4月に入り、桜も咲き、季節は春になりました。
料理で言うと、冬の食材も旬の終わりを告げ、春の食材の旬を迎えます。
春の食材というと、春野菜も思い浮かびます。
春野菜はその旬の短さや、ほろ苦い味から、どことなく儚さを感じてしまうものです。
その儚さ、哀愁を大切にする為にも、丁寧に料理していきたいものです。
そんな春野菜のひとつとして筍があります。
筍は、その成長の早さや、生命力の強さから、「出世しますように」や、「すくすく成長しますように」との願いを込められる、縁起物の食材として親しまれています。
筍は、採りたての物ならばアクは無く、まさに玉蜀黍のような甘味を備えた味と香りを楽しめるようです。
しかし、現実的にスーパー等に並べられている筍は採ってから時間が経っており、アク抜きが必要となってきます。
このアク抜きという作業。一般的には、筍のアク抜きは、「米糠と鷹の爪と一緒に煮る」という方法が知られています。
はたして、これにはどのような作用が働いているのでしょうか。
筍のアク抜きを、科学的に論理的に向き合う事で、もっと最適なアク抜き方法が導き出せるのではないでしょうか。
筍のアクと正しく向き合う事で、筍の素材自体の美味しさをもっと引き出せるのではないでしょうか。
という事で、今回は筍とアクについて研究していきたいと思います。
たけのこ♪たけのこ♪ニョッキッキ♪
筍の基礎知識
まずは、筍そのものの基礎知識を学んでいきます。
Wikipediaや、野菜や果物、魚介類などの「旬」をはじめ、それぞれの特徴や食べ方、含まれている栄養成分などを沢山の写真と共に紹介しているサイト、「旬の食材百科」を参考にさせて頂き学んでいきます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/タケノコ
筍
タケノコ(竹の子、筍、笋、英名:bamboo shoot)は、イネ科タケ亜科タケ類(一部はダイミョウチクやチシマザサなどのササ類を含む)の若芽。
広義には、竹の皮(稈鞘)が稈に付着していて離脱するまでのものであれば地上に現れてから時間が経過して大きく伸びていてもタケノコといえるが、一般には食用とする地上に稈が出現する前後のもののみを指す。
その名前「筍」の由来は一旬(10日間ほど)であの「竹」までに生長してしまうから。
筍の種類
一般に食用にするのは地上に稈(かん)が出現する前後のものです。
ただし、先述のように広義には竹の皮(稈鞘)が稈に付着していて離脱するまでのものはタケノコであり、特にタケが大きく伸びた後でも先端部のみが竹の皮に覆われている場合にはその先端部のみを「穂先タケノコ」と称して食用とする種もあります。
竹の種類は70種類程あると言われていますが、食用とされている物は、日本で最も代表的な孟宗竹を始め数種類です。
孟宗竹
【概要】モウソウチク(孟宗竹)はアジアの温暖湿潤地域分布する竹の一種である。種名は冬に母のために寒中筍を掘り採った三国時代の呉の人物、孟宗にちなむ。別名江南竹、ワセ竹、モウソウダケ。
【利用】タケノコは4月頃に地下茎から発芽する。このタケノコは大型で肉厚で柔らかく、えぐみが少ないため食用に供される。 稈(かん)は物理性が劣るので繊細な細工物の素材としてはマダケに劣るが、花器、笊、籠、簾、箸の他、鉄製品やプラスチック製品が普及するまでは建築材料、農業資材、漁業資材などとしても用いられてきた。
【生態】収穫時期は地方によってかなり差が出る。鹿児島など早い地方では11月頃から収穫が始まるところもあり、九州や四国の「早堀たけのこ」と呼ばれるものはおおむね12月中旬からが本格的に出荷が始まる。京都あたりでは2月中旬頃から始まる。
日本のタケ類の中で最大で、高さ25mに達するものもある。葉の長さは4~8cmで、竹の大きさの割には小さい。枝先に8枚ほどまで付き、裏面基部にはわずかに毛がある。春に黄葉して新しい葉に入れ替わる。竹の幹は生長を終えると、木と同様に太くなっていくことがない代わりに、枝が毎年枝分かれしながら先へ伸びる。木での年輪の代わりにこの節数を数えるとその竹の年齢を判定できる。年を経ると稈の枝分かれ数が多くなり、葉が増えた結果、稈の頭が下がる。67年に1度花が咲くとされるが、このことを証明する記録はわずか2回しか記されていない。
【歴史】中国江南地方原産で日本では栽培により北海道函館以南に広く分布する。801年(延暦20年)、京都府長岡京市の海印寺、寂照院の開山・道雄上人が唐から持ち帰った、また1228年(安貞2年)に曹洞宗の開祖・道元禅師が宋から持ち帰った、など諸説あるが全国へ広まったのは薩摩藩による琉球王国経由の移入によってと考えられている。「南聘紀考 下」によると元文元年3月に島津吉貴が、琉球在番として琉球行きを命じられた物頭野村勘兵衛良昌に孟宗竹を輸入するように命じ、勘兵衛は琉球滞在中に清より輸入し、元文3年に帰国すると吉貴のいる仙厳園に孟宗竹を献上したという。植栽された竹林は、戦後の里山管理の衰退に伴い、放置されていたり逸出していたりして、生育域は拡大する傾向にある。
淡竹
【概要】ハチク(淡竹)は中国原産の竹の一種。黄河流域以南に広く分布し、日本ではモウソウチク、マダケに次いで各地でよく植栽されている。北海道南部以南に分布し、モウソウチクよりも耐寒性を有するために特に日本海側に多い。川岸や山地では野生化しているものもある。別名アワダケ、呉竹(くれたけ)。
【生態】ハチクのタケノコは食用で径が約3~10cmで、最盛期は5月中旬から6月上旬ごろ。主に孟宗竹のピークが過ぎたころに出回り始める。皮は紫色でまばらに毛があり、掘り出したばかりの筍はクセが無く生食も可能だが、時間の経過につれえぐみが増すためあく抜きが必要となる。 筍はマダケと比べるとやや太くずんぐりとしている。また出始めの時期がやや早いこと、マダケでは皮にある黒い斑点がない事や色の違いで見分けがつく。
開花周期は、マダケなどと同様に約120年とされており、開花後は一斉に枯死することが知られている
直径は3~10cm、高さは10~15m程だが高いものは20mになるものもある。節の輪は2個で節間は20~40cm。若い桿には白い粉があり、各節から枝が2本出る特徴を有する。
【歴史、利用】750年(勝宝3年)頃には日本にあったことが知られているが、起源は不明である。 細く割れるため茶筅などの茶道用具、花器に利用されるほか、枝が細かく分枝するため竹箒として利用される。正倉院の呉竹笙、呉竹竿、彫刻尺八、天平宝物の筆などはハチク製と鑑定されている。 また、内側の薄皮は竹紙と呼ばれ、笛の響孔に張り音の響きを良くするほか、漢方薬としても使用される。
真竹
【概要】マダケ(真竹、Phyllostachys bambusoides)は中国原産とも日本自生とも言われる竹の一種。別名タケ、ニガタケ(苦竹)、真柄竹など。
【生態】収穫期は5月から6月上旬とされる。別名を苦竹というように、収穫後時間を経過したタケノコはエグみがあり、あく抜きが必要だが美味とされる。掘りたてのものにはエグみがほとんど存在せず、そのままさしみにして食しても美味しい。収穫の際は、モウソウチクのように地下部まで掘り取る必要はなく、地上部を切り取るだけで済む。
開花時期は初夏だが開花は稀。120年周期で咲く説が濃厚とされる。太く長い地下茎を地面に張り巡らし、地中からタケノコを生やす。日本では1960-1970年頃に開花が確認されており、もし120年説が正しければ、次の開花が見られるのは2090年頃。花が咲いた後に実を付け、その後全ての竹が一斉に枯れる。群落ごとに開花する時期が違うモウソウチクとは違い、日本マダケのほとんどは遺伝的に均一らしく、日本全国のマダケが一斉に花を咲かせ、一斉に実を付け、一斉に枯れる。日本へは古くから持ち込まれ栽培されていたと見る一方で、日本にもともと自生していた品種であると捉える向きもある。このように考えられる根拠としては、例えば、第三紀中新世以降に日本や朝鮮半島から化石が見つかっているので、もとは日本列島に自生していたのかも知れないと推測できるからである。稈の高さは条件が良ければ10m〜20mにも成長し太さは10cmに達する、2本の隆起線がある節を持ち、節からは枝が2本伸びる。また竹林は地下茎が地面を広く覆うので地震、崖崩れに非常に強い。1日に1m伸びるともいわれる。稈鞘は大きく濃い黒色の斑点があり無毛。葉は10〜12cm、幅2〜2.5cm程になる
【利用】日本ではマダケは昔から歌に詠まれ、稈は肉が厚く弾力性があり、曲げや圧力に対する抵抗性が強いことから、弓、定規、笊、籠、扇子、茶道具などの細工物・工芸品などに最も多く利用され、また昔は釣り竿や竹槍の材料とされたが、通常は食用にしない。マダケの稈鞘(タケノカワ)は無毛で柔軟性に富む等の性質から食品包装として利用される。エジソンの白熱電球の材料ともなった。
竹細工の素材として最も多く用いられているマダケは、伐採したままの青竹、火であぶったり(乾式)、苛性ソーダで煮沸したり(湿式)して油抜きをした晒し竹、ある程度炭化させた炭化竹、伐採後数ヶ月から数年間自然に枯らしたもの、家屋の屋根裏で数十年間囲炉裏や竈の煙で燻された煤竹と、種々の素材が流通する。これらは弾力性、硬さ、耐久性などが異なり、利用目的によって使い分けられる。青竹は容易に入手できるが、耐久性に問題があり、晒し竹や炭化竹に加工する事でその問題点は改善する。煤竹は独特の色(煤竹色)をしており、硬く、耐久性に富むが、入手は困難である。大分県のマダケは面積、生産量とも全国一のシェアを占めており、別府市周辺の別府竹細工や日田市の竹箸など、大分県では豊富な竹材を利用した竹工芸が歴史的に盛んであり、加工された素材も入手し易い。
根曲がり竹(千島笹)
【概要】チシマザサ(千島笹、学名:Sasa kurilensis)は、イネ科タケ亜科ササ属に分類される、大型のササの一種。稈の基部が弓状に曲がっていることからネマガリダケ(根曲竹、根曲がり竹)の別名があるほか、コウライザサ(高麗笹)、アサヒザサなどとも呼ばれる。
【利用】チシマザサのタケノコは5- 6月に収穫でき、伝統的には筍といえば初夏の食べ物であった。本種の筍は山菜として特に人気がある。灰汁が少ないので、皮を剥いて灰汁抜きせずに味噌汁や煮物にしたり、皮付きのまま焼いたあと皮を剥いて食べたりする。
稈は農作物の支柱や竹細工に利用される。
長野県北信地方と新潟県上越地方の山間部では、根曲竹(長野県側の呼称)または筍(新潟県側の呼称、姫竹とも)と呼ばれるチシマザサの新芽が採れる時期(=5月から6月にかけて)に、鯖の水煮の缶詰と一緒に味噌汁にして食べる習慣がある。作り方や材料は各家庭によって違うが、基本は沸騰した鍋の中に、チシマザサと、缶詰から取り出した鯖を入れ、しばらくしてから地元特産の信州味噌あるいは越後味噌を入れ、ひと煮立ちさせて完成する。この味噌汁は、当該地域では春の特産として風物詩として親しまれている。
また産地の一つ青森県津軽地方の山間部で採取されるものは筍と呼ばれ、当該地域では身欠にしんとワカメのみをともにした素朴な味噌汁として同様に親しまれている。
シャープのラジカセでスピーカーに採用されていた「ホロファイン振動板」には、チシマザサの幼稈パルプが用いられていた。
【生態】ササの仲間では最も北部に分布し、主な分布域は、朝鮮半島、日本列島(四国愛媛県、本州鳥取県以北の日本海側、および、東北地方、北海道)、千島列島南部、樺太(サハリン島)。
山地に群生し、笹としては大型の高さ1.5- 3メトール、稈の上部でのみ枝分かれする。花は穂状で、約60年に一度とめったに咲かないが、咲くときは群落全体が咲き、結実後、枯死する。
日本では、モウソウチクが全国規模で普及する時代以前、すなわち、薩摩藩支配下にあった琉球王国経由でモウソウチクが移入されるより前の時代には、チシマザサは日本を代表する竹・笹類の一つであった。
四方竹
【概要】シホウチク(四方竹、Chimonobambusa quadrangularis)は中国原産の多年生常緑竹。四角形の稈が特徴的な植物で、和風庭園や建物周り、生垣に利用される。別名シカクダケ、イボダケ。
【生態、利用】収穫するとすぐにアクが出始める事や、皮を剥くと紫色に変色するなど良い状態での輸送が出来ない事からこれまで産地での消費しかされてこなかった。それが近年、高知県南国市の筒井和美氏により色よく緑色の状態で茹であげる「筒井式ボイル法」が発見され、水煮の状態で全国への発送も行われるようになってきた。
四方竹は寒冷地には適さないようで、東北以南の各地で栽培することが出来るとされる。主な産地は高知県が有名で、高知市や南国市の中山間地域を中心に、毎年約90トンが栽培出荷されている。
収穫時期は地域によっても差があるようだが、早い所では9月下旬頃から始まり、11月上旬頃までとなる。旬の時期は10月の上旬から中旬にかけての短い期間となる。
一般のタケ類が円柱形の茎をもっているのに、このタケだけは鈍四稜形の茎を有する。 高さ2~7mで竹稈下部の節のすぐ上には触ると痛いいぼ状の突起(気根)があり、伸びると根となる。葉が細く下に垂れる。タケノコは秋から冬に生えてくるので、日本においては枝を出さずに越年し、春暖くなったときに枝を広げる。鉢植えでも栽培でき、移植が容易。寒さにやや弱く、東北地方以北での植え付けには適さない。
寒竹
【概要】カンチク(寒竹)は日本原産の竹の一種だが本来の自生地は不明である。種名の由来は晩秋から冬にかけてタケノコが出ることからであり、耐寒性がある訳ではない。
【生態、利用】稈は黄色または黒紫色で、普通2mほどであるが、時には5-6mになる。葉にはまれに白条がある。径数mmの細い竹だがその色は紫黒色で光沢があるので美しく、飾り窓や家具などに使われ、庭などに植えられて観賞されている。
葉は薄く小さい。また、タケノコの皮も薄い。寒冷地を除き日本に広く分布する。古くは孟宗が母のために冬の雪中にタケノコを掘った故事になぞらえて孟宗竹と呼ばれていたが、現在モウソウチクは別の中国原産の竹を指す。
タケノコはすこぶる美味で、その味を知る人からは秘かに好まれる。
なお、チャールズ・チャップリンが映画の中で使用したステッキは寒竹製で日本の職人が作ったものである
緑竹
【概要】リョクチク(緑竹)。孟宗竹や真竹、淡竹などイケ科マダケ属だが、緑竹はホウライチク属に分類されるバンブー類の一種で、地下茎を伸ばさず株状に繁茂する。
【生態、利用】緑竹は台湾が原産と言われる南国のタケノコで、台湾ではよく知られている食材だが、日本ではまだ馴染みが薄く、流通量もごくわずかしかない。
緑竹のタケノコは孟宗竹ほど大きくはならず、形も付け根が幅広なのに対し、一気に穂先に向けて細くなる。
断面を見ると、孟宗竹のタケノコに比べ節の数が少なく空洞部分が小さいので、根本の塊状の部分がたっぷりとあり、筍の大きさの割には歩留まりはそれほど悪くない。
一般的なタケノコに比べアクが少なく、生でもおいしく食べられること、そして夏が旬であるということが大きな特徴。
香りは孟宗竹に比べ弱く、スイートコーンのような柔らかい香りがする。
国内では鹿児島県や宮崎県、熊本県の天草地方で栽培出荷されている。鹿児島本土では昭和60年代ごろに台湾出身者により栽培が始められたのが始まりと言われ、宮崎県や熊本県での栽培は平成14か15年頃からとまだ歴史は浅い。
緑竹は一般的なタケノコが生る竹類のように竹藪を成さず、畑に株を植え付けて栽培する。
緑竹の収穫時期は栽培地の気候風土などによって多少のずれはあるが、鹿児島や熊本では7月初旬ごろから9月末頃まで。最盛期の旬は7月下旬から9月上旬ごろにかけてとなる。
麻竹
【概要】マチク (麻竹、Dendrocalamus latiflorus Munro)。メンマ(麺麻)の原材料。メンマはマチクのタケノコを乳酸発酵させ、またそれを味付けした製品。
【生態、利用】竹には温帯性タケ類(単軸型)、亜熱帯性タケ類(準連軸型)、熱帯性タケ類(連軸型)があり、マチクは中国南部や台湾など亜熱帯性地方に産するタケ類である。収穫時期のマチクは鎌で切り取れるくらいの柔らかさで、日本などに産するタケ類とは質感が違う(なお、マチク(麻竹)は温帯性タケ類のマダケ(真竹)とは別の種である)。中国南部や台湾では収穫したマチクを蒸してから、さらに塩漬けにして密閉させた状態で発酵させた後、細かく裂いて天日乾燥したものが「筍乾」として食用にされている。また、これらに味付けしてそのまま食べられるように調理した物などが流通している。
筍の品種によりアクの多い少ないがあるようです。
今回は、その中でも日本で最も代表的な筍である孟宗竹と向き合いたいと思います。
アクの基礎知識
筍そのものの基礎知識を学びましたので、次にアクそのものの基礎知識を学びたいと思います。
Wikipediaや、「アク、特に竹の子のアクについて」と纏めれているネット記事を参考にさせて頂き学んでいきます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/灰汁
http://www.uranus.dti.ne.jp/~hyamada/favorite%20study/aku1.htm
灰汁
灰汁(あく)とは、原義では草木灰(藁灰や木灰)を水に浸して上澄みをすくった液のこと。この灰汁を使って食品自体がもつ強くてクセのある味を処理したことから、そのような嫌な味やクセそのものも「あく」と呼ぶようになった。
食品のアク(英語:scum、ドイツ語:Abschaum)は食物に含まれる旨味成分の総称である。アクの成分には無機質のものと有機物のものとがあり、このうち無機質のものとしてはカリウム、マグネシウム、カルシウムなどがある。また有機物のものとしてはシュウ酸、ポリフェノール、配糖体、サポニンなどがある。
同じ「アク」という言葉を使っても、植物性食品と食肉や魚介類といった動物性食品のアクは別物で、アクとみなされる成分も食品により様々である。野菜や山菜のアクは、人間の味覚にとって不快だったり、健康に有害だったりする成分である。鍋料理などで問題にされる動物性食品のアクは、血液などに含まれる蛋白質が加熱により固まり、煮汁の表面に茶色や灰色の泡となって浮き出たものである。澄んだ味にするため極力取り除く場合と、コクや複雑な味わいを楽しむため残す場合があり、個人の好みや料理の種類、文化により異なる。
アクを全部取り去ってしまうと風味が損なってしまう場合もある。野菜や山菜のアクも適度な量でありさえすれば食材の個性的な味覚の一部と判断されており、除去しすぎると特有の風味を失うことになり、アク抜きの適度な加減が必要となる。しかし、アルカロイドが問題となる場合や栄養素の吸収を阻害する成分である場合などには十分にアク抜きをすべきということになる。例えば、ホウレンソウなどに含まれているシュウ酸は、苦み、えぐみをもたらす。唾液中のカルシウムイオンと結合しシュウ酸カルシウムとなり、口の粘膜を刺激する。更にカルシウムの吸収を阻害し、さらにシュウ酸カルシウムが体内に蓄積して結石の原因となる。食用油で炒めると油の膜でえぐ味は感じられなくなり、茹でると茹で汁にシュウ酸が溶け出して大部分が除去できる。近年は品種改良により、シュウ酸が少なく生食可能なホウレンソウも栽培されている。
ワラビなどの山菜に含まれるチアミナーゼは味をそこなうだけでなく、ビタミンB1を分解する作用があるため、多く摂取すると脚気を引き起こす。山菜にはアルカロイド類が含まれ、アク抜きせず食べ過ぎると吐き気を催す。また、植物にとっては重要な栄養物質であるが、人間のような動物には代謝できない亜硝酸塩は体内で発ガン性物質に変化するという研究結果もある。一方、大豆などに含まれるサポニン類は発ガンを抑制する効果があるという報告もあり、全てのアク成分が体に良くないというわけではない。ゴボウなどの不味成分といわれるタンニンに代表されるポリフェノール類(ゴボウを水にさらすと水が赤茶色に変色するのはタンニンの流失による。)も、近年は抗酸化作用が注目されている。
アクの種類
同じ「アク」という言葉を使っても、植物性食品と食肉や魚介類といった動物性食品のアクは別物で、アクとみなされる成分も食品により様々です。
植物性食品のアク
植物性の食材である生物としての植物は多くの場合、草食動物の摂食を防ぐための防御物質として刺激性の物質や、栄養素の消化吸収を阻害する物質、摂食した動物の生理状態を変化させる生理活性物質などを持っていることが多い。こうした物質は人間の味覚や健康にとって好ましいと判断されれば香辛料やハーブ、生薬として却って積極的な利用の対象となるが、食材の味覚を妨げると判断されればアクとして調理時に除去の対象となる。
動物性食品のアク
肉や魚介類を煮た時のアクは、煮汁に溶け出した水溶性のタンパク質が熱変性によって凝固した、アミノ酸や脂質を含む泡状の浮遊物である。旨味成分や栄養学上有用な栄養素を含むが、料理の風味上強すぎると不快に感じる成分や、癖のある味・臭いを持つ様々な成分をも吸着しているため、見た目や臭い、舌触りがよくないなどの理由で取り除かれることが多い。 一般に和食の出汁やフランス料理などのスープを作る場合には、雑味や濁りを嫌ってアクは除去される。
しかしこうした食材の癖の強さは、料理の方法によっては却って食材の個性を強調する要素として良好な味覚をもたらす場合もあり、イタリア料理の一部などでは肉のアクをあえてソースに加えることもある。
アクの成分
アクとは食品に含まれる、渋み・苦み・不快な臭いなどの元となる、食事には不要な成分の総称で、有害のものとは限らず、明確な定義はありません。
ここでは植物性食品のアクの成分について学んでいきます。
蓚酸
青菜類や蕗、蕨、独活、薇等の山菜類に含まれる有機酸の一種。植物中ではグリコール酸がグリオキシル酸を経てシュウ酸に変化するとされている。特に法蓮草に多い。水溶性。
命名の由来にもなったように、植物に多く含まれる。漢字の「蓚」はタデ科のスイバを意味し、また中国語でも植物由来の「草酸」の名を持つ。タデ科(他にギシギシ、イタドリなど)、カタバミ科、アカザ科(アカザ、ホウレンソウなど)の植物には水溶性シュウ酸塩(シュウ酸水素ナトリウムなど)が、サトイモ科(サトイモ、ザゼンソウ、マムシグサなど)には不溶性シュウ酸塩(シュウ酸カルシウムなど)が含まれる。とろろが肌に付くと痒みを生じるのは、シュウ酸カルシウムの針状結晶が肌に刺さって刺激を受ける為である。
カルシウムイオンと強く結合する性質(劇性)があり、体内に入るとアシドーシスに傾いた血液中でカルシウムと結合して結石などを生じる。このため毒物及び劇物取締法により劇物(毒物ではない)に指定されている。
硝酸
青菜類に含まれる無機酸塩類の一種。肥料に多く含まれ、特に現代の肥料を多く与える農法では作物中の硝酸・窒素濃度が高い。これが体内で亜硝酸塩に変化すると発癌性物質のニトロソアミンが作られたり、血中のヘモグロビンと結合して酸欠状態を起こすことがある。水に溶けやすいため、青菜類は茹でて食べるのが安全。旬の時期に採れた露地ものでは比較的少なく、生食用に含有量を少なく抑えているものもある。
ポリフェノール
ポリフェノール(polyphenol)は、たくさんの(ポリ)フェノールという意味で、分子内に複数のフェノール性ヒドロキシ基を持つ植物成分の総称。
ほとんどの植物に含有され、その数は5,000種以上に及ぶ。光合成によってできる植物の色素や苦味の成分であり、植物細胞の生成、活性化などを助ける働きを持つ。
代表的なポリフェノール
・カテキン。ワイン、茶、林檎、ブルーベリーに多く含まれる。殺菌作用、血中コレステロールの低下、高血圧の予防といった効果がある。
・アントシアニン。ブドウの実皮、紫芋、ブルーベリー、等の赤紫色をした植物体に多く含まれている色素成分。肝機能の向上、疲れ目の解消といった効果がある。
・プロアントシアニジン。アカシア樹皮抽出物、ブドウ種子抽出物、松樹皮抽出物、ワインに含まれる。
・タンニン。茶、赤ワイン、柿、バナナに含まれる渋味成分。殺菌効果がある。
・ルチン。蕎麦に含まれる。
・イソフラボン。大豆、葛に含まれる。女性ホルモンと同様の働きをする為、アンチエイジング等の視点から着目されている。
・クロロゲン酸。コーヒーに多く含まれる。消化器、代謝性疾患を改善する作用がある。
・エラグ酸。苺に含まれる。美白効果があり、化粧品に多用されている。
・リグナン。胡麻に多く含まれる。セサミンもこの一種。
・クルクミン。ウコンに多く含まれる。
・クマリン。桜の葉、シナモン、パセリ、桃、柑橘類に多く含まれる。甘い香りの素。
アルカロイド
窒素を含む塩基性の植物成分の総称。アルカロイドはアルカリに似た化合物という意味である。植物塩基ともいう。激しい毒性を持つ物が多く、モルヒネやアヘン、猛毒のスズランやトリカブトもこの仲間。蕗の薹、アスパラガス、トマト、胡瓜等のほろ苦さはこの成分。各科の植物中に有機酸塩の形で含まれ、塩の形のときには水に溶けやすいが、酸から遊離させ塩基にすると水に溶けにくく、アルコールのような有機溶媒に溶けるようになる。
配糖体類
グリコシドとも。糖とさまざまな種類の非糖成分(アグリコン)が結合した有機化合物。生物界に広く分布し、植物色素であるアントシアニンやフラボン、ジャガイモの芽に含まれるソラニン、カラシナ類の辛味の主成分であるからし油配糖体、サポニン、ある種の抗生物質等も含まれる。数多くの生体物質がこれに当たり、生理的意義も様々だと考えられる。
ホモゲンチジン酸
ホモゲンチジン酸(Homogentisic acid)は、フェニルアラニン及びチロシンの代謝中間体の1つである。筍や里芋のえぐみ。筍はチロシン(タケノコの水煮に良く見られる白い粉状のもの)というアミノ酸が多く含まれる為、酵素によりホモゲンチジン酸に変化する。
ここまでで、筍そのものと、アクそのものの基礎知識を学んできました。
では、いよいよ、筍のアク抜きに科学的に論理的に迫りたいと思います。
アクが強い!
筍のアク抜き方法(理論編)
まずは、筍のアク抜き方法の情報収集から始めます。
正直、ネットで「筍のアク抜き方法」と調べれば様々なアク抜き方法が紹介されています。
その中でも理論的で、その説明に根拠があり、分かり易く纏めて下さっているサイトの記事を自分なりに選んで、その記事を参考にしながら、最適な筍のアク抜き方法を導き出していきたいと思います。
参考にさせて頂いたサイトの記事は、Wikipediaを始め、
「やさい、ごはん、化がく。つちとね」というサイトの記事、「<たけのこのあく抜き>えぐみを感じる現象とあく抜き比較実験」です。
加えて、一般的なアク抜き方法「米糠と鷹の爪と一緒に煮る」という方法を説明している本として、私が日本料理の教科書として参考にしている「プロのためのわかりやすい日本料理」に、筍の茹で方が載っていますので見てみます。
これらを参考にしながら、最適な筍のアク抜き方法を導き出していきます。
まずは、筍のアクの成分はどういったものなのか調べてみます。
筍のアクの成分とは?
筍のアクの成分について、Wikipediaの「タケノコ」のページにアク抜きについて書かれていますので見てみます。
タケノコは、収穫するタイミングが生長し始めてから早いほど苦みやアクが少なく美味しいとされる。生長するにしたがい、含まれている甘み成分が消費される。さらに繊維質が増加して堅く締まり、苦みもより強くなって食用には適さなくなる。
モウソウチクの場合、土から顔を出す前に掘るのが望ましい(地面が盛り上がっているのを見分けて掘る)とされる。マダケやネマガリタケのように、30センチメートル程度に生長した地上部を折り取って収穫できる種類もある。
タケノコのアクは、シュウ酸やホモゲンチジン酸とその配糖体などが主成分とされ、アルカリ性の水(コメのとぎ汁や重曹)で除くことができる。
ただし、タケノコはアミノ酸の一種チロシンを非常に多く(100g中690mg:日本食品成分表)含み、これが酵素によって次第に変化しホモゲンチジン酸になるため、加熱して酵素を失活させるアク止めが必要となる。
これは掘り採ってから早いほど良いとされ、「湯を沸かしてから掘れ」とも言われる。青酸配糖体も含まれているが、薄く切った場合で8 – 10分以上煮込むと安全になる。
なお、ホモゲンチジン酸と違ってチロシンは水に溶けにくく、タケノコの節内部に白い粉末状の結晶として析出し、店頭の半割された水煮でよく見掛ける(チロシンは、生長する時にリグニンの材料として使われるので、この様にストックされている)。
日本料理の煮物として調理する際には、米糠と、輪切り唐辛子などを用いてアク抜きするのが一般的だが、上記の通り水で煮るだけでもアク止め、アク抜きをすることはできるため、水溶性ビタミンの損失を抑える調理の一環や保存のためと解釈される。
また、中華料理では、湯でアク抜きする代わりに、高温の油で揚げて処理することも行われる。
ここに書かれている筍のアクの成分について纏めてみます。
筍のアクの成分
・筍のアクの主成分は、蓚酸、ホモゲンチジン酸、配糖体。
・筍に含まれるチロシンが酵素によりホモゲンチジン酸になる。
筍のアクの主成分が分かりました。
この成分に対して、科学的に、理論的に対処する事が出来れば、筍の最適なアク抜き方法に辿り着けると思います。
その前に、このアク成分があると、何故えぐみを感じるのでしょうか。
程良い苦味ならば良いのですが、筍のえぐみは、喉や舌がヒリヒリしたり、強い刺激があるものなのでとても食べられたものではありません。
このえぐみをヒトはどのような仕組みで感じてしまうのかというのを調べてみたいと思います。
ヒィィィ~~~!
筍のえぐみを感じる仕組みとは?
筍のえぐみをヒトが感じる仕組みは、「<たけのこのあく抜き>えぐみを感じる現象とあく抜き比較実験」の記事に分かり易く書かれていましたので、こちらを参考にさせて頂き学んでいきます。
たけのこのあく。シュウ酸とホモゲンチジン酸。なんでこのふたつを食べると喉や舌がひりひりするか。
「物理的刺激」。ほんとに、刺さってて、痛い!ってことです。
シュウ酸は、唾液成分中のカルシウムと結合してシュウ酸カルシウムになるってよく言われている。これが針状結晶。
ホモゲンチジン酸もしらべたけれど、これも針状結晶。(他の結晶状態もあるみたいだけどもも~)
これら細かい結晶が無数刺さってる、イメージなのかな。
(筍のなかの)シュウ酸+唾液中のカルシウム → シュウ酸カルシウム(針状結晶)→ささる!
(筍のなかの)ホモゲンチジン酸(針状結晶)→ささる!
ちなみに、シュウ酸カルシウムをググるとこんな感じ。これらが舌やのどに刺さっているのかと思うと、痛い。。。
詳細は、この方のサイトを見て頂くとより詳しく分かるのですが、ヒトが筍のえぐみを感じる仕組みが理解出来ました。
個人的には何となくアレルギー反応的な物なのかなと思っていましたが、意外にも「物理的刺激」だというのがとても勉強になりました。
では、いよいよ、実際に科学的に論理的にどのような方法が筍のアク抜きの最適な方法なのかというのに迫っていきたいと思います。
まずは、一般的な「米糠と鷹の爪と一緒に煮る」という方法は理論的に正しいのかというのも迫りたいと思います。
せまる~!
筍のアク抜き方法の考察
まずは、一般的なアク抜き方法である「米糠と鷹の爪と一緒に煮る」は、科学的な根拠があるのかというのを調べたいと思います。
一般的なアク抜き方法「米糠と鷹の爪と一緒に煮る」の考察
一般的なアク抜き方法「米糠と鷹の爪と一緒に煮る」という方法は、「プロのためのわかりやすい日本料理」の本に、筍の茹で方が載っていますので見てみます。
筍の茹で方
1、筍は穂先を斜めに少し切り落とす。
2、切り口から縦に皮だけに切り込みを入れる。
3、鍋にたっぷりの水、筍、米糠を一掴みと鷹の爪2~3本を入れ、落とし蓋をして火に掛ける。沸騰する迄は強火、沸騰後は液体が軽く躍る位の火加減で茹でる。
4、根元に金串を刺してみて、軟らかくなったかどうかを確かめる。柔らかくなっていれば陸揚げして、そのまま冷ます。
5、冷めたら、切り込んだ所から指を入れて皮を剥き、十分に水で洗う。
6、根元のいぼを剥き取り、包丁の峰で表面全体をこそげて綺麗に形を整える。水に約6時間漬けて晒す。・皮ごと茹でると、皮に含まれる亜硫酸塩が筍の酸化を防ぎ、白く茹で上がる効果があると言われている。また、米糠のカルシウムはえぐみと結合して中和し、鷹の爪は渋味を和らげるとされる。
・茹でた後は水に落とさず陸揚げして冷ますと、うま味が逃げない。
・茹でた筍は皮を剥いたら、約6時間水に晒し、残ったえぐみを抜く。それ以上時間を置く場合は、水に漬けて冷蔵庫で保存する。
一般的なアク抜き方法「米糠と鷹の爪と一緒に煮る」の疑問と言えば、「何故米糠を入れるのか」と、「何故鷹の爪を入れるのか」の点だと思います。
この「プロのためのわかりやすい日本料理」には、米糠を入れる理由として、「米糠のカルシウムはえぐみと結合して中和する」とあります。
さらに、鷹の爪を入れる理由として、「鷹の爪は渋味を和らげる」とあります。
まずは、鷹の爪を入れる意味を考察したいと思います。
鷹の爪を入れる意味の考察
この、鷹の爪を入れる理由、「鷹の爪は渋味を和らげる」は、要は鷹の爪の辛味で渋味を感じ難くするという事だと思います。
これは化学的と言うよりか、胡麻化していると言えると思います。
ネットで調べてみても、鷹の爪を入れる事に対して科学的根拠を伴う理由を添えて説明されている文献はありませんでした。
それどころか、メリットがないので鷹の爪は入れなくて良いと説明されている方の方が多いような印象です。
ですので、鷹の爪は入れなくても良いと、私も考えます。
では、次に米糠を入れる意味を考察したいと思います。
米糠を入れる意味の考察
米糠を入れる理由、「米糠のカルシウムはえぐみと結合して中和する」は、どのような現象が起こっているのかと言うと、筍のアクの成分である蓚酸が、唾液成分中のカルシウムと結合して蓚酸カルシウムとなって、針状結晶とになり、それが喉や舌に刺さってヒリヒリして、それをえぐみとして感じているという事は先程学びましたが、その蓚酸を口に入れる前に米糠のカルシウムと結合させて、蓚酸カルシウムにするという事でしょうか。
ただ、その事によって中和されるというか、えぐみを感じ難くする根拠という事になるとは、考えにくいです。
例え、蓚酸を蓚酸カルシウムにしたとしても、蓚酸カルシウムはとろろ等を触った時にヒリヒリする原因の針状結晶なので、口にした時にヒリヒリしてしまいそうです。
「プロのためのわかりやすい日本料理」では、あくまで「~とされる」と書いていて、その根拠が記されていないので、米糠を入れる意味としては定かではありません。
では米糠を入れる意味はないのかというのは、「<たけのこのあく抜き>えぐみを感じる現象とあく抜き比較実験」の記事では、米糠を入れる意味として、
米糠のデンプンが蓚酸カルシウムとホモゲンチジン酸の針を吸着する効果があり、そのおかげで喉や舌に針が刺さりにくい。
蓚酸カルシウムもホモゲンチジン酸も水酸基や酸素基があるので、多糖のデンプンと水素結合しやすいから、もしくはもう粘性で取り囲んでしまう、てきな物理的な要因か。
と述べています。
さらに、この方は米糠を入れる意味として、
米ぬかで炊くと美味しいのは、「米ぬかの香りがたけのこに入っていくから。」だなぁと思いました。米ぬかって、そのまま食べてもほんのり甘くて、美味しい。
(煮てるとなんて美味しい香り!)成分的に言うと、米の外皮なので、本当に栄養豊富。
たんぱく質、脂質、無機質、炭水化物、本当にバランスよく色々と含まれている。
中でも、たんぱく質と脂質は香りのある分子が多く、これらと一緒に煮るので、筍のなかに香りが入っていきやすい。と考察。また、言い換えると栄養も加わるってことだなぁ、と。
これには、私も同感です。
単純に米糠の香りと、筍の香りは相性が良いように思います。
米を洗う理由として、「糠臭さを取る」という事が言われていますけど、昔の事は分かりませんが、今流通しているある程度の品質の米で糠臭いと思った事は私はありません。
米糠自体も良い香りです。
米糠を入れる理由として、科学的な理由は乏しいかもしれませんが、メリットはあるようです。
ちなみに、この「プロのためのわかりやすい日本料理」の筍の茹で方で書かれている、「皮ごと茹でると、皮に含まれる亜硫酸塩が筍の酸化を防ぎ、白く茹で上がる効果があると言われている。」で出てくる「亜硫酸塩」(亜硫酸ナトリウム)は、食品添加物として、ワインの酸化防止剤や、ドライフルーツの漂白剤として使われているそうです。
ですので、「白く茹で上がる」という効果は記載通り期待出来そうです。
筍の皮に自然に含まれている亜硫酸塩ですが、食品添加物でいうと体に悪く避けたほうが良い添加物ですので、食べ過ぎに注意する事が必要のようです。
加えると、筍のアクの成分である蓚酸も、体内に入るとアシドーシスに傾いた血液中でカルシウムと結合して結石などを生じるので、食べ過ぎに注意する事が必要です。
体に良い食べ物、悪い食べ物に関する情報について
正直、極論を言えば、世の中のどんな食べ物にも、天然の食材にも、有機栽培の食材にも、もちろん体に良い成分があれば、体に悪い成分が大なり小なり含まれています。
食べ物を口にするという事は、良い栄養も、悪い栄養も取り入れるという事です。
これは絶対に避けられません。
だからと言って、ヒトは滅びる事なく、今迄しっかり繁栄してきています。
つまり、そういう事なのです。
それを、その気にしなくても良い体に悪い成分を、さも著しく健康に害を及ぼすと訴えている情報が多々見受けられます。
しかし、やはり本当に健康に害を及ぼす成分を含ませている食べ物も市場に出回っています。
ですので、過敏に恐れるという事ではなく、正しく恐れ、正しく選択する必要があります。
という事で、一般的なアク抜き方法「米糠と鷹の爪と一緒に煮る」の考察をしてみました。
では、結局の所、何と一緒に煮れば、筍のアクは最も抜けるのでしょうか。
次はそこに迫りたいと思います。
最適な筍のアク抜き方法の考察
筍のアク抜きについて研究した学術論文は無いのだろうかと、文部科学省所管の独立行政法人科学技術振興機構(JST)が運営する電子ジャーナルの無料公開システム、「J-STAGE」で調べたら、「タケノコのあく抜きに関する研究」という論文を見つけました。
この論文で、様々な方法による筍のアク抜きを比較しているので、これを見ていきます。
【方法】日本におけるこれまでのタケノコのあく抜き法について文献調査を行い、アジアの国々についても、在留外国人に聞き取り調査を行った。次にあく抜き方法について検討を行った。タケノコは2015年4月、鎌倉市内の竹林で採取し、収穫3日後のものを用いた。10%米ぬか、0.3%重曹、50%牛乳、アルカリイオン水、1.75%そば粉(そば湯)を用いてゆで、ゆで汁に浸漬して冷却し、水洗い後15時間水に浸漬したものを試料とした。20歳代のパネル(女性31名)により、えぐ味の強さ、硬さ、色・香り・食感の好みなどの評価項目について5段階の評点法を用いて官能評価を実施した。
【結果】文献調査の結果、日本でのあく抜き法として、何も添加せずにゆでる「湯煮」が長く行われてきたが、明治末期には婦人総合誌に米ぬかを用いた方法が記載されていた。また、アジアの国々においても「水でゆでる」「塩水でゆでる」が多かった。収穫後時間の経過したものはあく抜きが必要となるが、官能評価の結果、いずれの方法においてもえぐ味の強さに差は認められなかったが、色の好みおよび硬さについて有意差が認められ、重曹を用いた試料での褐色化および組織の軟化によるものと考えられた。米ぬかを含めていずれの方法によってもあく抜きが可能であることが示唆された。
この論文によると、米糠、重曹、牛乳、アルカリイオン水、蕎麦粉、いずれにしてもアク抜きが可能で、えぐみの強さに差は見られなかったとあります。
結局の所、何をもって筍のアクは抜けるのでしょうか。
次は、そこの所について迫りたいと思います。
筍のアクが抜ける要因
筍のアク抜きを行った際の、筍のアクが抜ける要因は、Wikipediaのタケノコのページのアク抜きについて書かれている箇所に記載されているので、再度見てみます。
タケノコのアクは、シュウ酸やホモゲンチジン酸とその配糖体などが主成分とされ、アルカリ性の水(コメのとぎ汁や重曹)で除くことができる。
ただし、タケノコはアミノ酸の一種チロシンを非常に多く(100g中690mg:日本食品成分表)含み、これが酵素によって次第に変化しホモゲンチジン酸になるため、加熱して酵素を失活させるアク止めが必要となる。
青酸配糖体も含まれているが、薄く切った場合で8 – 10分以上煮込むと安全になる。
さらに、「<たけのこのあく抜き>えぐみを感じる現象とあく抜き比較実験」の記事でも、筍のアクが抜ける要因について考察していますので見てみます。
あくの成分であるホモゲンチジン酸は強酸や強アルカリに可溶。
重曹は、アルカリ性。ばっちりではないけど溶かす効果あり。
(米ぬか、米のとぎ汁、大根おろしは、弱酸性~中性)
(シュウ酸は水溶性なので、湯がいたら抜けるのかな、とおもた。ただ、細胞内でシュウ酸カルシウムになっていたら、強酸でしか溶けないからなかなか溶かすのは難しいかも。)
また、なんで、非加熱だとあくが抜けにくいのか。
「しっかりとした細胞壁があることで、外から加えたものたちがなかの物質に影響を与えにくいから。」
だと思う。(ちなみにホモゲンチジン酸やシュウ酸はほとんど細胞内の液胞に貯蓄されているかと。細胞内のまたその中の組織中にあるものが、外のものと反応しあうことは難しい)
重曹水だけあく抜き度合いが△(非加熱でも多少抜けた)、だったのは、アルカリ性は組織を溶かす効果があるんですね。(浸透圧の効果もありそう)だからほかの3つと比較して、重曹水は中に入っていけたんかな。
あと、だいこんは酵素によりえぐみを分解、と見かけたけれど、酵素は、物質ごとに必要な酵素って違うので、この見解は違うのかなと思った。※重曹で加熱のこと
そう、やはり、アルカリ性の重曹はあくの成分も溶かすので、あくを感じさせないのだけれども!
ほかの美味しい香りだとかの成分たちも流出、してしまっているのだわ、、!※米ぬかや米のとぎ汁で加熱のこと
米ぬかや米のとぎ汁は中性~弱酸性のため、あくの成分は溶かすことはできないので、あの針状結晶として残ったまま。ですが、でんぷんがこれらの針を吸着する効果があり、そのおかげで喉や舌に針が刺さりにくい。えぐみは少しのこるけれど、美味しい香りは重曹よりも残る傾向。
これらに書かれている筍のアクが抜ける要因について纏めてみます。
筍のアクが抜ける要因
・筍のアクの主成分である蓚酸、ホモゲンチジン酸、配糖体は、強酸や強アルカリに溶ける。
・筍に含まれるチロシンが酵素によりホモゲンチジン酸になる為、加熱して酵素を失活させる。
筍のアクが抜ける要因のポイントは加熱とアルカリ性という事が分かりました。
加熱は良いですが、問題なのはアルカリ性の水で茹でるという事です。
水をアルカリ性にするのに重曹を使うと、やはり重曹の何か独特な味を感じてしまう場合があります。
何か他の方法でアルカリ性にする事は出来るのでしょうか。
料理とpHは、料理に水を使う以上、切っても切れない関係です。
このブログでも何回かpHについて取り上げてきました。
その中に、重曹以外の方法でアルカリ性にする方法も取り上げているので、次にその方法を振り返っていきます。
重曹以外で水をアルカリ性にする方法とは?
重曹以外の方法で水をアルカリ性にする方法は、このブログの記事、「【水の研究】料理に最適な水とは?ミネラルウォーターを飲み比べてみました!」と、「【米の研究】ご飯を炊くのに最適な水?最適な鍋とは?最も美味しいご飯の炊き方にせまります!」に書いていますので、これを振り返ります。
まず、ミネラルウォーターの記事では、飲み比べたミネラルウォーターの中に高アルカリ性の物があったので、これを使えば、そもそもの水がアルカリ性ということになります。
それは、「温泉水99」というミネラルウォーターです。
温泉水99は、pH9.9というミネラルウォーターの中でも高アルカリ性となっています。
高アルカリの水という事であれば、アルカリイオン整水器等を用いて水道を電気分解したアルカリイオン水も高アルカリ性の水となります。
https://ja.wikipedia.org/wiki/アルカリイオン水
さらに、ご飯の炊き方の記事では、「備長炭を用いた炊飯に関する研究」という論文を、ご飯の最適な炊き方を導く理論として参考にしました。
この論文には、
備長炭浸漬液のpHは、添加濃度, 浸漬時間に比例して上昇したが、浸漬1時間後のpH9強を最大とし、それ以降は添加濃度、浸漬時間を増加させても変動は認められなかった。
クリープ測定の結果、備長炭炊飯の米粒の方が瞬間弾性率が高く、弾力に富んだ米粒であることが示唆された。
官能検査の結果から普通炊飯に比べ備長炭添加炊飯の米飯は、水っぽさがなく、好ましい硬さの食感となる傾向を得た。
と、記載されていました。
という事で、炭を水に浸透させれば、1時間で高アルカリ性の水にする事が出来ます。
という事で、これらの重曹以外の方法で水をアルカリ性にする方法を纏めてみます。
重曹以外で水をアルカリ性にする方法
・高アルカリ性のミネラルウォーターや、アルカリイオン整水器を用いたアルカリイオン水を使う。
・炭(備長炭、竹炭等)を水に1時間浸透させる。
これ迄で、最適な筍のアク抜き方法を導くための理論が整ってきました。
次で、一度これらの理論を整理して、最適な筍のアク抜き方法の理論を提示したいと思います。
筍のアク抜き方法の理論のまとめ
では、これ迄に学んだ事を整理し、筍のアクと正しく向き合っている、筍の素材自体の美味しさを十分に引き出せる、科学的な、論理的な、最適な筍のアク抜き方法を導き出していきたいと思います。
まずは、これ迄に学んだ事を整理します。
筍のアクの成分
・筍のアクの主成分は、蓚酸、ホモゲンチジン酸、配糖体。
・筍に含まれるチロシンが酵素によりホモゲンチジン酸になる。
筍のアクが抜ける要因
・筍のアクの主成分である蓚酸、ホモゲンチジン酸、配糖体は、強酸や強アルカリに溶ける。
・筍に含まれるチロシンが酵素によりホモゲンチジン酸になる為、加熱して酵素を失活させる。
重曹以外で水をアルカリ性にする方法
・高アルカリ性のミネラルウォーターや、アルカリイオン整水器を用いたアルカリイオン水を使う。
・炭(備長炭、竹炭等)を水に1時間浸透させる。
では、最適な筍のアク抜き方法を纏めます。
最適な筍のアク抜き方法
1、筍は穂先を斜めに少し切り落とす。
2、切り口から縦に皮だけに切り込みを入れる。
3、鍋に筍が浸かる程の水を入れ、そこに炭を入れ水に1時間浸透させる。
3、水と炭の入った鍋に、筍、米糠を入れ、落とし蓋をして火に掛ける。沸騰する迄は強火、沸騰後は液体が軽く躍る位の火加減で茹でる。
4、根元に金串を刺してみて、軟らかくなったかどうかを確かめる。柔らかくなっていれば陸揚げして、そのまま冷ます。
5、冷めたら、切り込んだ所から指を入れて皮を剥き、十分に水で洗う。
6、根元のいぼを剥き取り、包丁の峰で表面全体をこそげて綺麗に形を整える。
※アクの成分を溶かす為、炭で水を高アルカリ性へ変動させる。
※皮ごと茹でると、皮に含まれる亜硫酸塩が筍の酸化を防ぎ、白く茹で上がる効果がある。
※米糠は入れなくてもアクは抜ける。
以上、最適な筍のアク抜き方法を導き出せました。
最も美味しく筍を食べる方法
これ迄に筍のアク抜き方法と向き合ってきましたが、「最も美味しく筍を食べる方法」は、この最適な筍のアク抜き方法とは別にある事を、これ迄に学んだ中にありました。
その理由は、Wikipediaの「タケノコ」のページに記載されていました。
孟宗竹の場合、タケノコは、収穫するタイミングが生長し始めてから早いほど苦みやアクが少なく美味しいとされる。生長するにしたがい、含まれている甘み成分が消費される。さらに繊維質が増加して堅く締まり、苦みもより強くなって食用には適さなくなる。
ただし、タケノコはアミノ酸の一種チロシンを非常に多く含み、これが酵素によって次第に変化しホモゲンチジン酸になるため、加熱して酵素を失活させるアク止めが必要となる。
要は、タイミング良く収穫した新鮮な筍を、出来るだけ早く加熱するという事です。
筍のアクをアクを抜くという作業は、同時に筍の風味、うま味を抜くという事にどうしてもなってしまいます。
最適な筍のアク抜き方法は、筍のアクと風味の損益分岐点の丁度良い所にもっていくという事です。
ですので、最も美味しく筍を食べる方法は、アクの無い筍を入手するという事になります。
という事で、最も美味しく筍を食べる方法を纏めます。
最も美味しく筍(孟宗竹)を食べる方法
1、成長し始めてから早いタイミング、土から顔を出す前に収穫した筍を用意する。
2、収穫した筍を出来るだけ早く加熱する。
※筍は、収穫するタイミングが成長し始めてから早い程アクが少なく、成長するにしたがい含まれている甘み成分が消費され、繊維質が増加して堅く締まる。
※筍は、アミノ酸の一種チロシンを非常に多く含み、これが酵素によって次第に変化しホモゲンチジン酸になる為、加熱して酵素を失活させる。
以上で、最適な筍のアク抜き方法と、最も美味しく筍を食べる方法の理論を纏める事が出来ました。
では次に、この理論を基に実際に筍を料理していきたいと思います。
実践!
筍のアク抜き方法(実践編)
今回用意したのは、なるべく新鮮な筍を手に入れる為に、私の地元愛知県岡崎市の農産物直売所「ふれあいドーム岡崎」で購入した、岡崎市産の孟宗竹の筍です。
筍の下準備をする
筍は穂先を斜めに少し切り落とし、切り口から縦に皮だけに切り込みを入れます。
筍の茹で汁の準備をする
筍の茹で汁として、高アルカリ性の水、竹炭、米糠を用意します。
鍋に筍が浸かる程の水を入れ、そこに竹炭を入れ水に1時間浸透させます。
アクの成分を溶かす為、竹炭で水を高アルカリ性へ変動させます。
米糠は入れなくてもアクは抜けます。
筍を茹でる
水と竹炭の入った鍋に、筍、米糠を入れ、落とし蓋をして火に火に掛けます。
沸騰する迄は強火、沸騰後は液体が軽く躍る位の火加減で茹でます。
皮ごと茹でると、皮に含まれる亜硫酸塩が筍の酸化を防ぎ、白く茹で上がる効果があります。
根元に金串を刺してみて、軟らかくなったかどうかを確かめます。
柔らかくなっていれば陸揚げして、そのまま冷まします。
筍の皮を剥き整形する
冷めたら、切り込んだ所から指を入れて皮を剥き、十分に水で洗います。
根元のいぼを剥き取り、包丁の峰で表面全体をこそげて綺麗に形を整えます。
以上、科学的に論理的に考察し導き出した、最適な筍のアク抜き方法を実践してみました。
こうしてアク抜きした筍で、様々な料理に仕上げていきます。
今回は、「筍の桜味噌和え」を作ってみましたので、次で紹介していきます。
桜、ひらひら!
筍の桜味噌和えの作り方
筍の煮物の作り方
まずは、筍に味を含ませる為に、筍の煮物を作ります。
筍を、魚節と昆布の出汁、薄口醤油、味醂で煮ます。
さらに、竹炭を入れ、ここでも筍のアクの成分を溶かす為に、煮物の煮汁を高アルカリ性へ変動させます。
煮汁の割合は、今回のように下味をつける程度であれば、
魚節と昆布の出汁:薄口醤油:味醂=20:1:1。
煮物として食べる程度であれば、
魚節と昆布の出汁:薄口醤油:味醂=11:1:1。
の重量割合で合わせます。
正確性、再現性を確保する為、材料は全てデジタルスケールを使い、重量の単位で量ります。
白玉味噌の作り方
次に、桜味噌を作ります。
桜味噌は、まず白玉味噌を作り、それに桜の葉を刻んで混ぜて完成です。
白玉味噌の材料は、白味噌、魚節と昆布の出汁、日本酒、味醂、砂糖、卵黄です。
割合は重量割合で、
白味噌:魚節と昆布の出汁:日本酒:味醂:砂糖:卵黄=1:1:0.5:0.5:0.5:(味噌100gに対して卵黄1個)です。
作り方は、まず鍋に日本酒と味醂を入れ沸騰させ、気化しているアルコールに火を付け、アルコールを飛ばします。
次に、魚節と昆布の出汁を入れ、砂糖を入れて溶かします。
そして、白味噌と卵黄を鍋に入れる前に混ぜ合わせ、しっかり混ぜ合わさったら鍋に入れ溶かします。
これを、木べらで鍋底が焦げないように絶えず混ぜながら、煮詰めていきます。
元の味噌の固さくらいになるまで煮詰めたら、裏漉しし、完成です。
仕上げ
筍の煮物の汁気を切り、サッと湯がいて水気を切った若芽を、桜味噌で和え、桜の花の塩漬けを塩抜きし乾燥させた物を散りばめ、器に筍の皮と盛り付けて完成です。
美味しそぉ~!
実食
いただきます!
まずは、桜の花びらの鮮やかなピンク色に目を奪われ、筍の色、筍の皮の色、若芽の色、桜味噌の色と相まって春を感じさせてくれます。
桜の花言葉は、「精神の美」「優美な女性」なのだそうで、この桜のおかげで料理をより一層上品に仕上げてくれています。
香りは、桜の花や、桜味噌の桜の葉から香る何とも言えない、日本人の感性をくすぐる香りを感じられ、筍からは、玉蜀黍のような甘い香りを感じる事が出来ます。
筍、若芽、桜味噌と口に一緒に入れますと、その香りを口の中からも広がりを見せ、筍の甘味、桜味噌の甘味、若芽の塩味が相重なり、味と香りを口から舌から鼻からと存分に味わう事が出来ます。
肝心の筍のえぐみはどうかというと、やはりいくら新鮮な筍とはいっても、今回用意した筍は収穫してから多少時間が経っていたのか、最適な筍のアク抜き方法を施しても極々僅かではありますがえぐみは残っていました。
しかし、このえぐみを全て取り除こうとすると、筍の風味も抜けてしまいます。
実際、料理として桜味噌と和えた筍を味わってみても全くと言って良い程嫌なえぐみは感じられませんでした。
但し、アク抜き作業を行う事によって流出してしまったであろう筍の風味の事を考えると、やはり最も筍を美味しく食べる方法は、アクが無い新鮮な筍を用意する事の他にありません。
いつか、アクの無い新鮮な筍と出会えましたら、追って報告したいと思います。
ごちそうさまでした!
まとめ
今回、季節は春という事から、春の食材のひとつである筍と向き合い、筍の素材自体の美味しさをもっと引き出す為に、筍のアク抜きという作業を科学的に論理的に考察し、最適な筍のアク抜き方法を導き出すと共に、筍の最も美味しい食べ方というものに迫りました。
筍の最も美味しい食べ方に迫った事で、ある食材を最も美味しく食べる方法とは、その食材の最も美味しい瞬間に料理し食べるという事だと、今回身に染みて分かりました。
どんなに科学的根拠に基づく方法で料理しても、その食材が最も美味しい状態でなければ、その食材は料理する前の美味しさ以上にはなりません。
料理をするという事は、その食材に美味しさを加えるという事ではなく、その食材の美味しさを引き出すという事なのだなと思いました。
また、最適な筍のアク抜き方法に迫った事で、今迄良しとされてきた一般的な方法を、科学的に論理的に見直してみる事で、正しい事や間違っている事もあるという事が分かりました。
しかし、間違っている、意味が無いという事で、その事を排除するだけでなく、その今迄大切に語り継がれてきたという事を尊重し、その趣を残すという事も必要なのかなとも思いました。
科学的な論理的な根拠というものはもちろん大事ですが、何か事実や現実とは違う虚構や空想といったものも料理に取り入れても面白いのではないかと思いました。
だからと言って何でもありではなく、そこには当然、想いや趣というものが見えなくてはならないと思います。
これから感動する料理を作っていく為に、科学的な感性と感覚的な感性の両方を磨いていきたいと思います。
磨きます!
第30回 かわののブログ
コメントはこちらからどうぞ