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【だしの研究】野菜でだしは取れるのか?白菜を干してだしを取ります!

真鱈の出汁漬け焼き-料理方法の研究



以前の記事、【おいしさの研究①】おいしさとは?うま味とは?コクとは?「おいしさ」を科学します!(味覚篇)で、うま味のことを学びました。

その時に、うま味が豊富な野菜として、意外にも白菜が挙げられることを知りました。
淡泊な野菜の印象ですが、グルタミン酸が豊富に含まれていたのです。

しかし、私は以前から白菜という野菜ほなかなか使い辛いものだなぁと思っていました。

白菜の約95%は水分です。
白菜というと、その代表的な使い方として鍋が挙げられますが、鍋に白菜を入れるとどうしても出汁が薄まる印象が自分の中でありました。

けれども、うま味が豊富、グルタミン酸が豊富ということならば、何かこれを活かす方法を考えたくなりました。

そこで思いついたのが、グルタミン酸が豊富ということならば、昆布と同じように出汁が取れるのではないかということです。
出汁を取る昆布は干して乾燥させています。
白菜も同様に干すことで、ネックである水分も解決し、白菜の豊富なうま味を抽出できるのではないでしょうか。

しかし、上手くいく保障はありません。
「白菜だし」や「干し白菜だし」とネットで調べてもそれらしい情報は得られませんでした。
それでも実際にやっていきたいと思います。
まずは、干し白菜だしを理論的にまとめられそうなところを少しでも整理し成功へ近づけたいと思います。

河野裕輔
河野裕輔

よ~く考えよぉ~!



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干し白菜だしの作り方(理論編)

干し白菜での出汁の取り方の理論を考えるのに、まずは、昆布の出汁の取り方の理論を、以前、魚節と昆布のだしについて学んだ記事で振り返り、干し白菜だしの取り方の参考にしていきたいと思います。

だしに最適な水はより硬度が低い軟水

昆布は60℃で1時間加熱する

60℃で1時間が、最も旨味成分のグルタミン酸とアスパラギン酸が溶出され、1時間以上加熱しても、旨味成分の溶出量は増えないというデータがあります。

なお、下記の理由から、70℃以上にならないように注意します。
1. 雑味が出る:アルギン酸などが溶出される
2. 風味が損なわれる: アルデヒド類、イオウ化合物などのにおいが発生する
3. 出汁が濁る: 色素のβカロテンやクロロフィルが溶出し、出汁が濁る
4. アクが出る: ヨウ素などのミネラル類が溶出する



さらに、同じ干し物の出汁として、干し椎茸の出汁の取り方も参考にしてみます。
干し椎茸を水に漬ける時間で戻し汁(出汁)のうま味に違いがでるのか検証しているサイトがありましたので、こちらを参考にさせて頂きます。

「10時間以上冷蔵庫で寝かせる」としいたけの旨みは全く違うことが判明!



これらの理論を参考にして、干し白菜だしの作り方をまとめてみます。

干し白菜だしの作り方

1、白菜を洗い、干す。
2、干し白菜を冷蔵庫で12時間超軟水に漬ける。
3、干し白菜と戻し汁を60℃で1時間加熱する。
4、白菜を取り出し、丁寧に漉す。



では、さっそく実際に干し白菜だしを作っていこうと思います。

河野裕輔
河野裕輔

いってみよう!やってみよう!



干し白菜だしの作り方(実践編)

今回用意したのは、普通にスーパーに並べられている、茨城県産白菜です。

白菜



白菜を干す

まずは、白菜を干します。

白菜を1枚づつ外し、水で洗います。
水洗いした白菜を、干し網や、物干しハンガーで干します。

白菜、干し1
白菜、干し2



これを白菜がカラカラになるまで干します。
天日干しと、雨が降りそうなら室内干しを繰り返し、1ヶ月程干すとカラカラになりました。

干し白菜



干し白菜を水で戻す

次に、カラカラに干した白菜を水戻しします。

超軟水1ℓに対し、干し白菜100gを用意します。
これを、冷蔵庫で12時間漬けます。

干し白菜、水戻し



冷蔵庫で12時間水戻しした干し白菜だしです。

干し白菜、水戻し後

この水戻しした干し白菜の戻し汁でも十分に白菜のうま味が出ていました。
しかし、よりうま味を抽出するために、さらにこれを加熱していきます。



水戻ししたし白菜だしを加熱する

次に、水戻しした干し白菜と戻し汁を加熱します。

60℃で1時間加熱します。

干し白菜だし、60℃



干し白菜だしを漉す

最後に、加熱した干し白菜だしを漉します。

加熱した干し白菜だしの白菜を取り出し、クッキングペーパー等で丁寧に漉します。



干し白菜だしの完成

漉したものが、干し白菜だしです。

干し白菜だし



まず、見た目に濁りも少なく、とても澄んだ出汁が取れました。
香りも感じられ、白菜の香りが、今まで嗅いだことのある香りのはずなのですが、あまり意識して嗅いだことのない白菜の香りを感じられました。
いい意味での多少の青臭さと、干したことによるものなのか若干の香ばしさも感じられました。
一口飲んでみますと、淡泊な白菜からは想像できないほどの白菜のうま味をグッと舌で感じられ、それでいて、えぐみや嫌味を感じることもなく、とても美味しい出汁が取れました。



干し白菜だしの活用法を考える

この干し白菜だしをどのように料理に活用したらいいのでしょうか。

まず、うま味の相乗効果のことを考えます。
この干し白菜だしのうま味の主な成分はグルタミン酸です。
このグルタミン酸に、鰹節等に多く含まれるイノシン酸や、干し椎茸等に多く含まれるグアニル酸を掛け合わせるとうま味が強くなることを、以前の記事、【おいしさの研究①】おいしさとは?うま味とは?コクとは?「おいしさ」を科学します!(味覚篇)で学びました。
ですので、鰹節だしや、干し椎茸だしと掛け合わせると、よりうま味が強くなります。

この干し白菜だし、鰹節だし、干し椎茸だしの組み合わせを見たときに、何か既視感がある組み合わせだなと思いました。
それは鍋料理です。
白菜といえばやはり鍋料理となります。

そこで、思い浮かびました。
出来上がった料理に白菜は見えないけれど、白菜の味がする。
出来上がった料理に鍋の材料は見えないけれど、鍋の味がする。
そんな料理が出来そうだと思いました。

具体的に、真鱈の鍋をイメージしましょう。
干し白菜だしと、魚節と昆布のだしと、干し椎茸だしを合わせ、鍋の材料をイメージした出汁を作り、
その出汁に鱈を漬け、
中まで出汁の染み込んだ鱈を焼き、
そこにたっぷりの合わせ出汁を注ぐ。
そのお皿には、白菜や椎茸等の鍋の材料は見えないけれど、一口、鱈の焼いた身と、出汁を味わえば鱈鍋の味がする。
そんな料理を作ってみようと思います。

河野裕輔
河野裕輔

タラタラしてんじゃね~よ!



真鱈の出汁漬け焼きの作り方

今回用意したのは、北海道産真鱈です。

真鱈



魚節と昆布のだしを取る

まずは、魚節と昆布のだしを取ります。

魚節と昆布の出汁の取り方は、以前の記事、【だしの研究】かつお節、まぐろ節、真昆布、利尻昆布、羅臼昆布、日高昆布、だしに最適な組み合わせにせまります!で学んだ作り方で作ります。

魚節と昆布のだしの作り方

1、超軟水1ℓに対し、鮪節16g、鰹節4g、利尻昆布10g、羅臼昆布10gを用意する。
2、昆布の表面の汚れを、固く絞った濡れ布巾で拭き取る。
表面の白い物質(塩分とマンニット)を落としすぎないようにする。
3、昆布を冷蔵庫で1時間水に漬ける。
昆布の状態により水に漬ける時間を調整する。
4、昆布だしを60℃で1時間加熱する。
5、昆布を取り出し、70℃まで加熱する。
6、鮪節と鰹節を入れて、すぐに火を止める。
7、鮪節と鰹節が沈むのをまって10秒置く。
8、丁寧に漉す。



干し椎茸だしを取る

次に、干し椎茸だしを取ります。

先程作った干し白菜だしの作り方の理論を参考にして作ります。

干し椎茸だしの作り方

1、干し椎茸を冷蔵庫で12時間超軟水に漬ける。
2、干し椎茸と戻し汁を60℃で1時間加熱する。
3、椎茸を取り出し、丁寧に漉す。



干し椎茸

干し椎茸を冷蔵庫で12時間超軟水に漬けます。

干し椎茸、水戻し

冷蔵庫で12時間水戻しした干し椎茸だしです。

干し椎茸、60℃

干し椎茸と戻し汁を60℃で1時間加熱します。

干し椎茸、60℃

椎茸を取り出し、丁寧に漉します。

漉したものが、干し椎茸だしです。

干し椎茸だし



合わせだしを作る

先程作った、干し白菜だしと、魚節と昆布のだし、干し椎茸だしを合わせます。

割合は、魚節と昆布のだし:干し白菜だし:干し椎茸だし=2:1:1で合わせます。

3種だし



漬けだしを作る

合わせだしに味を入れ、真鱈を漬ける漬けだしを作ります。

調味料の割合は、合わせだし:薄口醤油:日本酒:柚子=15:1:1:0.5で合わせます。
(私は再現性を重視する為、全ての食材、調味料をはかり、デジタルスケールで計量しますので、割合は重量になります。)

漬けだし



真鱈を漬けだしに漬ける

漬けだしに真鱈を漬けます。

真鱈の中まで十分に合わせだしの味が染み込むように冷蔵庫で120時間(5日)程漬けます。

真鱈、だし漬け

冷蔵庫で120時間漬けた真鱈。

真鱈、だし漬け後



真鱈を炭火で焼く

冷蔵庫で120時間漬けた真鱈を炭火で焼きます。

加熱方法で炭火を選ぶメリットは、以前の記事、【低温調理の研究】牛もも肉の最適な加熱温度と時間は?牛もも肉のステーキを作ってみました!で学びましたので振り返ります。

炭火のメリット

・遠赤外線により食材の表面が素早く加熱されること。

・炭の燃焼時に水を発生させないことによる食材に余計な水分を与えないこと。



真鱈の皮から焼き、メイラード反応による香ばしさを付けます。
身の方は焼き過ぎに注意し、真鱈の合わせだしを含んだ水分を十分に残すように焼き上げます。

真鱈、炭火焼き




仕上げ

炭火で焼いた真鱈を器に盛り、合わせだしを注ぎ、薬味をのせ完成です。

干し白菜だしと、魚節と昆布のだし、干し椎茸だしを合わせただしを、
合わせだし:薄口醤油:日本酒:=15:1:1の割合で調味し、
それを器にたっぷり注ぎ、
鍋の薬味をイメージして、長葱と柚子の細切りをのせます。

真鱈の出汁漬け焼き



実食

河野裕輔
河野裕輔

いただきます!

まず、干し白菜だしと、魚節と昆布のだし、干し椎茸だしの合わせだしが、濁りも少なく、とても澄んでいて、見た目から味の優しさが想像できます。

この料理は出汁が主役ということもあり、どのように一口入れるかと考えると、真鱈に合わせだしをたっぷり絡めて口に含んだ方が、この料理を味わえるだろうと思います。
ですので、そのように口に入れようとすると、まず鼻から、合わせだしの香りと柚子の香りを感じられます。
やはり、柚子の香りは強く感じられるのですが、合わせだしの、特に干し白菜だしの香りがなかなかの個性を発揮し、いわゆる日本料理の鰹節と昆布のだしの香りに、より一層の深みを与えている印象を受けました。
そして、口に入れ味わいますと、だしのうま味をグッと舌で感じられながらも、その味わいには優しさを感じられます。
さらに、真鱈の味わいと相まれば、まさに鱈鍋の味そのものを感じられました。
干し白菜だしと、魚節と昆布のだし、干し椎茸だし、そのどれもがうま味の良さを発揮し、相乗効果による味わいを作り出しているように思いました。

鱈鍋の材料は見えないけど、鱈鍋の味がする。
白菜は見えないけど、白菜の味がする。
この料理の主役は白菜です。

思い描いた料理がある程度形に出来たことが嬉しかったです。
これはこれでなかなか面白い料理が出来上がりました。

河野裕輔
河野裕輔

ごちそうさまでした!



まとめ

今回、うま味が豊富な野菜として、意外にも白菜が挙げられることを知ったことで、そのうま味を活かす方法を考え、出汁を取ることを思いつき、
野菜でだしは取れるのかということで、白菜を干して、干し白菜だしを作ってみました。

この干し白菜だしの可能性を今回感じた事で、野菜でも出汁が取れるということで、出汁というものの可能性がより一層広まったように思います。
出汁の可能性が広まったということは、料理の可能性もそれ以上に広まったと思います。

お店で出す料理として、普遍的で心地よい安心感のある料理も大事です。
しかし、お客様に感動や驚きを与える料理というのも必要だと思います
料理で感動や驚きを与えるということは、なかなか難しいことだと思います。
感動や驚きというものは、お客様の予想をいい意味で裏切らなければ、感動や驚きは起こりません。
ただ、そこに料理としての美味しさというものは当然としてなければなりません。
加えると、美味しさの点で、予想の上を行く裏切りを起こすことが理想だと思います。
そのような料理はなかなか生み出せるものではありません。
思い付いても、形に出来なかったもの、上手くいかないものがほとんどです。
上手くいったとしても、お客様に出せるクオリティーのものはどれほどになるのでしょうか。
しかし、そこでめげずに考え続けることしか、感動や驚きを与える料理を生み出す方法は無いように思います。

いつか、お客様に感動を与える料理を生み出したいものです。



こうして、いずれ開く店への道のりが、また一歩踏み出されたのです。

河野裕輔
河野裕輔

28歩目!

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