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【油の研究②】料理に最適な油とは?油の味比べをします!

油-料理理論の研究



油と料理は切っても切れない関係です。
揚物から炒め物、ドレッシングのように調味料にも使われます。
ヘルシーを求めてノンオイルな料理もありますが、それでも料理に油は欠かせません。

ヒト、生物ににとって油・脂質は、炭水化物、蛋白質と共に三大栄養素と称され、主にエネルギー源や生体機能の調整として利用されています。

全世界での植物油の年間生産量は約1.5億tだそうです。(2010/2011年度)

ひとえに油と言えど、その原材料から様々な種類の油が市場に出回っています。
その中から、料理に最適な油とは、料理によっての油の選び方とは、どのように選べば良いのでしょうか。

まずは、油そのものの事を知らなくては、どう選べば良いのか分かりません。

という事で、前回の記事で、油の基礎知識を学びました。

今回は、前回の記事で学んだ油の基礎知識を活かし、理論的に様々な種類の油は何が違うのかを見極め、その違いが料理にどのような違いを生むのかというのを考え、
料理に最適な油、料理によっての油の選び方といったものに、実際に様々な種類の油を飲み比べながら迫りたいと思います。

河野裕輔
河野裕輔

油ギッシュ!



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油脂の選び方の理論

まずは、これ迄に学んだ油脂の基礎知識を基に、様々な種類の油脂は何が違うのかの見極めと、その違いが料理にどのような違いを生むのか、というのを考えます。

これは、以前の記事、【塩の研究②】料理に最適な塩とは?塩を食べ比べてみました!で学んだ、塩の選び方の理論と重なる部分があると思います。

こちらの記事で塩は、

塩の品質は粒度、粒度分布、粒形、嵩密度等の物理的性質化学組成によって分けられます。

と学びました。

これは油脂にも同じ事が言えると思いますが、油脂の物理的性質と言うと、粒度や粒形等は当て嵌らず、油脂の物理的性質の違いと言うと、液体か固体かの違いになると思います。

ですので、塩の選び方の理論を、油脂に置き換えますと、

油脂の品質は液体、個体等の物理的性質化学組成によって分けられます。

と言えると思います。



油脂の物理的性質が油脂の品質に及ぼす影響

ある物の物理的性質がある物の品質・性質・特徴に及ぼす影響について、塩や砂糖の場合に置いて纏めたもの見てみます。

塩、砂糖の物理的性質が砂糖の品質に及ぼす影響

・小さい粒
溶け易い。付着性が高い。味の余韻が短い。口の中でスッと溶ける。

・大きい粒
溶け難い。付着性が低い。味の余韻が長い。カチッと歯応えがある。

しかし、油脂の場合、物理的性質の違いは液体か固体かの違いになりますので、これがそのまま当て嵌りません。
ただ、似たような違いを見せると考えられます。

パンを食べる時の事を考えると、液体であるオリーブオイルを付けて食べる時と、固体であるバターを付けて食べる時に、液体であるオリーブオイルより、固体であるバターの方が口の中で溶ける時間が必要な分、味の余韻が長い等、油脂としての物理的性質の違いが味に及ぼす影響があると考えられます。

これを纏めてみます。

油脂の物理的性質が油の品質に及ぼす影響

・液体
浸透し易い。味の余韻が短い。

・固体
浸透し難い。味の余韻が長い。



油脂の化学組成が油脂の品質に及ぼす影響

油脂の化学組成が油脂の品質・性質・特徴に及ぼす影響について、まず、油脂の原料が違えばその油脂の化学組成が違ってきますので、油脂の品質に大きく影響を及ぼすと考えられます。

代表的な油脂の原料として、菜種、大豆、玉蜀黍、紅花、向日葵、綿実、胡麻、米、オリーブ、落花生、葡萄、荏胡麻、パーム、椰子、亜麻仁、牛、豚、魚等が挙げられます。

これらの原材料から油脂を取り出す方法は大別して3つあります。

油脂の採油方法

  1. 熱をかけて溶かし出す(湿式融出法)(乾式融出法
  2. 圧力をかけて搾り出す(圧搾法
  3. 溶剤を加えて溶かし出す(溶媒抽出法

この中で、湿式融出法圧搾法で採油された油脂は、湿式融出法は乾式融出法に比べ低温短時間加熱である事、圧搾法は原材料に溶剤を加えたりしない事等から、原材料の特徴が現れ易い採油方法だと考えられます。



これらの原材料の油脂の成分、栄養成分、化学組成といったものは、文部科学省のサイトで、「日本食品標準成分表」として公表されています。
油脂は、「油脂類」に公表されています。
さらに、「脂肪酸成分表編」として脂肪酸別にも知る事が出来るのでこれらを見てみます。


全ての油脂の主な成分は脂質で、100g当たり100gを脂質が占めています。
バターやマーガリンは、100g当たり80g前後が脂質となっていますが、その他の成分は水分となっています。
脂質以外の成分というと、バターやマーガリンにはミネラルが多少含まれていますが、その他の油脂では、ビタミンが極僅かに含まれているだけです。

脂肪酸成分表を見てみると、やはり脂肪酸別では違いが出てきます。
しかし、脂肪酸の違いが油脂の品質にどのような影響を及ぼすのかというのは分かりません。
ただ、原材料の違う油脂は、化学的にもはっきりと違う物という事は言えると思います。

油脂の化学組成が油脂の品質に及ぼす影響というのは、原材料の違う油脂は化学的にも違う物という事以外は迫り切れませんでした。



油脂の選び方の理論のまとめ

では、これ迄の考察を纏め、料理によっての油脂の選び方の理論を纏めていきます。

油脂の品質は、液体、個体等の物理的性質化学組成によって分けられる。

油脂の物理的性質が油の品質に及ぼす影響

・液体
浸透し易い。味の余韻が短い。

・固体
浸透し難い。味の余韻が長い。

油脂の化学組成が油脂の品質に及ぼす影響

原材料の違う油脂は、含まれる脂肪酸が異なり化学的にも違う物と言える。



油脂を飲み比べる

これ迄で、料理によっての油脂の選び方は、理論だけではあまり深い所迄迫り切れませんでした。
ですので、次に、実際に油脂を飲み比べ味を確認し、その味と今迄に学んだ理論を基にどんな料理にどの油脂を選べば良いのかというものを考えたいと思います。

こちらが用意し揃えた油脂です。
今回は植物油を中心に、原材料が違う物で、圧搾法で採油された物、手に入り易い物で揃えてみました。

油

画像左下から右へ順に、
菜種油、大豆油、玉蜀黍油、紅花油、向日葵油、綿実油、胡麻油、米油、
オリーブ油、落花生油、葡萄油、荏胡麻油、パーム油、椰子油、亜麻仁油です。

これらの他に料理に使う油脂として、牛脂、豚脂、鶏脂、バター等とも比較し、料理によっての油脂の選び方に迫りたいと思います。



菜種油
なたね油赤水
産地:愛知県岡崎市
原材料:菜花の種子
原料菜種を焙煎して搾油し植物灰で処理したものを「赤水(あかみず)」「赤湯(あかゆ)」と称する。

菜種油

大豆油
正直な油
産地:アメリカ
原材料:大豆の種子

大豆油

紅花油
有機栽培べに花一番高オレイン酸
産地:オーストラリア
原材料:紅花の種子

紅花油

綿実油
ダイヤモンドGブランド一番搾り綿実油
産地:大阪府
原材料:綿花の種子

綿実油

落花生油
花生油
産地:香港産
原材料:落花生の種子

落花生油

葡萄油
グレープシードオイル
産地:チリ
原材料:葡萄の種子

グレープシードオイル

パーム油
エキストラバージンレッドパームオイル
産地:エクアドル
原材料:アブラヤシの果肉

パームオイル

椰子油
バージンココナッツオイル
産地:フィリピン
原材料:ココヤシの胚乳

ココナッツオイル



油脂を飲み比べた感想

では、これらの油脂を飲み比べた感想を述べていきます。
感想に関しては、完全に私の主観になります。

まず始めに、精製された油脂と精製されていない油脂に分けて考える必要があります。
精製とは、前回の記事でも触れていますが、搾油した粗油を濾過したり、製品の使用目的に合わせて脱色や脱臭をする事です。
精製された油脂は基本無味無臭になります。
ですので例え原材料が違う物でも、精製された物同士であれば区別がつきません。
実際、全ての油脂を飲んで味を比べてみた結果、大豆油玉蜀黍油紅花油向日葵油綿実油胡麻油米油荏胡麻油亜麻仁油に関しては、若干の苦味やえぐ味の有無、舌触りの軽さや重さ、といったものの違いは比べて初めて分かる程度ではありましたが、それぞれその原材料の際立った特徴の違いは感じられませんでした。
その他のオリーブオイル以外の油脂に関しても、味の違いに関しては苦味、辛味、えぐ味の有無という違いだけで、その原材料特有の違いというのは感じられませんでしたが、
香りに関してはその原材料特有の違いが感じられました。
まずなたね油赤水は、赤水という原料菜種を焙煎して搾油し植物灰で処理するという製法特有の焙煎した香ばしい香りがします。
ただ、これは原材料の菜種特有の香りという事ではなく、焙煎の香りです。
焙煎胡麻油と同じ香りです。
オリーブオイル完熟絞りオリーブオイル緑果絞りは、味、香り共に原材料であるオリーブの個性を素直に感じました。
オリーブ特有の苦味というか辛味というものが感じられながらも後味は清涼感のあるもので、それは緑果絞りの方が特に辛味を強く感じました。
香りは完熟絞りの方はオリーブの芳醇な香りを感じられ、緑果絞りの方は青味のあるフルーティーな香りを感じられました。
落花生油の花生油は、味に関しては精製された油脂のように無味なようでしたが、香りはピーナッツのナッティーというような香りを十分に感じました。
グレープシードオイルは、色こそ特有なものですが、味や香りに関しては精製された油脂のように無味無臭に感じました。
エキストラバージンレッドパームオイルは、色が特有で、常温ではやや緩めの固体ですが、味や香りは無味無臭と言って過言ではないくらいに特有なものは感じられませんでした。
バージンココナッツオイルは、ココナッツの甘い香りが強く、バターのような味わいを感じられました。

 

油脂の選び方の考察

では、この油脂の味や香り違いを、どのように料理に使い分ければいいのでしょうか。
これに関しての私の見解を述べていきます。

大豆油玉蜀黍油紅花油向日葵油綿実油胡麻油米油荏胡麻油亜麻仁油の精製された油脂は、無味無臭で癖が無いので、コストを考えなければ何にでも使えそうです。
その反面、それぞれの油脂を使う意味を味や香りからは見出せないので、それぞれのの油脂に含まれる脂肪酸から栄養面でその油脂を使う意味を見出す必要がありそうです。
なたね油赤水は、味に関しては癖は無いですが、香りが焙煎された香ばしい香りですので、この香りは味が強めの重厚な料理に合いそうです。
オリーブオイル完熟絞りオリーブオイル緑果絞りは、その味と香りに強い特徴があるので、これを存分に引き出す使い方を考えると面白そうです。
落花生油の花生油は、ナッティというような香りが特徴ですので、この香りをアクセントとして使うとひと味違う料理になりそうです。
グレープシードオイルエキストラバージンレッドパームオイルは、味と香りに癖が無いので何にでも使えますし、その色が特徴ですので、その色を活かした使い方も面白そうです。
バージンココナッツオイルは、バターのような味わいですのでバターの代わりに使えますし、その甘いココナッツの香りを十分に活かしたデザートにも使えそうです。

料理によっての油脂の選び方を考えると、料理によっての油脂の使い方別の選び方も考えなければならないと思いました。
料理によっての油脂の使い方というと、炒める、揚げる、和える等があります。
このそれぞれの調理法に最適な油脂というものはあるのでしょうか。

炒める、揚げる、和える等の調理法別に最適な油脂の選び方を調べていると、様々な油脂には酸化のし易い物とし難い物があり、酸化のし難い物は揚げ物にも使えますが、酸化のし易い物は揚げ物には向かないのでそのまま掛けるかドレッシング等に使うと良いとありました。
そして、酸化のし易い油脂として荏胡麻油亜麻仁油が挙げられていました。
しかし、前回の記事で参考にした本「食用油油脂入門」によると、精製された油脂は160~180℃では発煙しないとあります。
酸化のし易さとし難さも精製された油脂では原材料が違ってもその差は無くなるように思います。
この酸化のし易さとし難さは、その油脂に含まれる脂肪酸が関係しているという記述も見かけるのですが、その根拠はなかなか見つけられませんでした。
未精製の油脂は、不純物が含まれている分酸化し易いというのは分かるのですが、未精製であるバージンココナッツオイルは、酸化に強く揚げ物にも使えるという商品紹介文があります。
総じて考えるとどんな油脂もどのようにも使えるように思います。
しかし、コストの事を考えると荏胡麻油や亜麻仁油は、揚げ物に使うには値段が掛かかりますし、これらの油脂の特徴である栄養面での強み、オメガ3脂肪酸の摂取の事を考えると、直接摂取するような調理法での使い方が向いているように思います。



油脂の選び方のまとめ

今迄の考えを纏めて、油脂と料理の組み合わせ方を纏めていきます。

油脂と料理の組み合わせ方

・精製された油脂
無味無臭で癖が無い為どんな料理にも合う。

・焙煎された油脂
香ばしい香りに合う重厚な料理。

・原材料の香りがする油脂
その香りをアクセントとして使う料理。

・原材料の色がある油脂
その色を活かした料理。

・栄養面で強みのある油脂
その栄養を摂取出来るようにそのままその油脂を味わえる料理。

・料理の素材と油脂の原材料を合わせた使い方。



以上纏めましたが、正直、明確な基準と言えるようなものではないです。
油脂の選び方というのは、こんな言葉数で現わせられるような簡単なものではないように思います。
私自身、まだ料理に合わせた油脂の使い方、油脂と料理の組み合わせ方といったものに、迫り切れた手応えがありません。
今回飲み比べた油脂以外にも様々な種類の油脂がありますし、明確な基準として縛ってしまうよりも、料理の油脂の使い方というのはもっと自由で柔軟に考えられる、それだけ油脂というものは可能性があるようにも感じました。
以上に纏めたものは、ある一定の目安として捉えて頂ければ幸いです。

河野裕輔
河野裕輔

脂汗が出る!



まとめ

前回と今回で、料理に欠かせない油と向き合い、その原料、製造方法等により様々な種類の油が市場に出回っている中から、料理に最適な油、料理によっての油の選び方を確立すべく、油の基礎知識をを学び、
その基礎知識を活かし、理論的に様々な種類の油は何が違うのかを見極め、その違いが料理にどのような違いを生むのかというのを考え、料理に最適な油、料理によっての油の選び方といったものに、実際に様々な種類の油を飲み比べながら迫りました。

迫りましたと言いましたが、まだ全ての油脂を扱った訳では無いですし、まだまだ油脂に迫り切れていないというのが正直な想いです。
ならばもっと深く向き合えば良いという事ですが、何かこの油脂と向き合うという事のゴールが、料理に最適な油脂、料理によっての油脂の選び方というものの確立が、今回油脂と向き合っていくにつれて、油脂の知識が付いてくるにつれて、より見えなくなっていくような想いに至りました。
これはネガティブな想いでなく、ポジティブな想いで、この油脂という物は何か明確な基準で使い方を縛り付けるよりも、もっと自由で、もっと可能性があるものように思いました。
これは油脂が料理にもたらす役割が、単純に味を付けるといった分かり易いものではなく、コクや香り等様々な要素をもたらす役割を持っているからのように思います。

今回このように、料理に合わせた油脂の使い方、油脂と料理の組み合わせ方といったものに明確な基準を打ち出せずに締めに入っているのですが、これから油脂を自由に使っていって、さらに料理に対する油脂の使い方の自分なりの考えをもっと深くさせ、もっと語れるようになった時に、もう一度このブログに記事を書きたいと思います。

河野裕輔
河野裕輔

無念っ!

第33回 かわののブログ

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