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【低温調理の研究】鶏もも肉の最適な加熱温度と時間は?

鶏もも肉のひきずり鍋仕立て-料理方法の研究



以前の記事で、低温調理と向き合い、理論を学び、

また、低温調理の実践編という事で、
牛もも肉のステーキ、豚肩ロースのステーキ、真鯛のミキュイを作りました。

今回は鶏もも肉を低温調理していきます。
鶏もも肉を低温調理し、ひきずり鍋という名古屋名物のいわゆる鶏肉のすき焼き、
その料理のように仕立てていきます。
ひきずり鍋の由来は一説に、食べる時に鶏肉で鍋の底を引きずる為といわれています。

河野裕輔
河野裕輔

でらうみゃ~!



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鶏もも肉の低温調理(理論編)


まずは、鶏もも肉の低温調理に最適な温度と時間を、
以前の記事で学んだ理論をもとに導いていきます。
(詳しくは低温調理と向き合う!低温調理とは?肉や魚の低温調理の理論を学んでみた!をご覧下さい。)

鶏もも肉の低温調理に最適な温度と時間とは?

まず低温調理とは、

食材の温度を低温に保ったまま、長時間かけて加熱する事で、
食材の柔らかさと水分を保つメリットがある調理法です。

さらに、

食材の温度を低温に保ったまま、長時間かけて加熱する事で、
酵素が活性する時間も長くなる事により、
肉のタンパク質の分解が促進され、旨味成分が増加したり、
野菜のデンプンの分解が促進され、甘味成分が増加したり、
等のメリットも期待できます。

そして、その低温調理のメリットである食材が柔らかさと水分を保った状態というのは、
その肉のタンパク質の成分が、

ミオシンは加熱による収縮をし、柔らかな食感を生み
アクチンは加熱による収縮はせず、水分を保ち
コラーゲンは加熱による収縮をし切れて、ゼラチン質になっている

そして、それぞれの成分がこの状態になる加熱の温度と時間は、
今回は、陸上生物なので、

ミオシン 50℃から変性し始める。
アクチン 66℃から変性し始める。
コラーゲン 40℃から変性し始めるが十分な時間が必要。68℃で短時間ではゴム状になる。70℃以上数時間でゼラチン質になる。

さらに、食材の安全性を確保する為に、厚生労働省が定めている、食品の規格基準を守ります。
食肉製品の規格基準のうち、特定加熱食肉製品の、製造基準の中で、加熱の温度と時間に関する項目があるのでみてみます。


その中心部を次の表の第1欄に掲げる温度の区分に応じ、同表の第2欄に掲げる時間加熱し、又はこれと同等以上の効力を有する方法により加熱した食肉を原料食肉として製品を製造する(食肉の温度が 20°を超え 50°未満の状態の時間が 120 分以内である場合に限る。)
第1欄 第2欄
50° 580分
51° 300分
52° 155分
53° 79分
54° 41分
55° 21分
56° 11分
57° 6分
58° 3分
59° 2分
60° 1分
63° 瞬時



ここで、何℃がいいのかというのは、
以前の記事で、牛もも肉のステーキや、豚肩ロースのステーキで低温調理した温度を参考にし、
55℃でやってみようと思います。
という事は、先程みた、厚生労働省が定める食品の規格基準を守ると、
食材の中心を、55℃で21分以上という数字がみえてきます。

この理論上で導き出した温度と時間をもとに実践し、
あとは、自分好みの火入れ加減になるように調整していきます。

河野裕輔
河野裕輔

レ~~ッツ♪クッキング♪



鶏もも肉の低温調理(実践編)

鶏もも肉の下準備をする

今回使いますのは、名古屋コーチンの鶏もも肉です。

鶏もも肉

まずはこの鶏もも肉を殺菌します。

沸騰したお湯でサッと湯通しします。
すぐに氷水に落とし、中まで火が入らないようにし、
キッチンペーパーで水分をしっかり拭き取ります。

どんなに清潔に保たれているとはいえ、表面が空気にさらされている以上、どうしても雑菌の付着は避けられません。
表面が少し変性してしまいますが、殺菌を重視します。

湯、沸騰

次に、鶏もも肉に塩を浸透させます。

鶏もも肉の重量の0.8%の塩をまぶして、フィルム袋に入れ、
鶏もも肉の重量の10%の太白胡麻油を入れ、真空密封し、冷蔵庫に1日置きます。
冷蔵庫には水を張った容器の中に浮かべて寝かせます。
ウォーターベットに寝かせる事で、変形や腐敗を防ぎます。

塩の浸透圧、水と油の反発作用を利用して、塩を浸透させていきます。
(肉に塩を浸透させるイメージについて、低温調理と向き合う!牛もも肉のステーキを作ってみた!の記事で述べています。)

鶏もも肉、塩浸透



鶏もも肉を低温調理する

低温調理する為の湯煎器、BONIQ(ボニーク)を用意します。

BONIQ

先程導き出した、55℃で21分以上という数字をもとにBONIQ(ボニーク)を設定します。

この55℃で21分以上というのは、食材の中心を55℃で21分以上加熱するという事です。
食材の中心温度は、BONIQの設定温度の1℃低い温度までしか、なかなか上がりません。
よってBONIQは56℃に設定し、
温度計で食材の中心温度を測りながら、55℃に達したら、21分以上加熱し、
それ以降の時間は少しづつ試食しながら好みの火入れ具合になる時間を探る事にします。

鶏もも肉、56℃

結果、冷蔵庫に寝かしていた鶏もも肉をすぐにBONIQに入れ、
30分程経った頃に鶏もも肉の中心温度が55℃に達し、
その後1時間経った頃に好みの火入れ具合になりました。
という事で、今回の鶏もも肉は、BONIQで56℃で1時間30分、低温調理しました。

鶏もも肉、低温調理後

このままでは、皮がぶよぶよのままですので、
皮をパリッとさせる事、
メイラード反応によりこんがりとした焼き色と香ばしい匂いを引き起こす為に、炭火で焼いていきます。



鶏もも肉を炭火焼きにする

低温調理した鶏もも肉の身は、ミディアムレアの感じで火が入っています。
このミディアムレアの感じを残しつつ、
皮をパリッとさせ、こんがりとした焼き色と香ばしい匂いを引き起こすには、炭火が最適です。

炭火には、
遠赤外線により食材の表面が素早く加熱される事と、
炭の燃焼時に水を発生させない事による、食材に余計な水分を与えない事
という特徴があります。
(メイラード反応、炭火のメリットについて、低温調理と向き合う!牛もも肉のステーキを作ってみた!の記事で詳しく述べています。)

この特徴が今回の加熱の目的にピッタリという訳です。

という事で、鶏もも肉を皮から炭火で焼いていきます。

鶏もも肉、炭火焼き、皮

鶏もも肉から油が落ち、炎が上がる場合がありますが、
これは炭をなるべく隙間なく綺麗に並べる事で防ぐ事ができます。

皮がパリパリにこんがり香ばしく焼けたら、身の方も少し焼き目を入れていきます。

鶏もも肉、炭火焼き、身

これで鶏もも肉の火入れの完成です。

鶏もも肉、低温調理


今回はこれを、ひきずり鍋(鶏肉のすき焼き)仕立てにしていきます。



鶏もも肉のひきずり鍋仕立てを仕上げる

濃口醤油、味醂、日本酒、砂糖で割り下を作ります。
その割り下を煮詰めてたれにし、鶏もも肉に掛けます。
そこに、割り下に2日程漬けた卵黄を添えて完成です。

鶏もも肉のひきずり鍋仕立て
河野裕輔
河野裕輔

美味しそぉ~!



実食

河野裕輔
河野裕輔

いただきます!

まずは、鶏もも肉の断面から見ていくと、名古屋コーチンならではの身の色の濃さが際立つ火入れを見てとれます。
さらに皮はこんがり香ばしく焼かれ、割り下のたれの照りと会い極まり、
食欲を掻き立てられる見た目の料理に仕上がっています。

ひとつ箸に持ち、口に入れますと、名古屋コーチンならではの弾力、噛み応えを感じつつも、
噛み切れないという事はなく、程良い火入れ具合による程良い歯切れを感じる事ができます。
低温調理によるジューシーさを感じながら、口の中で弾力を楽しみながら咀嚼し、
名古屋コーチンの鶏の旨味というものを噛む度に感じます。
決して柔らかいとは言えない、地鶏特有のこの弾力、噛み応え。
この地鶏の楽しみ方、味わい方というのは、咀嚼している間にこの旨味を味わう事なのだと実感させられます。

さらに、割り下のたれの甘辛さ、味の濃さに名古屋コーチンは決して負けておらず、
負けるどころか、両者が引き立てあい、非常にマッチしている感じが伺えます。
そこに割り下に漬けた卵黄を絡ませてみても、その両者をさらに包み込み、まろやかにさせ、
鶏肉にすき焼きの味というのはとても相性抜群という事が分かりました。
正直、愛知県に住んでいて、ひきずり鍋という鶏肉のすき焼きが名古屋名物だという事は知らなかったのですが、もっと広まってもいいのになと思いました。

河野裕輔
河野裕輔

ごちそうさまでした!



まとめ

今回低温調理の実践編、第4弾という事で、鶏もも肉を低温調理し、鶏もも肉のひきずり鍋仕立てを作りました。

鶏肉の火入れというと、串に刺した焼鳥が第一に思い浮かびます。
あのように一口大に串に刺し炭火で焼くという事は、パッと見、高温調理のように思われますが、
鶏肉の中心に関していえば低温調理のような構造の火の入り方になっているように思われます。
焼鳥屋さんも、自分も、目指している鶏肉の火入れのゴールは、
中はジューシーで、外はこんがり香ばしくという矛盾しているような理想を描いているように思います。
そのゴールへの道のりは様々で、どれが正解というものではなく、
どれだけ理論立てて、こだわりを持って進んでいくのかという事が大切なように思います。

これからも、ひとつひとつの工程に理論立てて、こだわりを持って、
唯一無二の料理を作っていけたらいいなと思います。



こうして、いずれ開く店への道のりが、また一歩踏み出されたのです。

河野裕輔
河野裕輔

16歩目!

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