日本人における野菜の摂取量ランキングというものがあります。
こちらによると、日本人が最も食べている野菜は大根のようです。
という事で今回は大根についてせまりたいと思います。
がんばれ!おでんくん
大根の基礎知識
まずは、大根そのものについて学んでみたいと思います。
Wikipediaを参考にさせて頂き学んでいきます。
大根
ダイコン(大根、学名:Raphanus sativus var. hortensis)は、アブラナ科ダイコン属の越年草で、野菜として広く栽培される。
地中海または中央アジアの地域が原産といわれており、日本、中国、ヨーロッパなど各地で主に肥大した根を食用とするほか、葉も食材となり、種子から油を採ることもある。
葉は緑黄色野菜、いわゆる大根の部分は淡色野菜でもある。
多くの品種があり、根の長さ・太さなどの形状が多様。また皮の色も白以外に赤、緑、紫、黄、黒などがあり、地域によっては白よりも普通である。
大根の名称
ダイコンは和名で、別名としてスズシロ、オオネとも呼ばれている。
名前の由来は、古くは「大きな根」を意味する大根(おおね)の字が当てられていたが、のちに音読みされて「だいこん」になった。
日本のダイコンは根茎部分が白い品種で、スズシロ(清白、蘿蔔)の別名もこれに基づく。外国語名では、英名はラディシュ (radish) 、仏名がラディ (radis) 、そして伊名はダイコン (daikon) あるいはラヴァネロ・ジャポネーゼ (Ravanello giapponese) で、中国植物名は、莱菔(らいふく)という。
英名のラディシュ(ラディッシュ)は、ラテン語で根を意味する radix に由来する。
大根の歴史
ダイコンの野生種は見つかっておらず原産地は確定されていないが、地中海地方や中東など諸説ある。
栽培種は中央アジアが起源地のひとつと考えられている。
紀元前2200年の古代エジプトで、今のハツカダイコンに近いものがピラミッド建設労働者の食料とされていたのが最古の栽培記録とされ、その後、ユーラシアの各地へ伝わる。
中国では西城から伝わったとみられ、紀元前4世紀にはすでに記録がある。
ヨーロッパ各地への普及は、15世紀になってからイギリスで栽培されるようになり、フランスでは16世紀ごろから栽培が始められた。日本には弥生時代には伝わっており、奈良時代の歴史書『日本書紀』にも記され、仁徳天皇の歌に「於朋泥」(おほね)として登場するのが最も古い記録である。
平安時代中期の『和名類聚抄』巻17菜蔬部には、園菜類として於保禰(おほね)が挙げられている。
一般に食べられるようになったのは江戸時代からで、江戸時代前期にはいくつかの品種の成立と栽培法が確立しており、関東の江戸近郊である板橋、練馬、浦和、三浦半島辺りが特産地となり、その中で練馬大根は特に有名であった。
凶作時や冬場の保存食としても重要で、漬物や切り干しなどの加工法が地方ごとにさまざまに工夫されていった。
大根の特徴
野菜として栽培される越年草。
いわゆる大根とよばれる肥大部は茎と根からなり、品種によって地上に伸び上がるものと、ほとんど地中にあるものがある。
根出葉は束生し、倒披針形で羽状に深く裂ける羽状複葉で、頂小葉は大きく、ふつう粗い毛がある。
太い主根は主軸が肥大して食用となる。花期は春で、地上茎が約1メートル (m) ほど立った先に総状花序をつけ、アブラナ属と似た白色または淡紫色の十字状の花をややまばらに付ける。
果実は長さ4 – 6センチメートル (cm) で、多数のくびれがあり、くびれ毎に1個ずつ赤褐色の種子が中に入り、種子数はアブラナ属より少ない。茎は、葉の付け根の低い三角錐部分で、食用にされない。
また、一般的に根と呼ばれる食用部分のうち地上部分は、発生学的には根ではなく胚軸に由来する中間的な性質を持っている。
青首大根では特に目立ち、ジャガイモ同様、光に応じて葉緑体を発達させる茎の性質を示している。茎、胚軸、根の区別は道管の位置で区別できるが、ヒゲ根(二次根)でも見分けられる。
根の部分は両側一列ずつ二次根が発生し、店先のダイコンではその痕跡がくぼんだ点の列として観察できる。アブラナ属のカブ(蕪)では、丸く肥大する食用部分が胚軸で、根はヒゲ根となって食用にされない。
大根の種類
大根の種類
栽培種も変種 R. sativus var. longipinnatus として扱われるが、原種ははっきりしていない。
染色体はn=9で、アブラナ属の多くの野菜と同様自家不和合性を持ち、交雑しやすい。
変異を生じやすいアブラナ科に属する上、気温適応性の幅も広いため、品種が多い。
根茎の色も多様で、外皮も内部も白い種類をはじめ、外皮が緑色で内部が白色の種、外皮が赤色で内部が白色の種、外皮も内部も赤色の種、外皮が黒く内部が白色の種などがある。
その大きさも幅があり、重さ30kgを超える桜島大根のような種から、わずか10g程度のハツカダイコン(ラディッシュ)まである。遺伝的研究から、日本のダイコンはヨーロッパ系統、ネパール系統とは差が大きく、中国南方系統に近い事が確認されている。
日本の東北大学などは世界各地のダイコン500品種のゲノム情報を分析・公開した。
その研究によると、各品種は4つのグループに大別され、日本産は独自のグループを形成していることが判明した。
大根の日本の主な品種
色が白くクビが青い青首大根が日本で最も多く出ている品種であるが、日本各地には在来種が数多くあり、赤や赤紫の種や、その土地ならではの大根を使った漬物など名産品もある。
特に九州南部は独自性が強いとされている。桜島大根や三浦大根、練馬大根などは、サイズが不揃いで流通に不都合な面があったため、全国的に出回る量は少ない。日本の在来種は、1980年の文献には、全国で110品種が記録されているが、都市部の人口集中によって流通が発達したことに伴い、青首大根などの一部の品種が大半を占めるようになり、在来種の衰退が著しい。
しかし、練馬、三浦のような長根種から、桜島、聖護院のような丸大根、守口のような特に細長いものや、辛味の強い品種などの特徴がある地方品種が今も守られている。
大根の主な品種とそれぞれの特徴は、
野菜や果物、魚介類等の旬をはじめ、それぞれの特徴や食べ方、含まれている栄養成分等を沢山の写真と共に紹介しているサイト「旬の食材百科」を参考に学ぶ事ができます。
大根の調理方法(理論編)
では、実際にどのように調理すれば、大根を最も美味しく食べられる事ができるのかという事を考察していきたいと思います。
大根の最も美味しい食べ方といっても、最も美味しいという基準はとても曖昧です。
無限大ともいえる味付けや調理方法があり、そのどれもが違ってどれもが美味しいという中で、これが最適とひとつに絞るのは野暮な事と思います。
しかし、野菜の美味しさのひとつの基準の中で、「甘味」というものがあると思います。
このブログでも様々な野菜の甘味を最も引き出す調理方法というものを考察してきました。
という事で今回も甘味に絞って、大根の甘味を最も引き出す調理方法、「大根を甘くする最適な加熱方法と時間とは」という事を軸にして考察していきたいと思います。
甘い大根の選び方
大根の甘味を最も引き出す調理方法を考察するにあたって、調理を開始する前に、そもそもの大根の甘いものを選ぶという必要があると思います。
最も甘い大根の品種とは?
大根は先述したように様々な品種があります。
辛味大根は、甘い大根を選ぶにあたっては不向きな品種といえると思います。
その他の種類に関しては、それぞれの大根の糖分含有量を調べてみようと、品種別の成分分析のデータ等を探しましたがありませんでしたので、どの品種が一番甘いというのは分かりませんでした。
ただ、今の時代、辛味大根以外の大根は、そのどれもある程度甘いものだと思います。
最も甘い大根の時期とは?
先述した大根の主な品種とそれぞれの特徴を紹介しているサイト「旬の食材百科」には、大根の旬について書いてあります。
広く一般に出回っているもののほとんどは「宮重(みやしげ)」など「青首大根」と言われている種類のものになりますが、全国に古くから栽培されている地大根といわれるものが多数あります。
また、品種改良も進み、春に収穫される品種から夏、秋、冬と季節によって収穫される品種も変わり、一年を通してそれぞれの大根の旬によって四季を感じることができます。
ただ、概して春から夏のものは辛みが強く、秋から冬の寒い時期のものはみずみずしく甘味が増しています。
一般的に、煮物やサラダ、漬け物などに向いている甘味があるみずみずしい大根の本来の旬は晩秋から冬。
辛み大根は初夏から夏が旬となります。
大根が冬の方が甘い理由として、「カゴメ株式会社」さんのサイトの記事に説明があります。
冬野菜は、寒さで凍ることがないように、細胞に糖を蓄えます。
そのため、糖度が高い野菜が多く、甘みを感じるのです。
最も甘い大根の部位とは?
大根を料理するうえで、「大根は部位によって甘味が違う」等といった事を良く耳にします。
そして、この部位の味の違いに合わせたおすすめの料理方法等も良く知られています。
大根は1本が大きいので、使い切る事を考えて、これらの事が広まっていると考えられます。
大根の部位による味の違いは、「株式会社ニチレイフーズ」さんのサイトの記事に説明があります。
そして、大根の部位による味の違いについて研究されている論文もあります。
こちらの論文は、大根の、特に生で用いられる時の特有の辛味が、味覚に対して極めて重要な因子として捉え、その辛味成分を科学的に分析しています。
この論文で、大根の部位による辛味成分量の違いを研究されています。
短形宮重総太大根の根部を一定間隔に6等分し、それぞれの部位の磨砕搾汁液中のイソチオシアナート量を前記方法によって求め、その結果を示した。
これから明らかなように大根は先端部に近づくにつれて辛味成分量が多くなり、最先端部では頭部の約10倍も多かった。
大根の先端部は他の部位と比較すると、細胞分裂や伸長の最も盛んな部位であり、この部分に辛味成分がより多く含まれるということは、根部の生長と、これらの成分との間に何らかの関係があるのではないかということが考察される。
こちらの論文は、大根のうま味に関係すると考えられる遊離アミノ酸量と、大根のアミラーゼ活性が、大根の部位及び品種によってどのように異なるかを研究されています。
本学で栽培した大根の部位別、品種別の遊離アミノ酸量及びアミラーゼ活性を測定し、乾燥重量あたりで比較したところ、以下の結果を得た。
1、遊離アミノ酸のアスパラギン酸、セリン、グリシン、アラニン、イソロイシンの含有量は上部よりも下部の方が高かった。
2、打木源助大根の総遊離アミノ酸量が多く、特にグルタミン酸の含有割合が高かった。
3、大根のアミラーゼ活性率は、上部が高く、下部は低かった。また外側より内側の方が高かった。品種による大きな差はみられなかった。
4、植物抽出資材を散布して栽培すると、方領大根のアミラーゼ活性率が高く、打木源助大根のアミラーゼ活性率は低かった。
大根は上部ほど甘く、下部に行くほど辛くなるといわれるが、本実験でも実験に用いた大根の糖度を測定したところ、上部4.9%、中部4.1%、下部3.6%であった。
糖分と異なり遊離アミノ酸は直接の甘さより大根特有の風味や味に影響を与えていると考えられる。
特にグルタミン酸含有量が総遊離アミノ酸量の半分以上を占めているので、グルタミン酸の含有量の多少は大根の旨味に大きな影響を与えていると考えられる。
これらの、大根の部位による味の違いを考慮して大根を料理すると、また一味違った大根料理ができそうです。
大根を甘くする最適な加熱温度と時間とは?
野菜を甘くする最適な加熱温度と時間を考察するうえで、考慮すべきポイントがあります。
以前このブログで取り上げた薩摩芋と玉蜀黍は、その甘味が形成される仕組みが違いました。
薩摩芋は、根(塊根)の部分に、主に蔗糖と麦芽糖、その他に果糖や葡萄糖が含まれているが、未加熱では麦芽糖は殆ど含まれていない為、加熱によって糊化したデンプンにβ-アミラーゼが作用する事により麦芽糖が生成されるので甘い。
なので、いかにデンプンを糊化させ、β-アミラーゼが作用するように加熱するかがポイント。
玉蜀黍は、実(穎果(えいか))の部分に、主に蔗糖、その他に果糖や葡萄糖や麦芽糖が貯まっているので甘い。
なので、既にある甘味をいかに逃さないように加熱するかがポイント。
大根はどちらかというと薩摩芋と考慮すべきポイントは同じだと思います。
しかし、大根の成分を調べてみると、
大根(根茎部)は、約95%が水分で、炭水化物が少量含まれるだけで、タンパク質も脂質もわずかで、熱量は100グラムあたり18キロカロリー (kcal) と極めて少ない。
ごく少量の炭水化物には、ブドウ糖、蔗糖、果糖などの甘味成分が含まれている。ビタミン・ミネラル類は、脂溶性ビタミン(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK)を除けば、全体的にバランスよく含んでいる。特にクビに近いところでは、ビタミンCや食物繊維が豊富である。
根茎には消化酵素であるアミラーゼ(別名:ジアスターゼ)、タンパク質を分解するプロアテーゼを多く含む。
とあり、
そもそも甘味に関係する炭水化物の含有量が少ない為、加熱により甘くなる効果は少ないと思われます。
ただ、この少量含まれる炭水化物をなるべく糖に変えるという、細かいこだわりをする事で、一味違った大根ができると思います。
そして、実際の加熱温度として、薩摩芋を甘くする最適な加熱温度と時間の考慮すべきポイントは、
薩摩芋を甘くする最適な加熱温度と時間の考慮すべきポイント
・デンプンが糊化する温度 70~75℃
・β-アミラーゼの至適温度 80℃以下
・ペクチンが硬化しない温度 80℃以上
(※数字は目安でさつまいもの品種、産地による)
でした。
この薩摩芋を甘くする最適な加熱温度と時間の考慮すべきポイントの温度が、そのまま大根にも当てはまるのかというと、大根のデンプンが糊化する温度、大根のアミラーゼの至適温度、大根のペクチンが硬化しない温度を表すデータ等がありませんでしたので、分かりませんが、一応の目安にしたいと思います。
さらに、大根の最適な加熱温度と時間について研究されている論文もありますので、こちらを参考にさせて頂きます。
こちらの論文は、大根の加熱および保存過程が煮汁に含まれるコラーゲン、グリセリド、塩化ナトリウムの浸透と硬さに及ぼす影響について研究しています。
加熱過程および保存過程における煮汁に含まれるコラーゲン、グリセリド塩化ナトリウムの大根への浸透と大根の硬さについて検討した。
その結果、加熱過程では大根の重量が減少すること、グリセリドおよびコラーゲンは大根内部へほとんど浸透しない一方、塩化ナトリウムは速やかに浸透することが示された。
グリセリド、コラーゲン、塩化ナトリウムのいずれも大根表面部と内部の量は有意に異なっていた。
また、加熱温度が高く、加熱時間が長い場合は内部よりも表面部が硬いことも示された。
保存過程では、温蔵(65℃)、冷蔵(5℃)保存のいずれでも大根の重量が増加すること、大根表面部と内部の塩化ナトリウム量の濃度差が認められなくなる一方、グリセリドおよびコラーゲン量には差が認められること、大根表面にはコラーゲンが温蔵保存で浸透し、グリセリドが冷蔵保存で表面に付着することが推察された。
これらのことから、保存過程が煮物のおいしさに影響することが推察された。
こちらの論文のデータも考慮して、実際に大根の加熱温度と時間を考察していきたいと思います。
大根を甘くする最適な加熱温度と時間の考察
大根を甘くする加熱として、
「大根に含まれるアミラーゼの至適温度かつ、ペクチンが硬化しない温度かつ、デンプンが糊化する温度で加熱し、大根に少量含まれるデンプンを糊化させ、糊化したデンプンにアミラーゼを作用させて糖を生成させる。」
という狙いで加熱します。
大根に含まれるアミラーゼの至適温度かつ、ペクチンが硬化しない温度かつ、デンプンが糊化する温度というのが、薩摩芋を目安にすると80℃です。
しかし、80℃の加熱では、先述の論文のデータによると、やはり90℃や100℃の加熱よりは大根は硬いです。
ただ、実際どれほど硬いのかは分かりませんので、一度80℃、90℃、100℃で加熱し比べてみたいと思います。
大根を4㎝幅に切り、皮を剥き、80℃、90℃、100℃で60分程、BONIQ(ボニーク)を使い、フイルム袋に入れ湯煎し加熱しました。
茹でるのでなくフィルム袋に入れ湯煎したのは、大根の味を逃がさないようにする為です。
茹でるのではどうしても野菜の味がその茹で汁に逃げるように思われます。
大根の加熱温度を比較した感想
80℃の加熱では、まず30分加熱しましたが、硬さが残る感じがしましたので、追加で30分加熱したところ、歯応えがある硬さでしたが、中まで火は入っている感じでした。
甘味も感じられ、大根そのものの味を感じやすい火入れだと思いました。
90℃の加熱では、まず30分加熱しましたが、若干硬さが残る感じがしましたので、追加で30分加熱したところ、ほど良い歯応えを残しつつ、とろけるような食感もあり、中まで火が入っている感じでした。
甘味も感じられ、大根そのものの味と煮汁の味を感じやすい火入れだと思いました。
100℃の加熱では、まず30分加熱しましたが、若干硬さが残る感じがしましたので、追加で30分加熱したところ、歯応えはあまり感じず、まさにとろけるような食感があり、中までしっかり火が入っている感じでした。
甘味は80℃や90℃の加熱と比べると若干薄く感じられ、大根そのものの味というよりは煮汁の味を感じやすい火入れだと思いました。
大根を甘くするという1点だけでみる、最適な加熱温度と時間と考えると、80℃で1時間となるかもしれませんが、硬さというものも考慮すると、90℃で1時間が一番バランスが良いと感じました。
しかし、80℃で1時間も嫌な硬さという程まではいかないので、これはこれでこの硬さを活かした大根料理に合うと思いました。
100℃で1時間も悪いわけではなく、とろけるような食感で、大根に染み込んだ出汁を前面に味わう料理に合うと思いました。
大根の調理方法(理論編)のまとめ
甘い大根の選び方
・甘味に特徴がある品種を選ぶ。
・冬に収穫されたものを選ぶ。
・葉に近い上部を使う。
大根を甘くする最適な加熱温度と時間
・大根に含まれるアミラーゼの至適温度かつ、ペクチンが硬化しない温度かつ、デンプンが糊化する温度、80℃~90℃で、丁度良い硬さになるまで加熱し、大根に少量含まれるデンプンを糊化させ、糊化したデンプンにアミラーゼを作用させて糖を生成させる。
※ただし、大根に含まれるデンプンが少量の為、甘くなる効果は小さい。
さらに、このように大根を調理するという事は、現実的に煮るという調理方法になると思いますので、以前このブログで取り上げた「煮物に味が染み込む最適な方法」も考慮します。
煮物に味が染み込む最適な方法
・食材を丁度良い硬さになるまで、食材の細胞膜の機能が低下するまで、煮汁の中で加熱する。
食材が丁度良い硬さになったら、加熱を止め、食材を煮汁に漬けたまま、なるべく高い温度を保ちながらゆっくり冷ます。
このように、理論上の大根を甘くする最適な調理方法がまとまりましたので、次に実践していきます。
もっとがんばれ!おでんくん
大根の調理方法(実践編)
理論上の大根を甘くする最適な調理方法を実践するにあたって、大根そのものを味わえる、風呂吹き大根を作りたいと思います。
大根を準備する
今回用意したのは、愛知県産の青首大根です。
正確な品種名までは分かりませんでした。
甘味が強く辛味が弱い、葉に近い上部の部位を使います。
今回は4㎝幅にカットしました。
食材を調理する前に殺菌します。
沸騰したお湯に、加熱目的ではないので、サッと通して殺菌します。
出汁を引く
大根を煮る出汁を引きます。
出汁の引き方は、以前このブログで考察した出汁の引き方で作ります。
大根を加熱する
大根を出汁と共に90℃で1時間加熱します。
煮物として程良い硬さで、甘味も感じられる90℃の加熱を選びました。
出汁は薄口醤油と味醂で味付けしました。
大根の味わいを感じられるように淡い味付けです。
大根は出汁と共にフィルム袋に入れ、空気を抜きます。
ポットにお湯を張り、BONIQを90℃で1時間に設定し、フィルム袋に入れ、湯煎します。
大根を温蔵する
90℃で1時間の加熱後、そのまま60℃で4時間温蔵します。
なるべく高い温度を保ちつつ温蔵する事で、出汁を食材により拡散させる事を狙います。
大根を冷蔵する
大根と出汁の入ったフィルム袋を取り出し、約3℃~5℃の冷蔵庫で12時間冷蔵します。
仕上げ
約3℃~5℃の冷蔵庫で12時間の冷蔵後の大根です。
中までしっかり出汁が染み込んでいます。
温めて、器に盛り、出汁を張り、八丁味噌だれを掛けて完成です。
美味しそぉ~!
実食
いただきます!
まず、大根の出汁の染み込んだ綺麗な色が目に入ります。
特に面取りをしなくても、フィルム袋に入れ湯煎するという加熱方法なので、煮崩れせずに形も保っています。
箸で一口大に取り、口に入れ歯を入れると、程良い歯応えととろけるような食感を感じられます。
噛むと同時に大根に染み込んだ出汁がジュワッと溢れ、口の中一杯に広がります。
甘味がある大根そのものの味も感じられ、大根に染み込んだ出汁のうま味も感じられます。
風呂吹き大根という素朴な料理ですが、大根の美味しさを十分に感じられる料理でした。
ごちそうさまでした!
まとめ
今回は大根と向き合い、大根の美味しさを最も引き出す調理方法というものを考え、大根の美味しさのひとつである甘味に注目し、甘い大根の選び方から、大根を甘くする最適な加熱温度と時間というものを考察しました。
野菜として、薩摩芋や玉蜀黍は、その野菜の美味しさのひとつである甘味が特に特徴的で、その甘味を引き出すという調理方法は考察すべき課題だし、その成果も大きかったと実感しています。
しかし大根は、その野菜の美味しさのひとつである甘味は特に特徴的でもないので、その甘味を引き出すという調理方法は、その成果も小さいものなのかもしれません。
確かに今回考察した調理方法で、実際に作った風呂吹き大根の美味しさというのは、正直飛び抜けて美味しいというものではなかったようにも思います。
だからといって、今回のこの考察は意味がなかったとは思いません。
導き出した調理方法では、実際の美味しさにヒトが感じる程の違いが現れないかもしれません。
ですが、その伝わらないかもしれない、そんな些細な所まで突き詰めるという想いは、これからも持ち続けたいと思います。
このブログでは、様々な食材の最適な調理方法、最適な加熱方法と時間というものにせまってきました。
しかし、色々な食材と向き合い、色々な調理方法と向き合うにつれて、「最適」という言葉で、ひとつの方法に縛ってしまうというのもいかがなものかという想いもでてきました。
「最適」という言葉で締めてしまうと、自分も満足してしまって、そこから動くのが億劫になっているように思いました。
そして、必ずしも「最適」でなくてもいいのではないかという想いもでてきました。
「最適」なものでなくても、その欠点が、そのデメリットが、そのもののひとつの特徴として現れれば、それはそのもののひとつの表現としてはありなのではないのかと思いました。
ただ、これがこの物の最適だと言うのと、これがこの物のまあ良い方の物だと言うのでは、その物の良さの伝え方としては弱いと思います。
この伝え方というのは、もう少し考えなければいけないなと思いました。
これからも、色々な可能性を見落とさないように、視野を広げて考えていきたいと思いました。
頑固になるなっ!
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