クリスマスのご馳走といえば思い浮かぶのがクリスマスチキンです。
スーパーなどでも、ローストチキンやフライドチキンなどの料理や、骨付き鶏もも肉や丸鶏などの食材が、
クリスマスの飾りつけや音楽と共に賑やかに並べられています。
そもそも、なぜクリスマスにチキン料理を食べるのでしょうか。
これについて、とても分かりやすく説明されているブログを見つけたので紹介させて頂きます。
鶏をどのように調理するかと考えた時に、一度向き合ってみたいと思う料理がありました。
それは「北京ダック」です。
北京ダックのように、皮のパリパリさに重点をおいた調理法というのはなかなか他になく、鶏の調理法として、学んでおくべき料理だと思いました。
その北京ダックの作り方をWikipediaで調べてみると、
https://ja.wikipedia.org/wiki/北京ダック
食材とするアヒルを屠殺した後に毛をむしり、内臓を取り出して血を抜き、舌、手羽先、足の部分が取り除かれる。アヒルの体内に空気を入れて膨らませてフックにかけ、熱湯を身体全体にかけて体表に付いた余分な脂を洗い流す。皮に飴糖水(水飴に水を加えて煮溶かしたもの)を塗った後、アヒルは余分な水分を除くために一昼夜吊るされるが、この乾燥の工程で肉が腐敗する夏期は北京ダックの調理に不向きであり、本来北京ダックは秋、冬、春の料理だった。アヒルに含まれる余分な水分を蒸発させる装置が考案されたため、現在は季節にかかわらず北京ダックを食することができる。
北京ダックは、炉の中のフックにアヒルを掛けて焼き上げる製法より、「掛爐烤鴨」(クワルーカオヤー guàlú kăoyā)とも呼ばれる。主に焼き方の違いにより、オーブン式の扉付の炉で蒸し焼きにする闇爐(アンルー、ànlú)と、扉無しの炉で直火でアヒルを炙る明暗爐(メイアンルー、míngànlú)とに分かれる。
明代に考案された闇爐は、最初に炉の中で火を燃やし、残り火と炉の壁の余熱でアヒルを焼き上げる。アヒルの腹の中には香味野菜と調味料、スープが詰め物として入れられており、余熱で蒸し上げられることで詰め物の風味が肉に行き通り、肉が柔らかく仕上がる。その反面、皮の食感は明暗爐で焼かれたアヒルに比べて香ばしさに欠ける。南方式の調理法は、現在も便宜坊烤鴨店などの店舗で受け継がれている。また、闇爐とインドでナンやタンドリーチキンを焼くタンドールという炉との類似点が指摘されている。
清末に全聚徳烤鴨店で考案された明暗爐では、ロシアのペチカと似た扉無しの暖炉でアヒルを薪の直火で焼き上げる。炉内の湿気が低いため、皮の香ばしさが増す点に特徴がある。また、アヒルの肉を柔らかくするため、腹の中には湯が入れられている。北京の専門店にはこの方法でアヒルを焼き上げる店が多い。
アヒルが焼きあがったら、削いだ皮と山東省産のネギ(北京葱)やキュウリの千切りを、薄く焼いた小麦粉の皮(薄餅、バオビン)に甜麺醤をベースとした甘い味噌とともに乗せ、巻いて食べる。巻く時は、薄餅を利き手でない手に乗せ、最初に味噌だれをつけたアヒルの皮や肉を中央に置き、さらにネギやキュウリを縦置きにし、薄餅を左右から3つ折にした後、手前側の薄餅を折って底を閉じれば、中身が落ちて汚すことがない。
と、あります。
ここで、北京ダックを作るのに問題がでてきてしまいました。
北京ダックは、闇爐(アンルー)や明暗爐(メイアンルー)という焼き方で焼き、どちらもそれなりの炉が必要のようです。
下の写真は、明暗爐の炉です。
オーブンで代用して作るのもひとつの方法です。
しかし、北京ダックについてさらに調べているうちに、もうひとつ、北京ダックに似た料理だけど、大掛かりな設備を必要とせずに作れるような料理を見つけました。
それが、「脆皮鶏(ツイピーチー)」(鶏の皮パリパリ揚げ)です。
脆皮鶏とは、「広東料理」で、「広州十名鶏」と呼ばれる料理のうちのひとつだそうで、基本的に北京ダックと同じように、飴掛けし、乾燥させますが、火入れとして、油を使い、丸揚げや、油を掛けながら火を入れていきます。
この火入れ法ならばできそうなので、この脆皮鶏を作り、鶏の調理法のひとつとして学びたいと思います。
実際に作っていく前に、まずはこの「脆皮鶏(ツイピーチー)」という料理の理解を深めるために、この料理のことを調べたいと思います。
最初に、脆皮鶏のジャンルにあたる広東料理とはをWikipediaで調べてみると、
https://ja.wikipedia.org/wiki/広東料理
中国南部の広東省、香港、マカオ及び海外の広東系住民の居住地区で食べられている料理。
粤菜(えつさい、中国語 粤菜 ユエツァイ Yuè cài)とも称され、中華料理の四大菜系、または八大菜系のひとつに挙げられる。
と、あります。
広東省といえば、広州市があり、広州といえば、「食は広州にあり」という言葉を聞いたことがあると思います。
これは、昔から中国で言い古されている言葉
「生在蘇州 穿在杭州 食在広州 死在柳州」からきているそうです。
日本および台湾の実業家、作家である、邱 永漢(きゅう えいかん)さんの著書、「食は広州に在り」をみてみると、
昔から中国で言いふるされていることばに、「生在蘇州、穿在杭州、食在広州、死在柳州」というのがある。蘇州では子供の生まれるのを喜び盛大なお祝いを行う。杭州は絹の名産地である。なぜ柳州で死にたいかというと、柳州の棺桶は良質でしかも値段が安いからだ。
と、あります。
そんな広東料理のなかに広州十名鶏と呼ばれる料理があります。
広州十名鶏とは、これについてとても詳しく説明されているブログをみてみると、
50年ほど前の広東省では各地のホテルがこぞって新作の鶏肉料理を披露し、…当時の「広州名鶏」といわれる料理は、名前だけ見ていてもおいしそうなものばかりなので、列挙してみます。『桶子油雞』を筆頭に『桂花蝉雞』、『橘香雞』、『脆皮糯米雞』、『広州文昌雞(金華錦綉雞)』、『務長牛奶雞』、『江南百花雞』、『手撕雞』、『豆豉雞』、『龍涎香液雞』、『骨香雞』、『豉油皇雞』、『東江鹽焗雞』、『大爺雞』、『牡丹雞』、『口福雞(柱侯瓦罉焗雞)』、『鳳城蜜軟雞』と、どれもおいしそうな名前です。残念ながら料理人が退職したり、レストランが閉店したりしていくつかの料理のレシピは失われてしまいました。文化大革命の傷跡はこういうところにも残っています。
1980年代から、広東省では鶏肉料理の復古というか回復運動のようなものが起こりました。それで新たに策定されなおしたのが「広州十名鶏」というわけです。こちらも『桶子油雞』を筆頭に『清平雞』、『文昌雞』、『東江鹽焗雞』、『市師雞』、『脆皮雞』、『蜆蚧雞』、『路邊雞』、『百歲雞』、『太爺雞』と、おいしそうな料理が揃っています。いくつかの料理は中華料理ファンにはおなじみの名前かもしれません。レシピを見ただけで涎が出てくるようなものばかりですので、いつか紹介したいと思います。
と、あります。
そんな「脆皮鶏(ツイピーチー)」という料理の作り方は、
私の中国料理の教科書「プロのためのわかりやすい中国料理」と、
「月刊専門料理 2018年3月号」に、東京都港区南麻布にある中国料理店「茶禅華」のシェフ、川田 智也さんの料理「脆皮乳鳩(ツイピールゥゴー)」の作り方が載っていたので、これを参考にして作ってみます。
脆皮乳鳩は仔鳩を使用した料理ですが、これを鶏に置き換えて、さらに作りやすいように丸鶏でなく骨付き鶏もも肉で作ってみようと思います。
谢谢!
「脆皮鶏(ツイピーチー)」(鶏の皮パリパリ揚げ)の作り方
今回用意した鶏肉は、クリスマスの時期、よくスーパーに並べられている、ブロイラーの骨付き鶏もも肉です。
鶏もも肉に塩を浸透させる
まずは、鶏もも肉に塩を浸透させます。
鶏もも肉の重量の0.8%の重量の塩をまぶし、吸水シートで挟み、冷蔵庫に24時間置きます。
肉に塩を浸透させる私なりのイメージは、以前の記事「低温調理と向き合う!牛もも肉の最適な加熱温度と時間は?牛もも肉のステーキを作ってみた!」でも述べていますので、もう一度みてみます。
塩をした肉は、塩をした事により浸透圧でドリップが出てきます。ドリップには、悪いイメージがありますが、本来はその食品本来の風味や旨味を含んだ、内部から流出する液汁の事です。先に、肉を殺菌した事は、そのドリップになるべく悪い要素を含ませないように、という目的も含まれています。
肉は、フィルム袋に入れ真空密封する事により、そのドリップに包まれられます。そのドリップには、塩をした事による塩分と、その肉自身の風味や旨味を含んでいるはずです。そのドリップでその肉をマリネするイメージで肉に塩を浸透させていきます。
ただし、やはりそのドリップには肉汁として、その肉の中に留まってて欲しいとの想いは第一としてあるのは事実です。では、前もって塩をせず、焼く直前にだけ塩をすればいいのではないかとなりますが、ある程度の厚切りステーキになると、表面の塩の効いた味と、中側の肉そのものの味との、バランスが気になってしまいます。
そこで、肉に塩を浸透させたいが、ドリップを出したくないという矛盾を補う物として、太白胡麻油を使います。ドリップは水分なので油が周りにあると出ていけないはず、という想いと、さらには、胡麻特有のセサミンによる抗酸化作用、油を入れた事による、真空密封精度の向上も期待できます。油を使ってはいるのですが、肉に油を浸透させる狙いはありません。ドリップが出ることによって、逆に油も肉に浸透出来ないはず、という想いもあります。
私はこのような想いで肉に塩を浸透させているのですが、今回の脆皮鶏(ツイピーチー)という料理は、鶏もも肉の皮をパリパリ(脆皮)に仕上がりやすくするために、鶏もも肉の皮を乾燥させるという工程が入ります。
ですので、ここである程度のドリップは取り除いておきたいという想いがあります。
なので、今回はフィルム袋や太白胡麻油は使用せず、吸水シートで挟み、ドリップを吸い取ってくれることを期待します。
キッチンペーパーについて
ここで吸水シートというものについて考えたいと思います。
吸水シートのように、キッチンペーパー、クッキングペーパー、脱水シートなど、食材のドリップを取り除くような目的のものとして、さまざまなものがあるとおもいます。
これは本当に市場にはさまざまな種類があるので、私もまだ把握しきれていない部分もあるのですが、
私がおもうに、主に3つのタイプに分けることができると思っています。
まず、ひとつ、一般的にキッチンペーパーやクッキングペーパーと呼ばれ、凡庸性がありさまざまな用途に使えるタイプのもの。
次に、先に挙げたタイプのペーパーに、吸水層や水もれ防止シートといったものが付いて、ドリップが食材に戻りにくい構造になっているタイプのもの。
最後に、浸透圧を用いて、食材のドリップを物理的な作用で、より食材の内部の水分まで取り除くタイプのもの。
今回の脆皮鶏(ツイピーチー)という料理は、鶏もも肉の皮をパリパリ(脆皮)に仕上がりやすくするために、鶏もも肉の皮を乾燥させるという工程が入ります。
しかし、鶏もも肉が干物になるまで水分を取り除くのではなく、ある程度の水分を残して、鶏もも肉のジューシーさは残したいという想いがあります。
ですので、今回、食材のドリップを取り除くような目的のものとして、2番目に挙げたタイプの吸水シートを使います。
鶏もも肉を成型する
塩を浸透させ、ドリップをある程度取り除いた鶏もも肉を、肉の部分を覆い隠すように皮でくるみ、竹串で成形します。
鶏もも肉の皮をパリパリに仕上がりやすくするために、鶏もも肉の皮を乾燥させるという工程を行うため、今回用意した鶏もも肉は捌いて肉の部分があらわになっていますので、皮だけを乾燥させ、身の肉の部分はジューシーさを残すように、なるべく肉の部分を乾燥させないように成型します。
成形した鶏もも肉は、沸騰したお湯でサッと湯通しします。
皮をピンッと張らさせること、体表に付いた余分な脂を洗い流すこと、殺菌を目的として湯通しします。
湯通しした鶏もも肉。
鶏もも肉を風干しする
成形し、湯通しした鶏もも肉は、扇風機に当て48時間風干します。
鶏もも肉の皮をパリパリに仕上がりやすくするために、鶏もも肉の皮を乾燥させます。
最適なのは冷蔵庫内で扇風機に当てることですが、それが難しい場合、冬ならば寒い所で扇風機に当て、夏ならばそのまま冷蔵庫に入れ、鶏もも肉の皮を乾燥させます。
48時間風干しした鶏もも肉。
鶏もも肉を飴掛けする
48時間風干しした鶏もも肉を、炸鶏水といわれる、麦芽水飴と米酢を合わせた飴だれを作り、その炸鶏水で飴掛けします。
北京ダックで思い浮かぶ、艶や照りのある、いわゆる飴色をだすために飴掛けします。
水飴と米酢を1:1の重量の割合で合わせ、湯煎して水飴を酢に溶かし、炸鶏水を作ります。
合わせた炸鶏水を鶏もも肉にまんべんなく掛けます。
麦芽水飴について
ここで水飴についてせまりたいと思います。
水飴というと、透明なものも思い浮かびますが、本来は今回用意した「米水飴」のように、蜂蜜に似た琥珀色をしているようです。
水飴についてWikipediaで調べてみると、
https://ja.wikipedia.org/wiki/水飴
古くは、玄米を発芽させ、玄米中の糖化酵素を利用して製造されていた。時代が下ると、発芽玄米より効率の良い麦芽が糖化酵素の供給源として利用されるようになり(麦芽水飴)、現在では、デンプンにシュウ酸を加え、加水分解した酸糖化水あめ、でん粉を酵素により加水分解した酵素水あめも製造されている。 シュウ酸は有毒なうえ酸味があるので、炭酸カルシウムを加えて水に不溶なシュウ酸カルシウムとしたのち、濾過して取り除くく。 酵素糖化水あめはブドウ糖が多く甘みが強い。 還元水飴というものもあるが、これは水飴を加工した糖アルコールを主成分とする甘味料であり、水飴ではない。酸糖化法で製造された水飴は、無色透明でほぼ水分と糖質しか含まないが、麦芽水飴は原料に由来するミネラル分がわずかに含まれ風味を有し、蜂蜜に似た琥珀色をしている。この色が飴色の由来である。発祥については、酒作りのためにデンプンを糖化したものを、有史以前より製造していたと見られており、日本では京都が発祥とする説もあるが、詳しい経緯や場所は今も不明である。
と、あります。
鶏もも肉を再度風干しする
飴掛けした鶏もも肉は、扇風機に当て8時間風干しします。
8時間風干しした鶏もも肉。
鶏もも肉を低温調理する
次に火入れの工程に入ります。
再度風干しした鶏もも肉を低温調理します。
最終的な火入れとして、熱した油を掛けるという工程を行います。
熱した油を掛けるという工程だけでの火入れも可能ですが、この脆皮鶏(ツイピーチー)は皮のパリパリ(脆皮)さに重点を置いた料理なので、皮をパリパリに保つことに注意を払う必要があります。
皮がパリパリということは、皮に水分がないという状態です。
ですので皮に水分をもたらさないということに注意を払えば、皮のパリパリさは保たれるはずです。
その点、熱した油を掛けるという工程だけで火入れを行おうとすると、火入れ加減の調整が難しく、いたずらに火を通してしまうことになりかねず、それが意味することは、肉の内部の肉汁が踊っている状態になり、その肉汁が皮にもたらされ、皮のパリパリさを奪うことになりかねません。
ですので、低温調理で80%ほどの火入れを行い、残りを、熱した油を掛けるという工程で、皮をパリパリに仕上げると同時に肉の内部の火入れを終わらせてしまおうという算段です。
加えて、低温調理の食材の柔らかさと水分を保つというメリットは、乾燥という工程を経ているがなるべくジューシーさも味わいたいという想いがあるこの脆皮鶏(ツイピーチー)に見合った調理法だと思います。
鶏もも肉を低温調理する温度と時間は、以前の記事「低温調理と向き合う!鶏もも肉の最適な加熱温度と時間は?鶏もも肉を低温調理してみました!」を振り返り決めていきます。
低温調理をする際の温度と時間の決め手となるポイントは、タンパク質の成分の変性温度と、食材の安全性を確保する為に、厚生労働省が定めている、食品の規格基準を守ることでした。
それぞれをもう一度みてみると、
陸上生物のタンパク質の成分の変性温度
ミオシン 50℃から変性し始める。
アクチン 66℃から変性し始める。
コラーゲン 40℃から変性し始めるが十分な時間が必要。68℃で短時間ではゴム状になる。70℃以上数時間でゼラチン質になる。
食肉製品の規格基準のうち、特定加熱食肉製品の、製造基準の中で、加熱の温度と時間に関する項目。
その中心部を次の表の第1欄に掲げる温度の区分に応じ、同表の第2欄に掲げる時間加熱し、又はこれと同等以上の効力を有する方法により加熱した食肉を原料食肉として製品を製造する(食肉の温度が 20°を超え 50°未満の状態の時間が 120 分以内である場合に限る。)
第1欄 第2欄
50° 580分
51° 300分
52° 155分
53° 79分
54° 41分
55° 21分
56° 11分
57° 6分
58° 3分
59° 2分
60° 1分
63° 瞬時
と、あります。
これを踏まえた上で、前回鶏もも肉を低温調理した温度は55℃でした。
今回も55℃にあたりを付けて、時間は55℃だと21分以上の加熱が必要なので、その80%程度に収まるような時間で引き揚げたいと思います。
低温調理する為の湯煎器、BONIQ(ボニーク)の設定としては、実際には鶏もも肉の中心温度を測りながら微調整しましたが、今回の鶏もも肉は骨付きなのもあって、BONIQの設定温度の2℃低い温度までしか、鶏もも肉の中心温度は上がりませんでした。
なので設定温度は57℃。
時間は、鶏もも肉の中心温度が54℃に上がるまで30分。
54℃から55℃に上がるまで15分。
ですのでこの時点で、食材の安全性を確保する為の加熱は35%ほど終わっているといえます。
残りの45%を55℃で終えようとすると、鶏もも肉の中心温度が55℃で加熱する時間は10分弱ということになります。
結果的に、BONIQの設定で57℃で55分加熱したことになりました。
ということで、もう一度順を追って説明すると、
まず、風干しした鶏もも肉を鶏もも肉の重量の10%の重量の太白胡麻油をフィルム袋に入れます。
ここでの太白胡麻油の役割は、低温調理した際に、ドリップがでてきた場合にそのドリップという水分から皮を守る役割を期待して入れています。
低温調理という調理法はドリップが出にくいということがひとつのメリットとして挙げられますが、ゼロとは言えないからです。
ポットにお湯を張り、BONIQ(ボニーク)を57℃で55分に設定し、
フィルム袋に入れた鶏もも肉の中心部に温度計を刺し、BONIQをセットしたポットに入れ低温調理します。
低温調理後の鶏もも肉。
鶏もも肉に熱した油を掛ける
最後の工程です。
低温調理した鶏もも肉に熱した油を掛け、皮をパリパリに仕上げると同時に、肉の内部の火入れを終わらせます。
この熱した油を掛ける工程は2回に分けます。
一度揚げただけで仕上げると肉汁が皮にしみ込み、この料理の特徴であるパリッとした皮(脆皮)の歯触りが失われるため、二度揚げにします。
まずは、太白胡麻油を180℃まで熱し、その熱した油を鶏もも肉にお玉で掛けて下揚げしていきます。
最終的な目安として、炸鶏水(飴だれ)を掛けたことによる、こんがりと艶がある飴色になることと、皮がパリパリになったところで油を掛けるのを終えます。
ですので、最初の下揚げでは80%のところ終えて、余計に火が通らないように、すぐに冷えるように冷凍庫で冷やします。
冷えたら、油を200℃まで熱し、その熱した油を鶏もも肉にお玉で掛けて二度揚げしていきます。
最終的な目安までもっていけたら引き揚げ、余計な火入れは最小限に留めるように注意を払います。
余計に火入れをしてしまうと、肉の内部の肉汁が踊っている状態になり、その肉汁が皮にもたらされ、皮のパリパリさを奪うことになりかねません。
甜麺醤(テンメンジャン)を作る
今回、脆皮鶏(ツイピーチー)に付けるたれとして、甜麺醤(テンメンジャン)を添えました。
甜麺醤とはをWikipediaで調べてみると、
https://ja.wikipedia.org/wiki/甜麺醤
小麦粉と塩を混ぜ特殊な麹を加えて醸造された、黒または赤褐色の味噌。甜麺醤とは、甘く(甜)小麦粉(麺)から作った味噌(醤)の意味。
日本で作られている甜麺醤は、八丁味噌に糖類・胡麻油を加えて作られることが多い。
と、あります。
これを自分なりに解釈し、甜麺醤風甘味噌を作ってみました。
材料は、八丁味噌、信州味噌、砂糖、日本酒、味醂、、生姜です。
分量は、重量の割合で、
八丁味噌:信州味噌:砂糖:魚節と昆布のだし:日本酒:生姜=
1:0.25:1.25:1:1:0.05です。
これを、まず、日本酒を鍋に入れ沸騰させ、気化しているアルコールに火を付け、アルコールを飛ばします。
アルコールが飛んだら、魚節と昆布のだしを入れ、次に砂糖を入れ溶かし、さらに八丁味噌、信州味噌も入れ溶かします。
これを、木べらで鍋底が焦げないように絶えず混ぜながら、煮詰めていきます。
ある程度煮詰まり、木べらの混ぜる跡が残るくらいの固さになったら、、すりおろした生姜を加え、さらに元の味噌の固さくらいになるまで煮詰めたら完成です。
仕上げ
器に出来上がった脆皮鶏(ツイピーチー)と、甜麺醤(テンメンジャン)を盛り付けて完成です。
切り分け方として、まな板に皮を下にして包丁で切り分けると、せっかくのこの料理の特徴であるパリッとした皮(脆皮)の歯触りが肉汁によって失われるため、皮を上にして、削ぐように切り分けます。
ですので、北京ダックはお客さんの前で切り分けられるような演出が主流になっているのだと思いました。
美味しそぉ~!
実食
いただきます!
まず見た目に艶、照り、飴色、琥珀色といったどれも魅力的な印象を受けます。
これらは何か気品さを感じられ、元はブロイラーの鶏もも肉で、安価な食材なのですが、それが幾らか高価な食材なのかと勘違いさせられてしまいます。
削ぐように切り分けると、その包丁を入れる時に皮のパリパリ感をすでに味わえてしまいます。
切り分けたものを、まずは何も付けずに口に入れると、上顎の歯でパリッとその皮の歯応えを楽しみ、その後、下顎の歯で肉を噛みいれるとジュルッと肉汁が滲み出し、この脆皮鶏(ツイピーチー)という料理特有の食感を楽しめます。
何も付けないでも、ちゃんと塩を浸透させたことによりほんのりとした塩味と、皮の炸鶏水(飴だれ)によるほのかな甘味で、鶏肉そのものの味を味わえます。
甜麺醤(テンメンジャン)を付けて食べてみると、甜麺醤の甘辛い濃い味と、鶏肉の味を合わせた味は何か中華料理を思い出されました。
甜麺醤はやはり濃い味ですので、薄餅(バオビン)と呼ばれる、小麦粉を薄く延ばして加熱した皮に、ネギとキュウリの細切りしたものを挟んで食べるという北京ダックの食べ方にあった調味料なのだなと思いました。
今回はブロイラーの骨付き鶏もも肉を使いましたので、鶏の皮は正直薄めでした。
ですので、この脆皮鶏(ツイピーチー)という料理はパリパリな皮が醍醐味なので、ブロイラーよりも地鶏といった皮が厚めな鶏の方が、その醍醐味をより味わえると思いました。
ですので、近所のスーパーで売られていた銘柄鶏を用いて、再度、脆皮鶏を作ってみました。
やはり、ブロイラーよりも明らかに皮が厚い鶏でしたので、この脆皮鶏(ツイピーチー)という料理のパリパリな皮という醍醐味をより存分に味わえました。
ごちそうさまでした!
まとめ
今回、クリスマスチキンから、鶏肉という食材と向き合おうと思い、鶏の調理法として前々から気になっていた「北京ダック」という料理と向き合おうと思い、そこから「脆皮鶏(ツイピーチー)」という料理にたどり着き、作ってみました。
「月刊専門料理」という雑誌を毎月読んでいるのですが、この雑誌は、今第一線で活躍されている料理人の方々の料理の作り方や、料理に対する考え方だったりが分かるので、とても参考になります。
この雑誌で、鶏を扱った料理の作り方も、フランス料理、イタリア料理、中国料理、日本料理といったさまざまな料理人の方々の料理の作り方が載っていますが、その味付けはさまざまですが、火入れの方法として、脆皮鶏の工程を取り入れている方々が多いです。
ですので、私もこの「北京ダック」や「脆皮鶏」に興味を持ちました。
このように、〇〇料理だからそのやり方に沿わなくてはならないという考え方は捨て、良い所は△△料理だろうが、□□料理だろうがこだわらずに、貪欲に取り入れていく姿勢が大事なのだなと思い知らされました。
第一線で活躍されている方々の料理や考え方に触れると、自分は焦りや不安といった感情に駆られてしまいます。
「自分はここまでたどり着けられるのだろうか」
「自分はここまで料理に対して真摯に向き合えているのだろうか」
もっとさまざまな、いわゆる負の感情に駆られてしまいます。
ただ、この負の感情が、自分の今の原動力になっていることは間違いありません。
この負の感情から「もっとやらなくちゃ」「もっと頑張らなくちゃ」という想いに至り、自分を突き動かしています。
自分は怠け者なので、現時点で満足したらそこで立ち止まってしまうでしょう。
正直、この考え方では、この先報われることはないかもしれません。
ただ料理の道も終わりはないと思うので、これでいいのかもしれません。
今後も、現状に満足せず、料理に対して真摯に向き合っていきたいと思います。
こうして、いずれ開く店への道のりが、また一歩踏み出されたのです。
24歩目!
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