野裕輔
河野裕輔

いただきます!

まず、お客さんの前に運ばれた時に迫力があります。
演出として蓮の葉を切り開き、黒く照り輝いた豚バラ肉が現れる。
これは普通に豚バラ肉を出されるよりも、驚きや期待が膨らむ事でしょう。

そして、なんといってもこの料理の特筆すべき事といえば香りです。
わ紅茶のなんともいえないかぐわしい香り。
さらに蓮の葉の香りも紅茶に近いものがあり、相乗効果で香ってきます。

その紅茶の香りを常に嗅ぎながら口に運ぶと、より一層香りを味わう事ができます。
香りを鼻から、さらに口の中から嗅覚受容体に受ける事によって、双方向から香りを感じる事によって、
まさにぶわぁっっという感じで紅茶の香りを味わう事ができます。

味も、その紅茶の効果により豚バラ肉という油の多いこってりした食材を緩和させ、
豚バラ肉という食材ながらもすっきり爽やかな印象を与えさせてくれます。
さらに、長時間様々な加熱方法で火を入れた事により、柔らかく煮込まれています。
皮のむちっとした食感、油のとろっとした食感、肉のほろっとした食感と、三者三葉の食感で口の中をとても豊かなものにしてくれます。

この料理の手間と時間の見返りとして、なんともいえない御馳走感を食べた人に与えてくれるので、
この手間と時間は掛けるべきものなのだと実感できました。

河野裕輔
河野裕輔

ごちそうさまでした!



まとめ

今回、豚バラ肉と向き合い、中国の古典料理、燻煨肉(シュンウェイロウ)(豚バラ肉の燻し煮蓮の葉包み焼き)を作りました。

自分の料理のベースは日本料理なので、今回のように中国料理や他の分野の料理を作ることによって、自分の料理の幅が広がる事が実感できました。
その食材への火を入れるアプローチの仕方、味を入れるアプローチの仕方は、やはり日本料理や中国料理やフランス料理等では違うものです。
様々なアプローチ方法を知っておく事によって、自分の料理の引き出しが増える事は間違いないです。

自分がお店を開く時には、日本料理店とうたう事はせずにやりたいと思っています。
「ここは何料理屋だ?」と聞かれれば「河野裕輔料理です!(自分の名前)」なんて言ってみようと思っています。
その為にはもっと色々な知識と経験を積んで、自分という人間をもっと磨き上げなければなりません。
これからも選り好みせず貪欲に知識と経験を積んでいきたいと思います。



こうして、いずれ開く店への道のりが、また一歩踏み出されたのです。

河野裕輔
河野裕輔

15歩目!

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