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【油の研究①】料理に最適な油とは?油の基礎知識を学びます!

油-料理理論の研究



油と料理は切っても切れない関係です。
揚物から炒め物、ドレッシングのように調味料にも使われます。
ヘルシーを求めてノンオイルな料理もありますが、それでも料理に油は欠かせません。

ヒト、生物ににとって油・脂質は、炭水化物、蛋白質と共に三大栄養素と称され、主にエネルギー源や生体機能の調整として利用されています。

全世界での植物油の年間生産量は約1.5億tだそうです。(2010/2011年度)

ひとえに油と言えど、その原材料から様々な種類の油が市場に出回っています。
その中から、料理に最適な油とは、料理によっての油の選び方とは、どのように選べば良いのでしょうか。

まずは、油そのものの事を知らなくては、どう選べば良いのか分かりません。

ですので油の基礎知識を、
Wikipediaや、
一般社団法人植物油協会のサイトや、
一般社団法人植物油協会参与の神村義則さんの著書「食用油油脂入門」。
これらを参考にして油の基礎知識を学びたいと思います。

https://ja.wikipedia.org/wiki/油



その上で記事を分けて別の記事で、理論的に様々な種類の油は何が違うのかを見極め、その違いが料理にどのような違いを生むのかというのを考え、
料理に最適な油、料理によっての油の選び方といったものに、実際に様々な種類の油を飲み比べながら迫りたいと思います。

河野裕輔
河野裕輔

テッカテカやな!



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油脂の基礎知識

油脂とは?

油脂の定義

油という言葉は日常漠然とした意味で使用されています。
そもそもの油の定義は、動物や植物、鉱物等から採取される水と相分離する疎水性の物質です。
常温で液体のものを、常温で固体のものをと使い分ける事もあります。
総称して油脂と呼びます。
栄養学では脂質と呼びます。

脂質はおおまかに単純脂質複合脂質誘導脂質の3種類に分けられます。
単純脂質には中性脂肪(トリアシルグリセロール)、
複合脂質にはリン脂質、糖脂質、
誘導脂質には脂肪酸、コレステロール、脂溶性ビタミン類があります。

油脂は、植物性も動物性も1個のグリセリンに3個の脂肪酸エステル結合したトリアシルグリセロール(トリグリセリド)が基本の化学構造です。

グリセリンとは、アルコールの一種。

エステル結合とは、酸とアルコールの間で水が失われて生成する結合。

トリアシルグリセロールの約95%が脂肪酸です。
この為、脂肪酸の種類、比率、結合の位置等が違う事によりその油の性質に違いが生じます。

また、僅かにトリアシルグリセロール以外に、
グリセリンに脂肪酸が一つしか結合していないモノグリセリド、
二つ結合しているジグリセリドも含まれています。
さらに、天然の油にはその他の脂溶性成分が微量に存在します。



脂肪酸とは?

脂肪酸とは、一般的にカルボキシル基(-COOH)を持つカルボン酸です。
炭素(C)と水素(H)と酸素(O)の3種類の原子で構成され、炭素が鎖状に繋がった一方の端ににカルボキシル基(-COOH)が付いています。
炭素が鎖状に繋がった部分の構造をアルキル基(R)と言い、脂肪酸はRCOOHと表されます。

カルボン酸とは、カルボキシル基を持つ有機酸。
有機酸とは、酸性を示す有機化合物の総称。
有機化合物とは、炭素を含む化合物の総称。
化合物とは、2種類以上の元素が化学結合で結びついた純物質。

アルキル基とは、脂肪族飽和炭化水素から水素原子1個を除いた残りの炭化水素基の総称。
脂肪族炭化水素とは、鎖状構造を有している炭化水素。
炭化水素とは、炭素と水素から成り立っている有機化合物。

脂肪酸は炭素(C)の数や炭素と炭素の繋がり方等の違いにより、脂肪酸の種類や性質が決まります。

脂肪酸はアルキル基の炭素数(C)にカルボキシル基(-COOH)の炭素数1を加えて表し、
炭素数2~4個のものを短鎖脂肪酸(低級脂肪酸)、
炭素数5~12個のものを中鎖脂肪酸
炭素数12個以上のものを高鎖脂肪酸(高級脂肪酸)と呼びます。

また、これとは別に、化学構造上、
アルキル基内に二重結合を持たないものを飽和脂肪酸
二重結合を持つものを不飽和脂肪酸と呼んでいます。


不飽和脂肪酸については、
二重結合が一つの一価不飽和脂肪酸
二重結合が二つ以上の多価不飽和脂肪酸があります。

さらに、二重結合の位置が異なる異性体が存在します。
一般にn-3(エヌマイナス3)、n-6(エヌマイナス6)等で示され、これはカルボキシル基側から数えて3番目あるいは6番目の炭素にアルキル基側の最初の二重結合がある事を示しています。
これらはオメガ3脂肪酸オメガ6脂肪酸とも呼ばれます。
オメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸とオメガ9脂肪酸の一部は、多価不飽和脂肪酸に分けられ、
一価不飽和脂肪酸には、オメガ9脂肪酸の一部が含まれます。

またさらに、不飽和脂肪酸にはトランス脂肪酸と呼ばれるものがあります。
不飽和脂肪酸には、炭素間の二重結合の周りの構造の違いにより、シス型とトランス型の2種類があります。
シスとは、“同じ側の、こちら側に”という意味で、脂肪酸の場合には水素原子(H)が炭素(C)の二重結合を挟んで同じ側に付いている事を表しています。
トランスとは、“横切って、彼方に”という意味で、脂肪酸の場合では水素原子が炭素間の二重結合を挟んでそれぞれ反対側に付いている事を表しています。

シス型
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_wakaru/
トランス型





短鎖脂肪酸とは?

短鎖脂肪酸

脂肪酸の内、炭素数2~4個のもの。
酢酸、プロピオン酸、酪酸等。
酢、バター等に含まれる。
ヒトの大腸において、消化されにくい食物繊維やオリゴ糖を腸内細菌が発酵する事により生成される。
生成された短鎖脂肪酸の大部分は大腸粘膜組織から吸収され、上皮細胞の増殖や粘液の分泌、水やミネラルの吸収の為のエネルギー源として利用される。
また、一部は血流に乗って全身に運ばれ、肝臓や筋肉、腎臓等の組織でエネルギー源や脂肪を合成する材料として利用される。
その他にも短鎖脂肪酸には、腸内を弱酸性の環境にする事で有害な菌の増殖を抑制する、大腸の粘膜を刺激して蠕動運動を促進する、ヒトの免疫反応を制御する等、様々な機能がある事が知られている。



中鎖脂肪酸とは?

中鎖脂肪酸

脂肪酸の内、炭素数5~12個のもの。
カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸等。
ココナッツ、パームフルーツ、母乳、牛乳等に含まれる。
消化液に含まれる消化酵素(リパーゼ)で分解され易く食物中の中鎖脂肪酸は胃の中で殆どが脂肪酸とグリセリンに分解された状態になる。
長鎖脂肪酸と異なり完全に脂肪酸とグリセリンに分解される。
大部分が小腸絨毛の血管から吸収され、門脈を通じて肝臓へと運ばれ、すぐにエネルギー化される。その為体脂肪としても蓄積されにくい。



長鎖脂肪酸とは?

長鎖脂肪酸

脂肪酸の内、炭素数12個以上のもの。
オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸等。
一般的な植物油、動物脂に含まれる。
ゆっくり吸収され、必要に応じて分解される。



飽和脂肪酸とは?

飽和脂肪酸

脂肪酸の内、アルキル基内に二重結合を持たないもの。
動物性の脂に多く、植物性ではココナッツオイル等が含まれる。
原子の結合が強い為状態が安定し、常温で固体のものが多い。
炭素数の増加と共にその融点は上昇する。



不飽和脂肪酸とは?

脂肪酸の内、アルキル基内に二重結合を持つもの。
植物性の脂に多く、動物性では青魚に多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)等が含まれる。
原子の結合が弱い為状態が不安定で、常温で液体のものが多い。



オメガ3脂肪酸とは?

オメガ3脂肪酸

不飽和脂肪酸の内、脂肪酸のアルキル基末端から3番目の炭素に最初の二重結合を持つもので、二重結合が二つ以上の多価不飽和脂肪酸のひとつ。
代表的な脂肪酸としてα-リノレン酸があり、α-リノレン酸は人の体内で作る事が出来ない必須脂肪酸のひとつ。
広義にオメガ3脂肪酸が必須脂肪酸と呼ばれる事がある。
魚油に多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)ドコサヘキサエン酸(DHA)もオメガ3脂肪酸で、ヒトを含めた多くの動物は体内でα-リノレン酸を原料としてEPAやDHAを生産する事が出来るが、α-リノレン酸からEPAやDHAに変換される割合は10-15%程度である。
EPAは血小板凝集抑制作用があり、脂質代謝、血液凝固異常の改善や、認知機能の改善、感染症予防、創傷の治癒促進が報告されている。
DHAは精液や脳、網膜に含まれる脂肪酸の主要成分で、脳内に最も多く存在し、学習機能向上作用、制がん作用、血中脂質低下作用、網膜反射能向上作用、血圧降下作用、抗血栓作用、抗アレルギー作用、抗炎症作用抗糖尿病作用があるとの報告があるが、これら作用の解明は不十分であったと指摘されており、未だメカニズムが解明されていない作用もある。
α-リノレン酸は特に荏胡麻、他に油菜(キャノーラ)、大豆、亜麻仁等に含まれ、その他の食用油には僅かにしか含まれていない。



オメガ6脂肪酸とは?

オメガ6脂肪酸

不飽和脂肪酸の内、脂肪酸のアルキル基末端から6番目の炭素に最初の二重結合を持つもので、二重結合が二つ以上の多価不飽和脂肪酸のひとつ。
代表的な脂肪酸としてリノール酸があり、リノール酸は人の体内で作る事が出来ない必須脂肪酸のひとつ。
広義にオメガ6脂肪酸が必須脂肪酸と呼ばれる事がある。
リノール酸は細胞膜の膜脂質として多く存在し、血中コレステロール値や中性脂肪値を一時的に低下させる作用を持つ。
オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸は代謝酵素が共通し、これらが代謝において競合する為、摂取バランスが重視され、オメガ3脂肪酸に対するオメガ6脂肪酸の比率が増加すると、心血管系疾患、骨粗鬆症、炎症、自己免疫疾患等の様々な病気の発症率が上がる。
リノール酸は紅花油(サンフラワー油)、コーン油、大豆油等、多くの食品に含まれるが、オメガ3脂肪酸の含まれる食品が少ない事が、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の摂取バランスを崩す要因となっている。



オメガ9脂肪酸とは?

オメガ9脂肪酸

不飽和脂肪酸の内、脂肪酸のアルキル基末端から9番目の炭素に最初の二重結合を持つもので、二重結合が一つの一価不飽和脂肪酸や、二重結合が二つ以上の多価不飽和脂肪酸のものがある。
オメガ9脂肪酸は体内で生成出来る。
代表的な脂肪酸としてオレイン酸がある。
オレイン酸はオリーブ油に多く含まれ、オリーブの油から単離された事がその名前の由来である。
このオレイン酸から植物や微生物はリノール酸やα-リノレン酸が生成されるが、ヒトを含めた後生動物はリノール酸やα-リノレン酸を作る酵素が存在しないので、これらは必須脂肪酸となる。
近年はオレイン酸が多く含まれるよう原料が品種改良された紅花油や菜種油が流通している。
さらに、豚の体脂肪であるラードや牛の体脂肪であるヘットにはオレイン酸が全脂肪中50%近く含まれ、母乳には全脂肪中の1/3がオレイン酸で占められている。



トランス脂肪酸とは?

トランス脂肪酸

不飽和脂肪酸の内、炭素間の二重結合の周りの構造がトランス型のもの。
シスとは、“同じ側の、こちら側に”という意味で、脂肪酸の場合には水素原子(H)が炭素(C)の二重結合を挟んで同じ側に付いている事を表す。
トランスとは、“横切って、彼方に”という意味で、脂肪酸の場合では水素原子が炭素間の二重結合を挟んでそれぞれ反対側に付いている事を表す。
液体の植物油や魚油から半固体又は固体の油脂を製造する加工技術の一つである水素添加、これにより不飽和脂肪酸の二重結合の数が減り、飽和脂肪酸の割合が増え、トランス脂肪酸が出来る事がある。
水素添加により作られる油脂にはマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングがある。
また天然には牛や羊等の反芻動物の肉や乳製品の脂肪に含まれる。

トランス脂肪酸は悪玉コレステロールを増加させ心血管疾患のリスクを高めると言われ、2003年に世界保健機関(WHO)、国際連合食糧農業機構(FAO)合同専門委員会よって1日1%未満に控えるとの勧告が発表され、一部の国は法的な含有量の表示義務化、含有量の上限制限を設けた。
日本では製造者が自主的に取り組んでいるのみであるが、その反面、同じように目標値が設定されている飽和脂肪酸の含有量が増加している例が見られる。

食品安全委員会は平成24年(2012年)3月に食品に含まれるトランス脂肪酸の健康影響評価の結果を公表し、この評価では日本人のトランス脂肪酸の平均的な摂取量を平均総エネルギー摂取量の約0.3%と推定しており、「日本人の大多数がエネルギー比1%未満であり、また、健康への影響を評価できるレベルを下回っていることから、通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられる」と結論した。
一方、日本人でも食事から取る脂質の量が多い場合には、トランス脂肪酸を取る量も多くなる事が報告されているが、農林水産省は、健やかな食生活を送る為にはトランス脂肪酸という食品中の一成分だけに着目するのではなく、現状において日本人が取り過ぎの傾向にあり、生活習慣病のリスクを高める事が指摘されている脂質そのものや塩分を控える事を優先すべきと言っている。



コレステロールとは?

コレステロールとは、ステロイドに分類され、その中でもステロールと呼ばれるサブグループに属する有機化合物の一種です。

ステロイドとは、、天然に存在する化合物または合成アナログ。
アナログとは、ある化合物と受容体結合特性等の分子生物学的な性質や構造が類似しているが、ある化合物の原子又は原子団が別の原子又は原子団と置換された組成を持つ別の化合物の事。

ステロールとは、A環の3位にヒドロキシ基(OH基)を持つ誘導体である。

ステロールの骨格 https://ja.wikipedia.org/wiki/ステロール

要は、コレステロールとは、ステロール骨格を持った有機化合物のひとつです。

コレステロールは動物の細胞膜の構成物質です。
細胞膜の構成物質はリン脂質、糖脂質、蛋白質等です。
その他にコレステロールは性ホルモンや副腎皮質ホルモン、胆汁酸の材料となります。

コレステロールが生命維持に必須な役割を果たす物質であるという事実がありながら、一般社会にはむしろ、健康を蝕む物質として認知されていることが多いです。
これは悪玉コレステロールや善玉コレステロールという言葉にも表れています。

2003年の世界保健機関による生活習慣病予防に関する報告書では1日のコレステロールの摂取目標を300mg未満としています。
米国農務省、保健社会福祉省の”Dietary Guidelines for Americans 2010″にも健康な人の場合で300mgとあります。
また、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2010年版)」では、コレステロールの摂取目標量の上限は成人男性で1日当たり750mg、成人女性で600mgとされていました。
しかし、2015年の「アメリカ人のための食生活指針2015-2020年版」及び厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、食事で摂取するコレステロールと血中のコレステロール量との関係性が見い出されないとして、摂取目標量は撤廃されました。
しかし、その後も議論は続いています。



悪玉、善玉コレステロールとは?

そもそもコレステロールは脂質なのでそのままでは水分の多い血液に溶け込む事が出来ません。
そこで血液と馴染み易い蛋白質に包まれて血液中を流れていきます。
この蛋白質に包まれた状態をリポタンパク質と言い、大きさと重さによって4種類に大別しています。

リポタンパク質の軽い順に、
カイロミクロン(カイロマイクロン)、
超低比重リポタンパク質(VLDL)
この二つは主に中性脂肪を運びます。
低比重リポタンパク質LDL)、
高比重リポタンパク質HDL
この二つはコレステロールを主に運びます。

このLDLコレステロールが悪玉コレステロール、
HDLコレステロールが善玉コレステロールと呼ばれています。

LDLコレステロールは肝臓から各細胞にコレステロールを運びます。
HDLコレステロールは全身の細胞から余ったコレステロールを回収し肝臓へ戻ります。
どちらもコレステロールを運ぶ大切な役割を持っていますが
HDLコレステロールは余ったコレステロールを回収する機能があるので善玉コレステロールと呼ばれ、
反対にコレステロールを運ぶのみで回収する機能を持たないLDLコレステロールが悪玉コレステロールと呼ばれるようになりました。
どちらもなくてはならない機能であるのに善、悪という通称が使われるようになった為、また余分なLDLコレステロールが血液中に溜まり、それが酸化すると動脈硬化を促すので良くないイメージがあるのだと考えられます。



油脂の歴史

油脂の食習慣は人類の始まりと同時と考えられます。
なぜなら、狩猟にしろ採取にしろ、食生活を営む事により食料中に含まれる油脂を、炭水化物や蛋白質と共に摂取していたからです。



世界の油脂の歴史

旧石器時代のラスコー洞窟等の遺跡でランプが発見されている事から、食用より灯火として利用されていた事が伺われます。
この他に防寒用として体に塗布したり、皮膚組織の損傷を癒す為に用いられていたようです。

動物性油脂と比較して、抽出がより困難な植物性油脂の利用開始には数々の手法の発明を待つ事になります。
搾油した植物油が利用されたのはオリーブ油あるいは胡麻油が始まりとみられています。

地中海沿岸では5~6千年前にオリーブの栽培が始まったと考えられています。
エジプトではピラミッドに油脂の使用の痕跡が見つかっており、古代エジプト人は水浴後にオリーブ油を身体に塗布し、王ファラオは就任に際して油を注がれる儀式があり、アステカの王は戴冠式前に寺院で油を塗布したとされ、クレオパトラの物語にはオリーブ油がよく登場します。
オリーブ同様に収量も多く搾油が容易なココナッツオイルも数千年の歴史があると推測されています。
胡麻油は中国で5千年の歴史があり、燃やして煤から墨を作ったという事が記されています。

油は英語でOilですが、その語源はラテン語の油及びオリーブ油を意味するoleumとギリシャ語でオリーブの木を意味するelaionです。
多くのヨーロッパの言語で油はオリーブ由来のolで始まる単語です。



日本の油脂の歴史

日本でも同様に最初に使われ始めたのは分離が簡単な魚や獣からの動物性油脂であると考えられます。
植物油に関しては縄文時代晩期にアフリカ原産の胡麻が日本に伝わりました。

・古墳時代
日本書紀にハシバミから油を抽出したとの記述があり、3-4世紀頃には植物油の利用は始まっていました。

・飛鳥時代
荏胡麻油が税として徴収されていました。

・奈良時代
胡麻の搾油技術が伝来してきて、正倉院文書には油が商品として市場に流通していた事が記されていました。

・平安時代
搾油機が発明されより大量の植物油が供給されるようになり、京都を中心に植物油を使った加工食品や胡麻油を使った炊き込みご飯が現れ、油の食品としての地位が確立されてきました。
商業的搾油の先駆として京都府の大山崎にある離宮八幡で搾油が始まったのもこの頃で、これが後に油座と言われる油製造販売の独占権を持った組織に発展します。

・鎌倉時代
油料理が普及する一方、灯火以外に唐傘、油紙、提灯等、塗料としての用途が開発されました。
しかし、当時は食用に利用出来るのは富裕層に限られ、  庶民において植物油は食用はもちろん燈火用にも高価であり、魚油や鯨油等が使われていました。

・江戸時代
搾油器が進歩し、菜種油や色が黒く下等だった綿実油から品質の良い食用油が作れるようになり、用途と共に原料の多様化が進み、庶民による植物油の利用が広まっていきました。
かつて隆盛を極めた大山崎等の油座の特権が廃り大阪の油問屋の手に移りました。

漢字の油の起源はさんずいの液体と底の深い酒壺の象形文字である「由」の会意形成文字で壺からゆったり出る液体つまり油を意味しています。
大和言葉である「あぶら」は、獣肉を炙ると出るので「あぶら」、溢れてくるので「あふれ」から「あぶら」となったとの説があり、日本の場合は油(あぶら)は動物起源のようです。



油脂の採油方法

採油とは動植物から油脂を取り出す事。
植物から油脂を取り出す事は搾油とも言います。

乳脂を別にすれば、動植物から油脂を取り出す方法は大別して3つあります。

  1. 熱をかけて溶かし出す(湿式融出法)(乾式融出法
  2. 圧力をかけて搾り出す(圧搾法
  3. 溶剤を加えて溶かし出す(溶媒抽出法

1の方法は動物油脂の場合有効ですが、植物の場合には難しく、2の方法を採らなければなりません。
しかし大豆のように含油量の少ないものは3の方法が必要になります。
また2の方法も搾りかすにかなりの油分が残るので、これを回収する為にも3の方法を併用する必要があります。



植物からの採油方法

1、原料受け入れ
原料は穀物専用船によって世界各国から日本に運ばれ、船から直接吸い上げられ、工場に隣接した原料サイロに蓄えられます。

2、精選
原料に含まれている夾雑物(茎や葉等)を取り除きます。

3、前処理
原料を加熱したり、破砕、圧扁します。
細胞膜の蛋白質を変性させて、油脂を細胞の外に出易くする為です。

4、搾取
原料から油脂を取り出す方法は3つあります。

圧搾法

原料にスクリュー式プレス機で圧力を掛ける事で、物理的に搾油します。
紅花、胡麻、カカオ豆等、油分の多い原料に用いられています。

溶媒抽出法

油分の比較的少ない大豆等に行います。
まずはこれを除皮した後プレスしてフレーク状にし、さらに乾燥させてから溶剤(ヘキサン(有機溶媒の一種)(食品添加物))を加え、原料中の油分を溶剤に移行させます。
これを連続的に行い、油脂の溶けた溶剤を蒸留装置で揮発性の溶剤と油分とに分けて、油を採ります。
これによって、原料残油は1%未満になります。
フレークを乾燥させるのは、油分抽出後の脱脂大豆が優れた蛋白資源として飼料や食品の原料となるので、蛋白質が採油工程で変質しないようにする為です。
またヘキサンのような比較的沸点の低い溶剤を使うのも、溶剤回収の時の加熱による蛋白質の変性をできるだけ少なくする為の配慮です。

圧抽法(圧搾法+溶媒抽出法)

圧搾では原料残油が10~20%あり、この残りを採油する為に抽出法を併用します。
菜種等の油分の多い原料はこの方法で搾油します。

5、精製
搾油した粗油を濾過したり、製品の使用目的に合わせて精製過程を追加します。

・脱ガム
原油に温水を加えて、リン脂質を水和させ、遠心分離機に掛けて油と分離し、取り除きます。
取り除いたリン脂質はその性状からガム質と呼ばれ、このガム質からレシチンを取り出します。

・脱酸
原油中に含まれる遊離脂肪酸を苛性ソーダを使って石鹸にし、遠心分離機によって取り除きます。
この工程で微量金属や色素の一部も除去されます。

・脱色
油に天然の白土を加工した活性白土を加え、クロロフィルやカロチノイド系の色素を吸着させて脱色します。
色素類を吸着させた白土は、濾過によって除去します。

・脱蝋(ウィンタリング)
紅花油や玉蜀黍油など、蝋分が多い油に行います。
油を冷却し、低温で固まる蝋分を析出させた後、濾過によってこれを除去します。

・精密濾過
脱酸・脱色を終えた油に、高温・真空の状態で水蒸気を吹き込み、有臭成分を除去します。
この工程での副産物がトコフェロール(ビタミンE)です。

6、検査、充填、包装
精製された植物油は、厳しい品質検査と商品テストののち、容器に充填・包装され、製品となります。





動物からの採油方法

牛脂、豚脂、魚油といった動物油脂は、一般に融出法で採油されます。

日本の魚油の大部分は鰯等の小型魚から得られますが、昔からこれらは魚全体を平鍋で海水と共に20~60分煮沸し、浮いてくる油を分別して採取しています。
このような方法を湿式融出法または湿式法と言います。

これに対して牛や豚は、脂身の部分を分別し、細断した後に平鍋に入れて加熱するか、クッカーに投入して水蒸気で間接加熱して油を融出させます。
温度は120~130℃、時間は1~2時間が標準です。
脂身の組成は通常油分70%、水分20%、繊維質10%程度で、水分は加熱により蒸発します。
この方法を乾式融出法または乾式法と言います。

かつて牛脂、豚脂は乾式法で融出していましたが、この方法では得られた油脂の着色が著しく、また空気酸化による油の品質劣化の程度が大きい為、近年では湿式法で行われるようになってきています。
この方法によれば、油脂の採取は高くても90℃程度の温度で、しかも比較的短時間の処理である為、高品質のものが高収率で得られる為です。



油脂の種類

油脂の分類には原料による分類、用途による分類、成分による分類等、様々な分類方法があります。
ここでは、主に食用油を挙げていきます。



植物性の油脂

菜種油

菜種油

・原料:セイヨウアブラナの種子。
・原料油分:38~44%。
・主産地:EU諸国、中国、カナダ、オーストラリア等。
従来の菜種はエルカ酸が40~50%含まれていたが、栄養的な問題があるとされた為、エルカ酸をほとんど含まないキャーノーラ種が開発された。
カナダで開発された為この名前が付けられた。
したがって、菜種油とキャノーラ油は厳密には同じものではない。
脂肪酸組成はオレイン酸が多く、近年では60%を超えるものが多い。
さらに酸化安定性や栄養面等の観点から品種改良により、オレイン酸を75%迄高めたハイオレイックタイプやリノレン酸を2%迄低減させたローリノレニックタイプもある。
日本では食用油の全生産量の6割を占める。
原料菜種を焙煎して搾油し植物灰で処理したものを「赤水(あかみず)」「赤湯(あかゆ)」と称する。
それに対し、精製し白い(無色透明)ものは「白絞油」と称する。



大豆油

大豆油

・原料:大豆の種子。
・原料油分:16~22%。
・主産地:アメリカ、ブラジル、アルゼンチン、中国等。
・脂肪酸組成:リノール酸(48~59%)を多く含む。
日本では食用油の全生産量の4割を占める。
搾油時に発生する脱脂大豆は飼料原料等幅広い用途に利用される。



玉蜀黍油

玉蜀黍油(コーンオイル)

・原料:玉蜀黍の胚芽。
・原料油分:40~55%。
・主産地:アメリカ、中国、EU諸国、ブラジル等。
・脂肪酸組成:リノール酸(34~66%)、オレイン酸(20~43%)等。
ビタミンEが多く、光酸化の原因となるクロロフィルが含まれない為、酸化安定性に優れる。



紅花油

紅花油(サフラワーオイル)

・原料:紅花の種子。
・原料油分:25~45%。
・主産地:インド、アメリカ、メキシコ、アルゼンチン等。
・脂肪酸組成:リノール酸(67~84%)を多く含むハイリノレイックタイプと、オレイン酸(70~84%)を多く含むハイオレイックタイプがある。
抗酸化作用を持つビタミンEが豊富。
日本には1958年にサラダ油として販売が始まり、当時日本には紅花に対する関税の規定がなく、価格面で大豆油と対抗できた。
1957年にオレイン酸を主成分とする紅花の変種が発見され、後に品種改良によりハイオレイックタイプとして生産されるようになった。



向日葵油

向日葵油(サンフラワーオイル)

・原料:向日葵の種子。
・原料油分:28~47%。
・主産地:EU諸国、ロシア、ウクライナ、アルゼンチン等。
・脂肪酸組成:リノール酸(48~74%)を多く含む。品種改良によりハイオレイックタイプ(オレイン酸75~91%)もある。
抗酸化作用を持つビタミンEが豊富。



綿実油

綿実油

・原料:綿花の種子。
・原料油分:15~25%。
・主産地:中国、インド、パキスタン、アメリカ等。
・脂肪酸組成:パルミチン酸(21~27%)、オレイン酸(14~22%)、リノール酸(46~59%)等。
日本国内では唯一、大阪府柏原市の岡村製油が製造・販売をしている。



胡麻油

胡麻油

・原料:胡麻の種子。
・原料油分:44~54%。
・主産地:インド、ミャンマー、中国、スーダン等。
・脂肪酸組成:オレイン酸(35~43%)、リノール酸(39~48%)等。
非常に高い酸化安定性を示すが、これは胡麻特有のセサミンを含む事に起因すると言われている。
焙煎の強弱で風味が変化し、様々な使い分けが出来る。
黒胡麻は白胡麻と比べて油分が少なく外皮が硬い為、胡麻油の原料とする事は一般的でないが、黒胡麻から抽出した胡麻油も存在し、白胡麻のものと比べて香味が強いのが特徴で、黒絞り(くろしぼり)と呼ばれるが、種子の外皮の色は油の色に影響を与えないので、白胡麻のものと同様に焙煎の強弱に応じた色をしている。
日本では普及品でも圧搾法で搾油されている。



米油

米油

・原料:米糠。
・原料油分:15~21%。
・主産地:日本。
・脂肪酸組成:オレイン酸(38~46%)、リノール酸(33~40%)等。
米糠には油脂分解酵素のリパーゼが多く含まれている為、原油中の遊離脂肪酸量が多く酸価が極めて高い事や、原油に蝋分が多く含まれている事等から、他の植物油より手間が掛かり独自の技術や装置が必要となる。
抗酸化作用を持つγ-オリザノールやビタミンE等を多く含み、その酸化安定性の高さから、米油が製菓業界で歓迎される理由となっており、現在日本で製造されるポテトチップスのほぼ全量が、米油か米油を配合した油で揚げられている。
揚げ物をしている人が気分を悪くする現象を「油酔い」と呼ぶが、これは油脂を過熱する際に発生するアクロレインという物質の作用であると言われ、米油はこの油酔い現象が起きにくい油とされている。



オリーブ油

オリーブ油

・原料:オリーブの果実。
・原料油分:40~60%。
・主産地:スペイン、イタリア、ギリシャ等。
・脂肪酸組成:オレイン酸(55~83%)を多く含む。
オリーブオイルは生の果肉から非加熱で果汁を絞って放置しておくだけで、自然に果汁の表面に浮かび上がり、これを遠心分離機に掛け採油する。
風味官能検査や酸度で国際オリーブ理事会の定めた品質等級規格に分けられる。
果汁を絞った絞りかすから再度遠心分離機や石油系有機溶剤を使って抽出したオイルを粗製オリーブポーマスオイルと呼ぶ。
オリーブポーマスオイルは成分が異なるため、国際オリーブ理事会(IOC)の規定により「オリーブオイル」と表示してはいけないと定められており、食用ではなく工業用として扱われている。
但し、オリーブポマースオイルを精製し、酸度を 0.3% 以下にした精製オリーブポマースオイルは、その国の基準(日本であればJAS法)をクリアしていれば、食用としての販売は可能である(その代わり、容器には「ポマース」と明確に表記しなければならない)。
オリーブの種子から溶剤抽出によって得られた油をオリーブ核油と呼んでいる。
育苗、栽培、製造方法の技術の発達により、ワインと同じように、アメリカやオーストラリア等の新世界や日本でも生産され、風土、苗、製造方法、生産者の嗜好等により、色や味に個性が出る。

品質等級酸度(%)等級規格精度 (mg/kg)
エクストラ・ヴァージンオリーブオイル≦ 0.8ヴァージンオリーブオイルのうち風味官能検査で味や香りに欠陥がひとつもないもの≦ 250
ヴァージンオリーブオイル≦ 2.0ヴァージンオリーブオイルのうち風味官能検査で味や香りに若干の欠陥があるもの≦ 250
オーディナリー・ヴァージンオリーブオイル≦ 3.3ヴァージンオリーブオイルのうち風味官能検査で味や香りに複数の欠陥があるもの(日本では非食用)≦ 300
ランパンテ・ヴァージンオリーブオイル> 3.3ヴァージンオリーブオイルのうち酸度が高く食用には不向きで、精製が必要なもの(非食用)≦ 300
精製オリーブオイル≦ 0.3ヴァージンオリーブオイルを精製したもの≦ 350
(ピュア)オリーブオイル≦ 1.0精製オリーブオイルとヴァージンオリーブオイルをブレンドしたもの≦ 350
精製オリーブポマースオイル≦ 0.3精製オリーブオイルの絞りかす(ポマース)からさらに抽出したもの> 350
オリーブポマースオイル≦ 1.0精製オリーブポマースオイルにヴァージンオリーブオイルをブレンドしたもの> 350




落花生油

落花生油(ピーナッツオイル)

・原料:落花生の種子。
・原料油分:41~56%。
・主産地:中国、インド、ナイジェリア、アメリカ等。
・脂肪酸組成:オレイン酸(37~50%)、リノール酸(31~42%)等。
抗酸化作用を持つビタミンEが豊富。
長鎖飽和脂肪酸のべヘン酸、リグノセリン酸を含有してる事、飽和脂肪酸が多い事で融点が高く、温度が下がると白濁や沈殿を起こす。



葡萄油

葡萄油(グレープシードオイル)

・原料:葡萄の種子。
・原料油分:7~21%。
・主産地:EU諸国等。
・脂肪酸組成:オレイン酸(12~28%)、リノール酸(58~78%)等。



荏胡麻油

荏胡麻油

・原料:荏胡麻の種子。
・原料油分:40~49%。
・主産地:中国、インド等。
・脂肪酸組成:α-リノレン酸(60~65%)を多く含む。
乾性油なので防水性を持たせる塗料として油紙、番傘、油団等に用いられてきた。
鎌倉時代に不乾性油の菜種油が普及する迄は日本で植物油と言えば荏胡麻油であった。
1990年代後半以降、荏胡麻油が人体に不可欠な必須脂肪酸であるα-リノレン酸を他の食用油に比べ類を見ないほど豊富に含んでいる事から、健康に良い成分を持つことが注目され、再び日本の食品市場に現れるようになった。



パーム油

パーム油

・原料:アブラヤシの果肉。
・原料油分:45~50%。
・主産地:インドネシア、マレーシア等。
・脂肪酸組成:パルミチン酸(39~48%)、オレイン酸(36~44%)等。
融点が高く常温で固体。
パーム油のオレンジ色はβカロテンによるもの。
世界で最も多く生産されている。



パーム核油

パーム核油

・原料:アブラヤシの種子。
・原料油分:44~53%。
・主産地:インドネシア、マレーシア等。
・脂肪酸組成:ラウリン酸(45~55%)、ミリスチン酸(14~18%)等。
椰子油(ココナッツオイル)と脂肪酸組成が似ている。
融点が高く常温では固体。



椰子油

椰子油(ココナッツオイル)

・原料:ココヤシの胚乳。
・原料油分:65~75%。
・主産地:フィリピン、インドネシア、インド等。
・脂肪酸組成:ラウリン酸(45~54%)、ミリスチン酸(16~21%)等。
ココヤシ果実の種子にあたる核果の中の胚乳を乾燥したもの(コプラと呼ばれる)から採油される。
融点が高く常温で固体。



その他の植物性油脂

この他にも、亜麻仁油、麻油(ヘンプシードオイル)、アルガンオイル、、椿油等、様々な植物油が市場に出回っています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/植物油の一覧



動物性の油脂

牛脂

牛脂(ヘット)(英語:タロー)

・脂肪酸組成:パルミチン酸(28~34%)、ステアリン酸(14~27%)、オレイン酸(33~43%)の他、ミリスチン酸、リノール酸等。
融点は35℃~55℃。
植物油と違い天然の抗酸化成分を殆ど含まない為、酸化安定性はあまり良くない。
語源となったとされるドイツ語のFettおよびオランダ語のvetは獣脂一般を指すが、日本では牛脂に限られている。
スーパー等ですき焼き用やステーキ用の肉を買い求める客に対し渡す牛の脂身は、「ヘット」と言わず、専門用語で「ケンネ」又は「スエット(腰の腎臓付近の油)」と呼ばれる。



豚脂

豚脂(ラード)

・脂肪酸組成:パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸の他、ミリスチン酸、パルミトオレイン酸、リノール酸等であるが、その性状は品種、部位、飼養日齢等によって異なる。
融点は27℃~40℃。



魚油

魚油

鰯油、鯖油、秋刀魚油等の他に、鱈肝油、鮫肝油等の肝油がある。
エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)が含まれ、肝油にはビタミンA、ビタミンDが含まれる。
これら長鎖多価不飽和脂肪酸を多く含む為、酸化安定性は非常に悪い。



その他の動物性油脂

この他にも、鶏油、シュマルツ(家禽の脂肪を精製したもの)、バター、ギ―等、様々な動物性油脂が市場に出回っています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/油脂



油脂の加工品

マーガリン

マーガリン

マーガリンは精製した油脂に発酵乳、食塩、ビタミン類等を加えて乳化し練り合わせた加工食品で、その製造過程において水素を分子に付加して常温で固体にしている。
バターとの大きな違いは、バターの主原料は牛乳だがマーガリンの主原料は植物性、動物性の油脂である。
日本ではJAS規格により、「マーガリン類」の中で油脂含有率が80%以上のものがマーガリン、80%未満がファットスプレッドと分類されている。
名称としてのマーガリンは、1813年にフランスの化学者であるミシェル=ウジェーヌ・シュヴルールが、動物性脂肪の研究からマルガリン酸を発見した事に遡る。
マルガリン(又はマーガリン)という言葉はギリシャ語のmargarite(真珠の意)に由来しており、真珠のように美しく輝くという性質を表現したものである。



ショートニング

ショートニング

ショートニングは、主として植物油を原料とした常温で半固形状(クリーム状)の、食用油脂である。
マーガリンから水分と添加物を除いて純度の高い油脂にしたものと考えてよい。
液状の植物油を固形状にする為、水素添加を行い不飽和脂肪酸の二重結合部分を飽和させる事で工業的に生産される。
もともとは、ラードの代用品として考えられた製品である。
無味無臭で、製菓に使用するとさっくりと焼き上がったり、揚げ油に使用すると衣がパリッと仕上がる為、この「さっくり」や「パリッ」という食感を表す意味での英語形容詞「short」が語源である。



油脂にまつわる疑問

マーガリンやショートニングは体に悪い?

マーガリンやファットスプレッド、ショートニングは、何故体に悪いと言われているのでしょうか。

それは、人工的に作られた物という事と、トランス脂肪酸が含まれている為と言われています。

トランス脂肪酸の事は先程学びましたので、ここでもう一度見てみます。

トランス脂肪酸

不飽和脂肪酸の内、炭素間の二重結合の周りの構造がトランス型のもの。
シスとは、“同じ側の、こちら側に”という意味で、脂肪酸の場合には水素原子(H)が炭素(C)の二重結合を挟んで同じ側に付いている事を表す。
トランスとは、“横切って、彼方に”という意味で、脂肪酸の場合では水素原子が炭素間の二重結合を挟んでそれぞれ反対側に付いている事を表す。


液体の植物油や魚油から半固体又は固体の油脂を製造する加工技術の一つである水素添加、これにより不飽和脂肪酸の二重結合の数が減り、飽和脂肪酸の割合が増え、トランス脂肪酸が出来る事がある。
水素添加により作られる油脂にはマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングがある。
また天然には牛や羊等の反芻動物の肉や乳製品の脂肪に含まれる。

トランス脂肪酸は悪玉コレステロールを増加させ心血管疾患のリスクを高めると言われ、2003年に世界保健機関(WHO)、国際連合食糧農業機構(FAO)合同専門委員会よって1日1%未満に控えるとの勧告が発表され、一部の国は法的な含有量の表示義務化、含有量の上限制限を設けた。
日本では製造者が自主的に取り組んでいるのみであるが、その反面、同じように目標値が設定されている飽和脂肪酸の含有量が増加している例が見られる。

食品安全委員会は平成24年(2012年)3月に食品に含まれるトランス脂肪酸の健康影響評価の結果を公表し、この評価では日本人のトランス脂肪酸の平均的な摂取量を平均総エネルギー摂取量の約0.3%と推定しており、「日本人の大多数がエネルギー比1%未満であり、また、健康への影響を評価できるレベルを下回っていることから、通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられる」と結論した。
一方、日本人でも食事から取る脂質の量が多い場合には、トランス脂肪酸を取る量も多くなる事が報告されているが、農林水産省は、健やかな食生活を送る為にはトランス脂肪酸という食品中の一成分だけに着目するのではなく、現状において日本人が取り過ぎの傾向にあり、生活習慣病のリスクを高める事が指摘されている脂質そのものや塩分を控える事を優先すべきと言っている。

農林水産省は、マーガリンやファットスプレッド、ショートニングだけ悪いと捉えるのでなく、バター等の脂質そのものを控える事を優先すべきと言っており、マーガリンやファットスプレッド、ショートニングは体に悪いものとして特に販売を禁止してもいません。
しかも、最近ではトランス脂肪酸が含まれていないマーガリンやショートニングも流通されており、体に悪いという根拠が無くなってしまいました。
しかし、人工的に作られたものという事実はありますので、このマーガリンやファットスプレッド、ショートニングは体に悪いものというイメージが無くなる事は難しいかもしれません。



サラダ油とは?

スーパー等で良く並べられているサラダ油とはどんな油なのでしょうか。

サラダ油とは、日本のオリジナルの油で、1924年に日清オイリオが「日清サラダ油」を発売したことがサラダ油の始まりです。
その頃、欧米ではオイルを使ったドレッシングで生野菜を食べていましたが、日本ではまだそういった習慣がなかった為、、生野菜に合う油を開発し、サラダ油として販売したというのが経緯だそうです。
お煎餅やスナックにもサラダ味が存在しますが、このサラダはサラダ油を意味しており、味自体は塩味で、サラダ油を塗り、塩味を付けている事から、昔は高級品であったサラダ油の「サラダ」という名前を使ったそうです。

サラダ油は日本農林規格(JAS)により規格が定められており、その基準を満たした原材料を用い、尚且つJAS認定工場で製造されたものでなければ「サラダ油」を名乗ることは出来ません。





DHAを摂ると頭がよくなる?

巷では、DHA(ドコサヘキサエン酸)を摂ると頭が良くなるという事が言われていました。

DHAは魚油に含まれており、特に鯖、鰯、秋刀魚等の青魚に多く含まれる為、これらの摂取が推奨されてきました。
これは、DHAが脳に蓄積され神経系の役割を担っている事から言われているようですが、この因果関係は不十分であったと指摘されており、未だにメカニズムは解明されていません。
事実、日本の中でも漁村に住む人の方が農村に住む人より頭が良いという話もありません。



料理における油脂の機能と役割

料理に油脂を使う事によって様々な効果を得る事が出来ます。

料理における油脂の機能と役割

・美味しさ、風味、コク
油自体に明確な味のあるものもは、その料理に原料特有の風味を生じさせる。
精製した油では、油の種類による差を区別する事は極めて困難だが、コクを生み出す要素として、糖、脂肪、うま味の3要素が挙げられる事から、精製した油もコクを生み出しているという点で美味しさの一因を担っていると言える。

・高温での加熱
煮るという調理法では水の沸点以上の高温にする事は出来ないが、油を使う事によって100℃以上での調理が可能となる。

・油溶性物質の溶解
油はもともとビタミンE等の油溶性ビタミンを含んでおり、リノール酸等の必須脂肪酸を含めて、油を食べる事は健康上欠かす事が出来ない。
さらに、食材に含まれる油溶性ビタミンやビタミンAの前駆物質であるβカロテンは油の存在により吸収が向上する。

・調理
炒める、揚げる、和える、香り付け等。
製菓、製パンでは、練り込む、離型、艶出し等。



動物における油脂の機能と役割

油脂は、ヒトを含む動物の生命維持活動に欠かせない役割を持っています。

動物における油脂の機能と役割

・エネルギー源となる
私たち動物は生命を維持し活動していく為に栄養成分を身体に取り入れている。
栄養成分には、三大栄養素と言われる炭水化物(糖質)、蛋白質、脂質と、その他にビタミン、ミネラルを含めた五大栄養素がある。
この内で、熱量・カロリー・エネルギーを供給出来るものは三大栄養素で、糖質、蛋白質がそれぞれ1g当たり4㎉であるのに対し、脂質は9㎉を供給出来る。

・生体膜の材料となる
生体膜とは、細胞等と外界との境界の膜の事で、この主成分は蛋白質と脂質で出来ている。

・必須脂肪酸の供給
各種脂肪酸の内、オメガ3脂肪酸のα-リノレン酸と、オメガ6脂肪酸のリノール酸は人の体内で作る事が出来ない必須脂肪である。
オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪共に充足されている事が必要であるが、バランスが重要である。

・生理活性物質の供給
脂質の栄養成分は脂肪酸の他に、ビタミンE、カロテノイド、リグナン、植物ステロール、オリザノール等、脂溶性の微量成分がある。
また、ビタミンA、D、K等、脂溶性ビタミンの体内への吸収を高める働きもある。




まとめ

今回、料理に欠かせない油と向き合い、その原料、製造方法等により様々な種類の油が市場に出回っている中から、料理に最適な油、料理によっての油の選び方を確立すべく、油の基礎知識をを学びました。

油と向き合おうと思ったのも、スーパーに並べられている油を見て、オメガ何とか酸だったりとか、必須何とか酸だったりとか、カタカタの何とか酸だったりとか、兎に角難しい単語が書いてあり、それにより健康ですというように謳っている商品が多く、この何とか酸というものはどういうものなのか分からないという訳にはいかないとの想いから、向き合いました。
調べてみると、やはりとても難しく、栄養学だったり、化学だったり、生物学だったりという知識が必要のように感じました。
今回、油脂の事を学んだ事で、ある程度の事は理解出来たつもりですが、それでも突っ込まれるとまだまだ理解しきれていない部分もあるように思います。
今後も、知識を深め、油脂に対してより迫れることが出来た時は随時更新していきたいと思います。

次回の記事では、今回学んだ油の基礎知識を踏まえながら、実際に様々な油脂を用意し食べ比べながら、科学的に理論的に、料理に最適な油、料理によっての油の選び方を確立していきたいと思います。

河野裕輔
河野裕輔

油を売らない!

第32回 かわののブログ

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